アンティーク着物の人気は留まるところを知りません。当店にもアンティーク着物についてのご質問をいただくことが増えました。特にアンティーク着物のお手入れや保管について、正しい情報を知っておきたいという人が多いようです。
アンティーク着物のオシャレを楽しみたい人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
アンティーク着物を着た後のお手入れ
まずはアンティーク着物を着用した後のお手入れについて解説していきます。
基本は「干す」でも日光は絶対NG
着物を着用した後は、干して汗や湿気等の水分を飛ばす「陰干し」を行うのが基本です。着た状態からすぐに畳んではいけません。カビ・変色等の原因になってしまいますよ。
用意するもの
- 着物用のハンガー(物干しでも代用可)
- 直射日光が当たらない、風通しの良い場所を選びます
- アンティーク着物を着物用ハンガーにかけて、形を整えます
- 半日~数日程度、空気にさらします
注意点
- 直射日光は厳禁です。ガラス越しでも訪問着を日焼けさせます。室内であっても、直射日光のさしこむ場所は避けます。
- 湿度が高い場合、エアコン・除湿機等で除湿してください。
- アンティーク着物を吊るすのハンガーはできるだけ高い位置にかけます。アンティーク着物の裾がまっすぐに下ろせる状態が基本です。裾がたるむとシワ・型崩れの原因になります。
特にアンティーク着物の場合、直射日光にはできるだけ敏感になることが大切です。アンティーク着物は染料が脆くなっていることも多く、少し日にさらしただけで一気に褪色(色あせ)や変色を起こすことがあります。十分に注意しましょう。
またアンティーク着物の年代・状態によっては、縫糸が弱くなっていることがあります。この場合は陰干しの時間は少なめに。吊るす時間が長いと、縫糸への負担が強くなります。
シミ・汚れを見つけたら
陰干し中には全体をくまなくチェックして、シミや汚れがないかチェックしましょう。
シミを見つけたら、原因に合わせたシミ抜きのお手入れを行います。
以下のページで原因毎のシミ抜きのお手入れについて詳しく紹介しています。
水溶性汚れのシミ汚れ対処法
油溶性汚れのシミ汚れ対処法
混合性汚れのシミ汚れ対処法
アンティーク着物の収納は?
アンティーク着物はお値打ち価格のものも多いですから「大量に買ってアンティーク着物の収納や保管に困っている」という人も居るかもしれませんね。アンティーク着物の保管・収納で気をつけたいポイントをご紹介します。
収納は「通気性の良さ」がポイント
アンティーク着物の保管ではとにかく「通気性の良さ」が大事です。一番理想なのは桐たんす(または桐の衣装箱)ですが、高価なものですしお持ちの方は少ないはず。気軽に買える価格帯のものでは、「不織布の着物保管袋」や「布製の衣装ケース」等がおすすめです。
反対にアンティーク着物の保管で避けてほしいのがプラスチックの衣装箱。プラスチックは通気性がとにかく悪いため、カビ症状等を悪化させやすいです。
タトウ紙を準備しましょう
タトウ紙(畳紙)とは着物を包んでいる紙のこと。新品の着物だと購入の際に呉服屋さんのタトウ紙が付いてきますが、アンティーク着物の場合、ご購入の際にタトウ紙がなかった…というケースも多いようです。
タトウ紙は原則、着物1枚に対して1枚が必要です。タトウ紙で包むことで湿気からも守ってくれますし、畳んでいる間の余計なシワ等も防止できます。タトウ紙のみでの購入もできますので、早めに購入しておきましょう。当店「着物ふじぜん」でもタトウ紙を扱っていますので、お近くで手に入らない時にはご相談ください。
防虫剤選びはしっかりと
アンティーク着物の保管では、特に防虫剤対策に気をつけましょう。「やすいので洋服用の防虫剤で良い」という情報もありますが、これは必ずしも正解ではない…というところです。
というのも防虫剤の中には、金糸銀糸や金箔、特殊な刺繍等の変色を起こしてしまう種類があります。アンティーク着物の中には独特の加工を施した遊び心があるデザインも多く、保管しているものの中にこの手の着物が混じっていると、防虫剤の成分と反応して一発でダメになってしまうケースがあるのです。
防虫剤で変色した着物は、後から専門店にお持ちいただいても元に戻せません。「着物専用」「着物OK」と名言している防虫剤を選んだほうが、このようなリスクは避けられます。お持ちのアンティーク着物のバリエーションにもよりますが、リスクを考慮した防虫剤選びが大切です。
アンティーク着物の保管中のお手入れ
アンティーク着物は着た後だけでなく、保管中にも定期的なお手入れを行っていきましょう。
アンティーク着物は頻繁な「虫干し」を
着物は年に1回~2回、タンスから出して空気にさらすお手入れを行うのが基本です。これを「虫干し」と言います。保管中にはどうしても湿気が溜まりやすいので、虫干しで水分を飛ばし、カビや虫害等のリスクを減らしていくのが目的です。
アンティーク着物の場合だと、虫干しはさらに頻繁に、年に3回位は行っていただいた方が安心と言えます。アンティーク着物は一般的な着物に比べて、保管中の変色やカビ発生等のリスクが高いためです。
虫干しのやり方は上でご紹介した「着用後の陰干し」とほぼ同じです。ただ定期的なお手入れですので、できれば数日間は晴れが続く湿気の少ない日を選んでいただいた方が良いです。地域にもよりますが、1月後半、7月の梅雨明け後、10月の秋晴れが続く頃等を「虫干しの定期的なタイミング」にすることをおすすめします。
カビ臭い着物に要注意
アンティーク着物の場合、購入時にすでに着物がカビ臭い…というケースがあります。この「カビ臭い着物」は要注意です。
他の着物と別に保管する
アンティーク着物がカビ臭いということは、すでにその着物の繊維の奥にカビ菌が発生している証拠です。そしてカビ菌がある着物と他の着物を一緒に保管すると、当然のことながら、カビ菌が他の着物に移って繁殖します。
「カビ臭い、ホコリくさい」と感じるアンティーク着物は、他の着物と一緒にまとめて保管しないことが大切です。(特にアンティークではない礼装着物等との取り混ぜての保管は絶対にNGです)
月に一度は虫干しする
少しでもカビくさいニオイを感じたら、月に1回は空気にさらして繊維を乾燥させるようにしましょう。
できればカビ取りクリーニングを
上でも解説しましたが、カビ菌は他の繊維にも移りますし、白カビが繊維を酸化させて黄ばみや茶色いシミ(黄変)というトラブルを起こす原因ともなります。
アンティーク着物の状態にもよりますが、できれば専門店での「カビ取りクリーニング」を行った方が安心です。オゾン除菌などで繊維の奥からカビを除去すれば、スッキリと気持ちよく着物を着ることができます。
おわりに
アンティーク着物のお手入れと保管では「ニオイ」の対策が本当に重要です。正絹のアンティーク着物には、洋服のようにファブリーズを使った消臭はできません。定期的に陰干し(虫干し)をして繊維の中の空気を飛ばしたり、タンスの引き出しをあけたりして、通気性が良い状態をキープしましょうね。