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雨で着物が濡れた時のお手入れと予防対策

雨で着物が濡れた時

春先の不安定なお天気、長い梅雨、夏の激しい夕立…日本では四季の折々に、様々な雨が降りますね。雨は空気を潤し緑を育てる大切なものではあるのですが、着物を着る時にはそうとも言っていられません。正絹(シルク)等のデリケートな素材で作られている着物にとっては、雨による水濡れはまさに「大敵」なんです。

とは言え、お出かけの日が必ず晴れの日ばかり…とは限りませんよね。特に結婚式や七五三といったイベントの日には、お天気が悪くても訪問着・留袖といった大切な礼服を着る必要が出てきます。こんな時に雨濡れや泥ハネが起きてしまったら、どうしたら良いのでしょう? 今回は着物が着物が雨で濡れてしまった時のお手入れや、雨濡れトラブルを防ぐための対策についてご紹介していきます。

雨で着物が濡れた時のお手入れ方法

大切なのは応急処置

雨による水濡れが起きたお手入れの基本は、「できるだけ早く水分を吸い取る」ということ。早め早めに応急処置をすることで、雨ジミになるのを防ぐことができます。

【雨濡れが起きた時の応急処置】
1)屋内に入ったら、すぐに全身の濡れの状態をチェックするようにします。ご友人等のお連れ様が居る時には、後ろ側等も見てもらいましょう。お手洗い等の全身鏡でチェックをするのも有効です。
2)乾いたハンカチ・手ぬぐい等で、トントンと軽く濡れた箇所を叩き、水分を吸い取っていきます。
3)常にハンカチ・手ぬぐいの乾いた箇所が着物に触れるように、ハンカチをたたみ直しては叩きます。
4)袖などの裏側に手を入れられる部分が濡れた場合には、2枚のハンカチで両側から挟み込むようにして叩くとより効果的です。

※雨の日にはガーゼ素材等のやわらかい大判ハンカチ・手ぬぐい類を複数持ち歩くようにしましょう。
※摩擦による色あせ等が起きないように、ハンカチで叩く時には軽く叩くことを意識します。

「出先で雨が降っている(降ってきた)」という場合には、屋根があるところに入るたびに、上記のような応急処置をこまめに行うようにしましょう。

【泥ハネが付いている場合には】
出先でのチェックで、着物の裾等に「泥ハネ」(砂・泥と水分が混じっている状態)を発見した場合には、無理に拭いたり叩いたりするのはNG。泥ハネが小さい範囲の場合には、出先では無理に応急処置をせず、帰宅してからお手入れを行います。焦って拭いてしまうと汚れが広がり取れなくなるので、上記の「水濡れ」と混同しないように気をつけましょう。

 

ただ、例えば車のタイヤによる水の跳ね上げ等で泥水が跳ねた…というような「水+泥」の汚れが付き、しかもその範囲が非常に広いという場合には、応急処置をする必要が出てきます。この場合には細心の注意を払ってタオル・手ぬぐい等で布地を抑え、水分をできるだけ取ります。ただ泥を繊維の奥に押し込んでしまわないように十分に気をつけてください。

着物が軽い雨に濡れた時の家でのお手入れは?

パラパラと降ってきた雨等で軽く着物が濡れた場合には、外出時には前述した「応急処置」をこまめに行い、帰宅してから以下の用にお手入れをしていきます。

  1. 1)着物を和装ハンガーにかけて、明るい場所で汚れをチェックします。
  2. 2)水滴が落ちた場所等で気になる箇所があれば、もう一度乾いた手ぬぐい・ハンカチ等で抑え、丁寧に水分を取っておきます。
  3. 3)雨が降っている間は屋内で風通しの良い場所に着物をかけておき、できるだけ湿気を飛ばします。
  4. 4)雨が止んだら、屋外で陰干しを行います。通常のアフターケアよりも長め(半日程度以上は干す)を行い、着物が含んだ湿気をしっかりと飛ばします。梅雨の時期等で屋外の陰干しが難しい場合には、エアコンをかけた室内等、湿気の少ない場所で陰干しを行いましょう。
  5. 5)よく乾かしてから、再度全体のチェックを行います。

泥ハネがあった場合のお手入れは?

雨降りのお出かけで「泥ハネ」を作ってしまった場合には、上記の「応急処置」の項目でご紹介したとおり、外出先ではなるべくその部分に触れないようにします。これはなぜか?というと、泥に含まれる「砂」が濡れている状態だと取れにくいため。砂を含んだ泥汚れは帰宅してしっかりと乾かしてから、ブラシを使って少しずつ落としていきます。

  1. 1)帰宅したら着物を和装ハンガーにかけて、明るい場所で汚れのチェックをします。泥ハネは意外と上の方にまで飛んでいることもあるので、全身をしっかり確認しましょう。
  2. 2)半日~1日程度陰干しをして、泥ハネ部分の水分を完全に飛ばします。
  3. 3)柔らかい毛質の服用ブラシ(無い場合には柔らかい毛質の獣毛歯ブラシ)を使って、乾いた生地から少しずつ砂(泥汚れ)を掻き出していきます。
※ゴシゴシとこする、ブラシを強く持って無理に掻き出す、ブラシを往復させるように素早く動かすことは止めましょう。生地が傷んだり、色ハゲ等が起こる原因になります。
※生地の奥の水分が取り切れていないと、ブラシでなかなか泥ハネが落ちないことがあります。この場合には無理にブラシを使わず、再度しっかりと泥ハネ部分を乾かしてから作業をしましょう。
※泥ハネが落ちきらない・色が薄く残る場合には無理に作業を行わず、お近くの呉服店・和装対応のクリーニング店等にご相談ください。

 

大雨で着物がびしょ濡れになった時のお手入れは?

台風やゲリラ豪雨のような大雨、また横殴りの雨等の被害にあった場合には、着物が「軽く濡れて湿った」という程度ではなく、はっきりと「濡れた」状態になってしまうこともあります。

・雨濡れの範囲が広く、裾全体・袖全体が濡れている
・地色の色が変わるほどに水分を含んでいる
・触れると手に水分が付くほど生地が濡れている

お着物の素材が正絹(シルク)等の場合、上記のような「濡れ」が生じると、繊維と糸が水分をしっかりと含んでしまったことで「縮み」が起きてしまうことがあります。また天然素材を使用した染色の場合、水濡れをしたことによる色落ち・色にじみが起きている可能性が出てきます。

そのため上記のような場合には、タオル・手ぬぐい等で水分をとった後、できるだけ速やかに呉服店・和装対応のクリーニング店等に着物を持ち込み、点検をしてもらった上で対応を相談することをおすすめします。

また軽い雨濡れでも、応急処置ができなかった場合等には、以下のような症状が起きることがあります。

・輪ジミ(雨ジミ):水濡れをした箇所の輪郭部分だけが変色、色のぼやけが起こる
・膨れる:雨に濡れた部分だけの生地が膨れたように伸びる
・色にじみ、色剥げ:雨濡れをした部分だけ染色の色がおかしい、染色の色が流れる 等

このようなトラブルを見つけたら、それ以上は自分で対策をするのはNG!「なんとか治せないだろうか」と自己判断でアイロンをかけたりすることで、着物の状態がプロでも元に戻せなくなる…といったトラブルが多々起きています。雨濡れによる水性のシミ・変色が起きた場合には、触らずに早めに専門家に相談をしましょう。

着物の雨濡れは「予防」が大切!雨染みを作らない対策

特に訪問着・振袖・留袖等の正絹で出来た礼服は、雨で濡らしてしまうと後のお手入れが大変です。でも、お友達どうしのパーティーなどであれば「今日は着物をやめて洋服にしよう」と変更をすることもできますが…礼服を着るような式典・慶事イベント等の場合、着る服を変えるわけにもいかないことが多いですよね。大切なお着物を雨でびっしょりと着物を濡らしてしまう前に、お着物の「雨対策」を欠かさないようにしましょう。

雨コートは必ず用意!

着物を買ったら、必ず「雨コート」も付属品として準備するようにしておきましょう。「雨コート」とは、和装用のレインコートのこと。撥水加工の布地でできており、着物の上からサッと羽織って、袖から裾までを覆い隠してくれます。

雨コートの価格は、リーズナブルなものであれば3,000円~5,000円程度からあります。お出かけ用のものの高級なものの場合、10000円~30,000円位です。また中には透明ナイロン製等の気楽な和装レインコートを、1,000円台で売っている呉服店・和装小物店もあります。「とにかく着物を濡らさない」というだけの対策であれば、見た目は悪いですが1,000円程度でも水濡れ対策はある程度できるというわけです。

雨コートは訪問着・留袖等のためのものだけでなく、「振袖用」のものも販売されています。成人式の日は日程が前から決まっていますし、1月には雪・雨等が意外と降りやすいもの。イベントが近くなってから「雨が降るかも!」と慌てるよりも、1,000円~2,000円台の安価な振袖用レインコートを「保険」として購入しておいた方が安心ですよ。

着物に撥水加工をする

外出時に雨コートを着ることで、着物が全体的にびっしょりと濡れてしまう心配はかなり防げます。しかし式典自体が屋外で行われるという場合、雨コートを着たままでの参列が失礼にあたることもあります。テントやタープを張っただけの屋外イベント・屋外式典等で雨が吹き込み、着物が濡れてしまったというケースも多いようです。

着物が濡れてしまわないかご不安な場合には、水を弾きやすくなる撥水加工(はっすいかこう)をしてみてはいかがでしょうか?例えばパールトーン株式会社のパールトーン(R)加工は、絹の風合い等をあまり変えずに、撥水・防汚を行ってくれる加工として知られています。撥水加工は着物仕立て屋・呉服店・和装クリーニング店等でも相談を受けているので、お近くの店舗に相談をしてみましょう。

なお撥水加工・防汚加工を行うと、その後の丸洗い(ドライクリーニング)の際に撥水加工対応の店舗を選ぶ必要が出てきます。通常のドライクリーニングでは、撥水の効力が落ちてしまう恐れがあるためです。また加工で必ずしも全ての汚れが弾けるわけではありません。加工内容によっては、ドレッシング・マヨネーズ等の油分汚れは弾かずに通してしまうものもあります。撥水加工・防汚加工に詳しいお店でメリット・デメリットをきちんと確認した上で判断をした方が良いでしょう。

移動は極力「タクシー」or「自家用車」で

いくら雨コートや撥水加工で着物を守っても、その効果は100%万全というわけではありません。特に普段着物を着慣れない方の場合、裾捌きがうまくいかずに裾に泥汚れを付けてしまった、草履をダメにしてしまった…といったトラブルも多く見られるようです。

洋服と着物では構造自体がかなり違うため、ふだんの洋服のつもりで傘をさして歩くと、多くの方が着物の「袖の先」と「裾」、そして「帯の背中側」を濡らしてしまっています。いくら大きな傘をさしても、斜めに吹き込んで来る雨を完全に避けることはできませんよね。着物に慣れていない方であればあるほど、「雨の日に着物で外を歩く」という時間をできるだけ減らしていくことが大切になります。

雨の日に着物でお出かけをする場合には、できるだけタクシーもしくは自家用車を使い、「着物で外を歩く」という時間を極力減らしましょう。また自動車に乗る時・降りる時のわずかな時間でもできるだけ大きな傘をさし、雨が吹き込まないように注意します。

おわりに

「雨コートを買ったりタクシーに乗ったら、出費がかさんでしまう…」「せっかくのイベントなのに、雨用の出費が嵩むのは困る!」と思う方も多いかもしれませんね。でも雨でビッショリに濡れた正絹の着物が膨れてボコボコになってしまった…といった場合、通常のクリーニング(着物丸洗い・ドライクリーニング)では着物を元の状態に戻せないことも多いです。専門の業者(悉皆屋等)で一度着物を解き、水洗いをしてから繊維を元の状態へと戻し、更に仕立て直す…といった細かい工程(洗い張り)が必要となってしまいます。この場合、洗い張りと仕立直しの料金は数万円以上にもなります。

また染色等の状態によっては、大切なお着物が元に戻らない!という危険性も考えられます。雨濡れの予防対策をできるだけ万全に行っておくことが、長い目で見て「安上がり」になるというわけですね。大切なお着物をダメにしてしまわないよう、事前の準備は万端にしておきましょう。

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プロフィール

吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし

着物の染み抜きやお直しをする場合、加工内容や料金は検討がつかないと思います。お近くに専門店があれば安心ですがシミや汚れを見てもらったが、無理だと言われ諦めてしまう方が多いのです。遠方にお住まいの方はお電話又はメールでご相談いただければ、無料にてアドバイスさせていただきます。クリーニングやお直し以外でも着物の事ならお気軽にご連絡ください。

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