入学式・卒業式・ハウツー

入学式・卒業式…子どもの式典での母親の着物は訪問着か色無地が理想的

入園式・入学式、卒園式に卒業式…。お子様が居るお母様方にとって、春は何かと「式典」等の行事が多い季節ですよね。お子さんの成長した姿を見られる式典は、ママ達にとっても大切な一日。

「せっかくのお祝いの日だから、素敵な着物で参列したい!」と思っている方も多いのではないでしょうか?今回は入学式や卒業式といった「お子さんの式典」に参列するお母さんの着物について、理想的な着物の種類やコーディネート、アクシデントの時の対処法等を着物初心者の方にもわかりやすくご紹介していきます。

入学式や卒業式には「訪問着」か「色無地」が一般的

入学式や卒業式の着物について、「母親の着物は何を着ればいいの?」は最も多く見られる疑問です。「マナーに合ってない着物なのかも…」と不安に思われてる方、多いんですよね。最初にズバリお答えすると、「訪問着or色無地が理想的」ということになります。

訪問着とは?

「訪問着(ほうもんぎ)」とは柄が肩のあたり(帯よりも上の上半身)から裾まで「ひと続き(一つの絵)」になっている着物のこと。縫い目をまたいで柄が繋がっており、上下で柄の向きがバラバラでなく同じ向きなら、そのお着物は「訪問着」ということになります。

訪問着は大正時代に生まれた「軽めのフォーマル服」といった扱いのお着物。現代では結婚式や入学式・卒業式といった幅広いフォーマルシーンで使える着物として扱われています。洋服で考えると、「フォーマルな形のカラーワンピース」といったランクと考えるとわかりやすいのではないでしょうか?

なお、同じ「訪問着」でも、柄行(着物の柄)・色味によっては「街着・普段着風」のものもあるので要注意です。ワンピースでも、カジュアルなものとフォーマルなものってありますよね。式典に着る場合には、「薄いピンク・薄いグリーン等の薄い色合い」で、「古典的な柄のもの」がフォーマルらしく理想的です。

色無地とは?

「色無地(いろむじ)」とはその名の通り「柄の入らない着物(無地の着物)」で、黒色・白色ではない色合いのものを指します。「紋(家紋)」が入っていない色無地はややカジュアルな着物なので、式典にはやや不向き。

でも「一つ紋」(背中の中心部に家紋入り)のものだと着物のランクが上がり、「フォーマル」という扱いになります。入学式や卒業式の他、祝賀会・お茶会等にも使えるお着物です。

訪問着も一つ紋入りの色無地も、着物の格では「略礼装(軽いフォーマル服)」という扱いになります。着物は結婚式・お葬式といった冠婚葬祭に最も良いランクのものを着るのが習わし。

「式典」の場合は、もう少し軽めのフォーマルが適しています。また式典の主役は当然のことながら「お子様」でお母様は言うなれば「脇役・裏方」なので、「略礼装」が一番ピッタリ!というわけなんですね。

 

「色留袖」を入学式や卒業式に着てもいい?

「訪問着や色無地は持っていないけど、色留袖なら家にある」という方もいらっしゃるかもしれませんね。色留袖は卒業式・入学式等に着ることができるんでしょうか?

留袖とは?

「留袖(とめそで)」とは、柄が上半身になく、裾側(帯の下)にのみある着物のこと。ミセスが着る最高ランクの着物(正礼装)となります。地色が黒色の「黒留袖」と、その他の色味の「色留袖」があり、いずれも結婚式等の最高慶事に使用するのが一般的です。

式典に着られる留袖・着られない留袖

上記のとおり、留袖はフォーマル服の中でも最高ランクの格の高い着物です。「五つ紋の黒留袖」は、言うなれば裾を引きずるほど長い黒のイブニング・ドレスのようなもの。卒業式等の式典に着るには、少々「装いすぎ」になるので不適格…というわけですね。

でも留袖の中でも「色留袖」でなおかつ「比翼の無いもの」であれば、フォーマル服の中でも少々気軽な装いになります。入園式・卒園式といった式典にも、比翼仕立てではない色留袖なら着用してOKなんです。

「比翼仕立て」って何?

比翼仕立て(ひよくじたて)とは留袖独特の仕立てのひとつで、白い生地を襟や袖等に縫い付けて、「重ね着」をしているように見せる仕立て方を指します。

お持ちの色留袖をチェックして、襟・袖・裾等に白い生地が重ねられていないかを見てみましょう。比翼仕立てで無いなら、そのまま式典に着用しても大丈夫。

比翼になっている場合には、そのままでは「結婚式向き」なので入学式等の式典には向きません。呉服店・和装専門のクリーニング店等の仕立てのお店に相談をして、仕立直しをお願いしてみましょう。

 

入園式や卒園式、式典の時の着物のコーディネートは?

着物は帯や小物類の合わせ方によって「フォーマルな着方」「普段着・街着の着方」が変わります。洋服の場合でも、フォーマルな場ではブーツやサンダル、ジーンズ素材等をワンピースに合わせるのはNGですよね。

これと同じで、「訪問着」や「色無地」を着る場合も、帯・小物類をきちんと「フォーマル感」があるように合わせることが大切なんです。

式典の時の帯は「袋帯」が基本

帯には「袋帯(ふくろおび)」「名古屋帯(なごやおび」といった種類があります。袋帯とは幅が全体的に同じで、平たく畳めるもの。

反対に途中で幅が狭くなっている帯であれば「名古屋帯」ということになります。フォーマルの場合には、このうち「袋帯」を合わせるのが基本です。

長襦袢の色は何色がいいの?

「長襦袢(ながじゅばん)」とは着物の中に着るインナーのようなもの。袖や裾が動いた時にチラリと色が見え、この色味でも「カジュアル/フォーマル」が変わります。入園式等のフォーマルの場合には、「白/もしくは薄い色」の長襦袢を着ましょう。

ここでいう「薄い色」とは、淡いピンク・ブルー・グリーン・クリーム色等のこと。結婚式の場合ですと長襦袢は「白一色」ですが、式典であればお着物の色味に合わせた薄色を合わせてOKです。

なお「赤」「紫」「紺」等の濃い色の襦袢はカジュアル向けのものなので、式典には不向き。「薄い色味の襦袢が無い…」という時には、今後の結婚式等への利用等も考えると「白い長襦袢」を一着用意されておくことをおすすめします。

半襟の色はどうする?

「半襟(はんえり)」とは着物の襟元からチラリと見せる「つけ襟」のようなもの。着用前に長襦袢に縫い付けて使用します。「半衿」と書くこともあります。この半襟も長襦袢と同じで、白か淡い色味を合わせましょう。長襦袢と同系色にすると落ち着きがあり上品に見えます。

足袋の色は?柄物はダメ?

「足袋(たび)」とは和風のソックスですね。タビについては、フォーマルの場では「白の無地」というのが絶対です!薄色でも色付きのもの、柄入りのもの、レースのもの等は全て「カジュアル」の扱いになりますので避けましょう。

草履は何を合わせればいい?

履物である「草履(ぞうり)」も、フォーマルの場では「淡い色合い」を選びます。また草履の色が「全体的に同じ色味」であることも大切。

指を通す「鼻緒(はなお)」と、靴で言うとボディ部分である「台」の色味が違うと、「カジュアルな草履」ということになります。どんなにオシャレな色合わせでも、鼻緒と台の色が違うと「スニーカーを履いてる」みたいな扱いなんですね。

また金糸/銀糸織り等の草履はフォーマル用ではあるのですが、どちらかというと結婚式向け。エナメル素材等で色が淡く、お着物に近い色合いのもの(ピンク系なら薄ピンク、黄色系ならごく淡いクリーム等)を合わせられると良いでしょう。

バッグは洋服向けのものでもOK?

結婚式の場合だと、「皮革製品は避けて、布製の礼装バッグを」といったマナーが指摘されることも多いですよね。でも入学式・卒業式等の式典の場合には、バッグは革製品でもOKです。またスタイルが合っていれば、洋服向けのものでも合わせることができます。

≪フォーマル着物に合わせるバッグの基本的な考え方≫
・布製もしくはエナメル製・スムース革等であること(ファー素材やワニ革・蛇革・ナイロン素材等はNG)
・無地であること(ブランドロゴが大きく入っているもの、柄もの、モノグラム模様等は避けた方が無難)
・フォーマル向けのデザインであること(フタ・口金等がある礼装用デザイン・フォーマルパーティー用デザインであること、ビジネス用バッグ等は不向き)
・容量が大きすぎないこと(メインのバッグが肩掛けのような大きさになるのはNG。サブバッグで対応します)

小さなお子さまの居るお母様の場合、「礼装バッグでは荷物が入り切らない!」ということもあると思います。このような場合には、レース素材等の礼装用サブバッグを準備しておくと安心です。

また最近では、和装の礼装バッグでも容量が比較的大きいもの(お財布や携帯電話等の他、ポーチ類等もしまえるもの)が登場しています。「バッグ類をひとつにまとめたい」という時には、大きめの礼装バッグを準備しておくのも手ですね。

 

入学式や卒業式に着物を着るママが増えてる理由って?

ここ数年、幼稚園や小学校・中学校などでは、入学式・卒業式にお着物をお召しになるママ達が増えていると言われています。これには最近の「着物ブーム」も影響を及ぼしているのでしょう。日本人ならではの和の文化を楽しみたいという方が増えているというのは、嬉しいことですね。でも実はもうひとつ、ママ達の間の「着物人気」には理由がある様子。

それが「ボディラインが出ない!」「いつまでも長く着られる!」という点なんです。

お着物は洋服のように、胸幅・ウエスト・ヒップといったサイジングの厳密さがありません。多少体型が変わっても着付けで調整することができますし、「身幅がちょっと足りなくなった」という場合には専門業者にサイズ直しを依頼することも可能です。

そもそも着物とは、母親からその娘へ、更にその孫娘へ…と受け継ぎながら着ていくもの。古典柄であれば流行も関係ありませんから、いつまでもお着物を楽しむことができるんです。

 

雨に降られたらどうしよう?

着物姿の大敵!とも言えるのが雨。でも式典の日が必ずお天気とは限りませんよね。万一の場合を考えて、雨対策を万端に準備しておくことをおすすめします。

雨用草履(雨草履)

雨や雪の時に一番汚れるのが、草履と足袋の足先ですね。この対策には「雨草履(あめぞうり)」が一番です。

雨草履とは、つま先に透明のカバーが付いている「悪天候タイプ」の草履のこと。天候が悪い日でも安心して草履を履くことができます。また防寒性も比較的あるので、冬季の式典にも助かります。


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撥水性足袋カバー

お天気の悪い日には、外を歩く際に足袋の上から足袋カバー(たびカバー)を重ねて履きましょう。足袋カバーはソックスのように伸縮性があるので、屋内に入る時などにはサッと脱ぐこともできます。ウォータープルーフ加工である撥水性(はっすいせい)素材を使った足袋カバーなら、足袋に水が染み込むことも無くて安心です。

雨コート・道行

礼装用の訪問着や色無地は「正絹(しょうけん・シルクのこと)」でできているのが一般的。ポリエステル素材の街着とは異なり、雨に濡れたり水ハネができても自分で洗うことができません。

和装フォーマルを雨模様の日にする場合には、ナイロン・レーヨン等の撥水素材で作られた和装用の「雨コート」を羽織りましょう。

雨コートはコンパクトに畳めますし、学校等に付いてから脱ぐのもカンタン。外をお子さん連れで歩く時にも、比較的安心して歩くことができます。

なお万が一、急な雨に降られてお着物や帯が濡れた場合には、できるだけ早くハンカチ・タオル等で水分を優しく取り、早急に和装専門のクリーニング店に相談しましょう。

中途半端に乾かしておくと「水シミ(輪染み)」の原因になったり、染色法によっては変色・色抜け等が起こることもあります。

また乾燥が十分で無い状態で保管をした結果、着物にカビが生えてしまうことも…。自己判断で「この程度なら平気」と考えず、専門家を頼ることが「長く着物を着る」ためにも大切です。

おすすめ記事:パールトーン加工とは?着物のガード加工のメリット・デメリット

 

おわりに

入学式・入園式等が行われる春の季節は、暑すぎず寒すぎず、着物を比較的快適に着やすい季節でもあります。「着物を着るのは成人式以来」「本格的に着物を着るのは初めて」という方でも、着物にチャレンジするにはうってつけのタイミングと言えるのではないでしょうか。素敵で上品な和装姿に変身して、お子さまの門出の式を華やかに祝ってあげましょう!

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吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし


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