軽くて肌当たりの良い木綿きものは、根強いファンがたくさん居る着物です。でも「木綿着物を保管していたらカビを生えさせてしまった」「木綿着物の保管中に黄ばんだ」等、カジュアルな着物である割にお手入れや保管がなかなか難しいアイテムでもあります。
木綿きものビギナーの方はもちろん、木綿着物をたくさん持っているという方も一度ご覧になってみてくださいね。
目次
1.陰干しは「長め」が基本!
木綿着物はウール着物・正絹着物等に比べれば虫食い(ヒメマルカツオブシムシ)による穴空きの被害は比較的起きにくい傾向があります。しかしその反面、湿気によるカビの発生、また黄変等のトラブルはとても多く見られるのです。つまり木綿着物の保管のもっとも重要なポイントとは「湿気をしっかり取る」であると言えます。
木綿着物の保管中にいかに上手に、しっかりと湿気を取り去るか?そのファースト・ステップで忘れてはいけないのが保管前の「陰干し」です。一度袖を通した着物、あなたはどれくらいの長さで干してからしまっていますか?「丸一日くらいは室内で乾かして、それから木綿着物をクローゼットやタンスに保管している」という人、これはちょっと短いかもしれませんよ!
木綿着物は湿気が飛びにくい
木綿(コットン)の着物は、とても丈夫で軽いのが魅力です。これはコットンが天然繊維であり、繊維系がバラバラで自然に撚りが入り、強く絡み合うため。また木綿着物は夏涼しく冬に温かいですが、これはコットン繊維の中心が中空(空っぽ)の状態になっているので、空気の層ができているためです。
さてこのようなコットンの特性は大きな魅力でもあるのですが、同時に「内側が空っぽで凹凸が多いのでなので、水をたくさん含んでしまう」=「湿気を含んだら乾きにくい」という困った点でもあります。
カビの元である「カビ菌」等は、水分が多い場所が大好き。乾かない、いつまでも湿気を含んでしまう素材であることが、木綿着物がカビやすかったり変色しやすい理由でもあるのです。
木綿着物の場合には「着用時に吸い込んだ汗や湿気を飛ばすのがとても大変だ」と覚えておきましょう。乾きやすいポリ着物等に比べると、木綿着物の湿気を飛ばすには概ね1.5倍~2倍程度の時間がかかります。
木綿着物の陰干し日数は?
木綿着物の陰干しの時間・日数については、以下を参考にしてみましょう。
- 通常の1回着た後の陰干し時間 → 2~3日以上
- 雨が降っていたり湿気が多い日に着用した場合 → 4~5日以上
※いずれも室内の湿度が40%程度の場合
正絹着物等をお持ちの方は、それらの着物の2倍程度の長さを参考にしてみてください。お部屋が片付かず落ち着かないかもしれませんが、どうぞ長めの陰干しでしっかり湿気を飛ばしましょう。
2.アイロン後もしっかり陰干し
木綿着物はカジュアルで使いやすいですが、他の着物に比べてシワが目立ちやすいですね。着用後にしっかりアイロンをかけるという方も多いことでしょう。またご自分で木綿着物を洗った後も、縮んだ布を伸ばし布目を整えるためにアイロンは必須です。
いずれにしても木綿着物にアイロンをあてた場合には、さらに長く陰干しをすることを意識してみましょう。アイロンは蒸気だけでなく「熱」を繊維に加えます。中空状態である木綿繊維は中にこの熱を取り込みますので、なかなか繊維の温度が下がりません。
アイロンをあててから時間をおかずに木綿着物を保管すると、繊維がホカホカとあたたかい状態のままになってしまいます。これは虫やカビ菌の大好きな場所です!
どうかアイロン後にはしっかりと冷たい空気にさらして、木綿着物を覚ますようにしてくださいね。
3.除湿剤は「置き型+シート型」
木綿着物の保管では「除湿」が重要になります。保管中の除湿剤にはどんなものを使っていますか?保管する場所(タンス・クローゼット)やタンスの設置場所等にもよりますが、除湿剤はできれば次の2種類を使うことをおすすめします。
a.置形の除湿剤
置き型の除湿剤とは、箱の中に除湿パウダー等が入っていて、クローゼットや押入れ等に設置することで箱の中に水が溜まっていくタイプの製品のことです。製品名ですと「水取りぞうさん」や「ドライペット スキット」等が代表的ですね。
これらの除湿剤は、着物の設置場所には必ず置きましょう。クローゼット等の設置場所の各所に置くだけでなく、着物を衣装箱の中に入れているのであれば、箱の中にも最低1つは入れておくことをおすすめします。
b.シート型の除湿剤
シート型の除湿剤は、シートの中に入っている薬剤が湿気を吸い込んでゼリー状になって固まるタイプの製品です。置形タイプより小さく薄いので、引出しの中やタトウ紙の中等に入れることができます。
シート型除湿剤は着物1枚(タトウ紙の中)に1~2枚は入れておくのが理想的です。上で紹介した置形除湿剤に比べると除湿効果が短いので、忘れず定期的に交換するようにしましょう。
4.長期保管前は「水洗いor汗抜き」
木綿着物の長期保管中には、黄ばみやオレンジ・茶色等のシミができる「黄変」というトラブルが起きやすいです。これは木綿着物が汗をたくさん吸い込んでしまい、汗のミネラル等の成分が時間をかけて酸化して変色するため。黄変を防ぐためにも、長期保管の前にはキチンとお手入れをするようにしましょう。
洗える着物は水洗いでしっかり汚れ取り
ご自宅で洗える木綿着物なのであれば、水と中性洗剤を使って丁寧に汗汚れ等を取っておきましょう。なお初めての水通しの場合、木綿着物は大幅に縮みますので要注意です!ご不安な場合やお出かけ着として着用されたい場合には、木綿着物の扱いに強い業者に依頼することを検討しても良いでしょう。
汗抜きクリーニングもオススメ
いわゆる「着物丸洗い(ドライクリーニング)」では、水溶性汚れである「汗汚れ」は落とすことができません。そのため繊維に残った汗の成分が少しずつ酸化して「着物をクリーニングに出したのに、数年後に黄ばんでしまった」といったトラブルも起こります。
着物をキレイに長持ちさせたいのであれば、長期保管する前に汗の成分を落とすための「汗抜きクリーニング」を加えるのも手です。プロの手でしっかり汗抜きをしておけば、黄ばみ等のリスクを減らすことができます。
おわりに
木綿着物の保管方法についてポイントをご紹介しましたが、ご自宅でのお手入れや保管のお役に立ちそうでしょうか?同じ木綿の衣類でも、ジーンズやTシャツ等に比べると保管の前のお手入れ等に少々手間がかかりますね。
「思っていたより木綿着物の保管って難しい…」という方は、プロが代わって着物を預かってくれる「着物保管サービス」を使ってみるのも良いかもしれません。
保管サービスでは着物のクリーニング後、専用の倉庫等で着物を預かってくれます。当店でも着物のお預かりサービスを受け付けていますので、木綿着物の保管にお悩みの際にはお気軽にご相談ください!