長襦袢に付ける半衿(半襟)は、着物を着る時に欠かせないアイテムのひとつです。汗やファンデーション等で汚れやすいので、半衿のお手入れ方法を知っておきたいという人も多いのではないでしょうか。
また少し上級の着物のコーディネートに挑戦されている方の中には、重ね衿(伊達衿)をお手入れしたいという人も居ることでしょう。
着物だけでなく半襟もきれいに長持ちさせたい!という人、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
半衿のお手入れ
半衿(はんえり・半襟)は、長襦袢に縫い付けて使用する着物の装飾品のひとつです。元々は着物や長襦袢につく汚れ防止のために黒い半衿を使っていましたが、現在ではより装飾的な意味合いが強くなっています。浴衣等の簡易的な和装衣類をのぞけば、半衿は必ず使用するアイテムです。
素材と作りをチェックしてみましょう
半衿のご自宅でのお手入れ方法は、洗えないものについてはベンジンでのお手入れ、洗えるものについては中性洗剤を使った水洗いか、ベンジン+洗剤でのお手入れということになります。まずはお持ちの半襟がご自宅で洗えるかどうか確認してみましょう。
【洗える半襟】
- ポリエステルの半衿
- その他化繊の半衿
- 木綿の半衿
ポリエステル半衿はご自宅で洗いやすい半衿です。ポリ半衿+ポリ長襦袢の場合、長襦袢に付けたままで洗濯機洗いできる製品もあります。(このページでは混乱を防ぐため、半衿は外してお手入れする方法をご案内しています。)
【洗えるが縮みやすい半衿】
- 正絹で塩瀬の半衿
正絹(シルク)の半衿はとても縮みやすいので、できればクリーニングでお手入れをした方が安心です。でも「ずいぶん使ったので自宅での手入れに挑戦してみたい」「半衿のお手入れに慣れてみたい」という場合には、ご自宅で洗うこともできます。ただアイロン台とアイロンは必須ですし、慣れるまでは練習も必要です。
失敗して縮むと元に戻らないので、大切な礼装用の半衿等をいきなり洗濯の練習におろすのはおすすめできません。
【ご自宅ではお手入れできない半衿】
- 正絹で縮緬(ちりめん)の半衿
- その他縮緬加工の半衿
- シボ加工のある半衿(素材問わず)
- 刺繍(ししゅう)加工のある半衿(素材問わず)
- スパンコール・ビーズ等の縫い付け加工のある半衿(素材問わず)
- 金糸銀糸加工のある半衿
- レース加工のある半衿
半衿をベンジンでお手入れする方法
まずは半衿をベンジンでお手入れする方法を見ていきましょう。ベンジンは乾くのが早いので、水洗いできない素材のお手入れにも向いています。「正絹で塩瀬の半衿、軽い汚れが気になるけれど洗うのはちょっと…」という時等に、ベンジンのお手入れ方法を用いるのがおすすめです。
用意するもの
- ベンジン(シミ抜き用のもの、カイロ用はNG)
- 柔らかい布
- タオル
※ベンジン使用中には必ず換気してください。
※ベンジン使用中は火器類の使用は厳禁です。
※素材・染色によっては色落ち・変色が起きることがあります。目立たない場所での変色テストをおすすめします。
半衿のお手入れの手順
- タオルを敷いて、上に半衿を広げておきます。
- 柔らかい布にたっぷりとベンジンを染み込ませます。
- 汚れた部分を布で軽く叩いていきます。
- 汚れがタオル等に移っていくので、常にきれいな面が当たるように動かしていきます。
- 汚れが取れたら、もう一度布をベンジンで濡らして濡れている面を広げ、ぼかします。
- 風通しの良い場所で乾かします。
- 型崩れが気になる場合には、スチームアイロンを浮かせて蒸気をあて、軽く引っ張るようにして形を整えます。
半衿を手洗いするお手入れ方法
水洗いできる半衿は、作用の穏やかな中性洗剤を使ってお手入れしていきます。
用意するもの
- 中性タイプのおしゃれ着用洗剤(エマール、アクロン等)
- タオル数枚
- 歯ブラシ(毛質の柔らかいもの)
- アイロン
- アイロン台
- あて布
- 霧吹き
※ファンデーションや皮脂汚れ等、油系の汚れが気になる場合、先に上で解説した「ベンジンでのお手入れ方法」でお手入れをしておくことをおすすめします。油溶性の汚れをあらかじめベンジンで取り除いてから水洗いすることで、油溶性・水溶性両方の汚れがスッキリと落ちます。
半衿のお手入れの手順
- 洗面器等に冷たい水を入れます。(特に正絹半衿の場合は縮みやすいので、ぬるま湯等は使用しません)
- おしゃれ着洗い用の洗剤を適量、水に溶かします。使用量は製品パッケージの説明書に書いてある「手洗い」の量を参考にしてください。
- 半衿を全体的に浸けて、10分~15分程度、放置します。(長時間の放置は縮みが激しくなるためおすすめしません)
- 汚れが気になる箇所を指でなでるようにして洗います。強く汚れが気になる場合には、歯ブラシを使って優しくトントンと叩くようにして洗い、その後、振り洗いして汚れを落とします。ゴシゴシ強くこすらないようにしましょう。
- 汚れが落ちたら、水を取り替えて2回真水で押し洗いするようにすすぎを行います。
- 2枚のタオルで半衿を挟んでトントンと軽く叩き、水分を吸い取ります。
- まだ半襟が濡れているうちに、あて布をしてアイロンがけを行います。布地を引っ張るようにして、布目に添って半衿の幅方向にアイロンをかけていきます。縮んだ部分を元に戻すように、少し強めにかけるのがコツです。あて布をしないとテカってしまうので、必ず布をあて、アイロンの温度は素材に合わせて設定しましょう。
- 半乾き程度になったら、ハンガー等にかけて形を整え、直射日光の当たらない場所で陰干しして仕上げます。
自宅でお手入れできない半衿はクリーニングへ
刺繍半襟や縫い付け加工のある半襟、また縮緬の半襟等は、ご自宅でムリにお手入れをすると加工が取れてしまったり、せっかくの風合いが失われてしまう可能性が高いです。このような半襟のお手入れについては、専門店でのクリーニング(シミ抜き)におまかせしましょう。
重ね衿(伊達衿)のお手入れ
次に、着物を重ねたように見える「重ね衿(伊達衿)」のお手入れについて見ていきます。伊達衿はより装飾性の強いアイテムで、いつも着物のコーディネートに使われるというわけではありません。振袖等、華やかさや遊び心が求められる装いの時に使うものです。
重ね衿のお手入れの基本はベンジン
重ね衿につく汚れの多くは、ファンデーションや皮脂等の油溶性汚れです。ほんの少し付いた軽い汚れであれば、ベンジンでお手入れをすることができます。
お手入れの手順は上の「半衿をベンジンでお手入れする方法」と同じです。なお、半衿と同様、刺繍の重ね衿や縫い付け加工のある重ね衿等はご自宅でのお手入れができませんので、ご注意ください。
またご自宅でのベンジンでのお手入れで対処ができるのは、付いてから間もないシミ・汚れだけです。酸化した黒ずんだ皮脂汚れや、いつ付いたかわからない古いシミはベンジンでは落ちません。
強い汚れはクリーニングで「シミ抜き」
重ね衿(伊達衿)に広い範囲で汚れが付いていたり、いつ付いたかわからない古いシミが気になる場合には、着物専門のクリーニング店に「シミ抜き」を依頼しましょう。機械での全体洗い(丸洗い)ですと汚れが落ちきりませんので、手作業で汚れを落としてくれる「シミ抜き」ができるお店を選ぶことが大切です。
半衿・重ね衿の保管
最後に半衿・重ね衿の保管について見ていきます。
半衿は外してまとめておく
半衿は原則として外した状態で保管するのが理想的です。ポリエステル半襟+ポリエステル長襦袢等で、衿をつけたまま洗える場合には、例外として衿をつけたまま保管しても構いません。この場合は型崩れを起こさないように十分ご注意ください。
定期的に陰干しする
半衿・重ね衿も着物の虫干しをする際に取り出して、風通しの良い場所で定期的に虫干し(陰干し)をするようにしましょう。繊維の中にこもった湿気を取り除くことで、カビの発生等のトラブルを予防します。
色あせに要注意
色付きの重ね衿等は特に、紫外線による色あせ・褪色が起きやすいです。着用後に日の当たらない場所で陰干しをしたらすぐにクローゼットやタンス等で保管して、虫干しの時以外はできるだけ陽光にあてないようにしましょう。
おわりに
半衿・重ね衿のお手入れと保管についてご案内しましたが、情報はお役に立ちそうですか?半衿や重ね衿は、面積は狭いですが汚れていたり型崩れすると意外と目立ちやすいアイテムでもあります。半衿や重ね衿のお手入れや保管をしっかり行って、いつもキレイな状態にしておきたいですね。