お手入れ

着物のカビが増える?NG対応と正しい見分け方・対処法

「保管してある衣類にカビが生える」と言われても、普段着の洋服の保管だとあまりそういうことが無いのでピンと来ない人も多いはず。ところが着物は表面に「糊(のり)」をかけてある上に、絹や毛等の天然素材を使うことから、一般的な衣類に比べてカビのトラブルが多いのが特徴です。

着物のカビを発見して焦ってしまい、間違った対処法を行ったことで着物をダメにしてしまった…というケースも少なくありません。着物のカビの種類の見分け方を知って、適切な対処を行いましょう。

吉原ひとし
吉原ひとし
こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。ここでは着物のカビに対してやりがちな間違いや、着物のカビの見分け方、対処法等を詳しく解説していきます。

着物のカビ増加?やってはいけない対処法

着物にカビを見つけると、多くの人が次のような対処をやってしまいがち。でもそれ、実は効果が無いことがほとんど。また、かえってカビを増やしてしまうこともあるんです。

カビにシミ抜きをするのはNG

カビの種類や程度によっては、着物の表面に青・黒・オレンジ・黄色等のシミのようなものが出きることがあります。一見して汚れによるシミと似ているので、ベンジンや洗剤等を使ってシミ抜きをしようとする人が意外と多いです。

しかしカビによるシミは「カビ菌の繁殖」と「カビによる変色」でできたものなので、食べこぼしや飲み物のシミのように「汚れを溶かせば落ちる」というものではありません。ご家庭での「シミ抜き」では、カビによるシミを取り去ることはできないのです。

「何度もシミ抜きすればカビのシミが目立たなくなるのでは?」とカビに無効なシミ抜きを繰り返した結果、布の表面に「スレ」を発生させて、専門店でも元に戻せなくなるケースも見られています。カビにシミ抜きをするのは絶対にやめましょう。

水洗いするのもNG

木綿着物やウォッシャブルウール着物等の「洗える着物」にカビが生えると、「水洗いをすればよいのでは?」と考える人もいるのではないでしょうか。しかし、カビ菌は水洗いでも除去することができません。

衣類を濡らし水分を含ませることによって、カビ菌の活動がかえって活発になってしまうこともあります。着物のカビの対処のためにご家庭で水洗いをするのは厳禁です。

陰干しだけして他の衣類と保管すると?

「カビくさい匂い」等のカビの初期症状の段階では、陰干し等で匂いを飛ばして対処をする人も多いですよね。空気にさらして湿気を飛ばすことで、たしかに一時的にカビによるトラブルを目立たなくさせることはできます。

しかし「匂いが目立たなくなったから」と言って、カビ臭くなった着物を他の着物や衣類と一緒にタンスやクローゼットにしまうのが厳禁です。匂いが目立たなくなっても、カビ菌は生き続けていきます。今度は他の衣類にカビ菌が移って繁殖し、カビによる被害がさらに拡大してしまうのです。

着物のカビの種類・程度の見分け方

着物のカビに正しい対処をするために、着物に生えるカビの種類とその症状の程度について知っておきましょう。あなたの着物に生えてしまったカビはどれに近いでしょうか?

白いフワフワ

  • 表面がフワフワ・モコモコしている
  • 白いポツポツがある
  • 払うと見えなくなる(カビが取れる)
  • カビくさい

これは「白カビ」による症状です。衣類に生える初期症状では表面にはほとんど見えず、カビ臭さだけが気になる場合もあります。

黄色いシミ

  • 以前に着物に白いカビが生えていた
  • カビくさい

黄色いシミは、「白カビ」が酸化したことでできたもの(黄変)です。つまり白カビの症状が進行しているシミということになります。白カビの表面だけを払い、カビ取りをしなかった時等に起こります。

オレンジ・茶色のシミ

  • 水玉模様のようにシミがある
  • 広範囲にシミがある
  • カビの匂いはあまりしないことも
  • 黒や濃い色の着物は変色する

オレンジ~茶色のシミは、白カビの酸化(黄変)がさらに進んでしまっている状態です。放っておくとどんどん茶色の色が濃くなっていきます。

この頃になると染料が破壊され、黒い着物や紺色の着物に薄ピンクのまだらのシミができるといった「変色」も起こりやすくなります。最終的には布地がボロボロと壊れる「脆化(ぜいか)」が始まり、着用することができなくなってしまいます。

黒・青・緑のシミ

  • ポツポツと小さな点のようにシミがある
  • シミが大きくなってきた気がする

これらは黒カビ・青カビによるシミです。白カビに比べると発生率はやや低いですが、小さな点が徐々に大きくなり、少しずつ繁殖場所が増えていきます。湿気が多い場所で特に繁殖しやすいカビです。

着物のカビには正しい対処を

着物にカビの症状が見られた場合の対処法について、カビの種類や程度毎に解説していきます。

白カビの初期症状の場合

近々に着物を着る予定がある場合には、表面のカビだけを払って取り除き、数日間以上は陰干しをして匂いを飛ばす応急処置を行います。

カビの匂いを目立たなくする方法についてはこちらでも詳しくご案内していますので、合わせてご参照ください。

着用後には、専門店で「カビ取り」を依頼しましょう。一般的なクリーニングである「丸洗い(石油溶剤を使った機械洗浄、ドライクリーニング)」だけではカビは落ちません。必ず「カビ取り」をしてもらいましょう。

黄色・オレンジ・茶色のシミの場合

黄変したカビのシミについては、カビ取りの処置と合わせて「黄変抜き(おうへんぬき)」という漂白処理をしないと着物が元に戻りません。

ただ、この「黄変抜き(古いシミのシミ抜き)」については高度な技術を必要とするため、対応できるお店がとても少ないのが現状です。黄変抜きはお断りするクリーニング店がほとんどとなっています。

職人が在籍する着物専門クリーニング店や、昔ながらの悉皆屋に相談をしてみましょう。当店『ふじぜん』でもカビによる黄変の処理の受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

なお黄変の程度によっては、漂白処理だけでなく、染色補正(色の染め直し、柄足し)等が必要となる場合があります。また黄変による布の脆化がひどい場合には、黄変抜きができない場合もあります。

黒・青・緑のシミの場合

青カビや黒カビによるシミは、初期症状であれば「カビ取りクリーニング」で処理をすることができる場合もあります。早めに着物カビ取りができるクリーニング店に相談をしましょう。

青カビ・黒カビの症状が進んでおり、あちこちにカビのシミができている場合には、カビ菌を根絶させるために「洗い張り(あらいはり)」をする必要が出てくる場合もあります。

「洗い張り」とは着物を一度ほどいて反物(たんもの、布のこと)の状態に戻し、職人が丁寧に洗浄を行う方法です。こちらも専門の職人が行う高度な技術なので、一般的なクリーニング店等では受付をしていません。

幅広い着物クリーニングに対応する専門店に相談することが大切です。

おわりに

着物のカビはとても厄介な存在です。一度カビ菌が発生するとご家庭では除去することができず、放置しておけば被害はどんどん拡大してしまいます。

「カビ臭い」「白いポツポツがある」等、軽い症状でもカビを見つけたら、できるだけ早くカビ取りを依頼しましょう。またカビ取りクリーニングを行った後は定期的に陰干しなどでお手入れをして、カビを生やさない予防対策を取ることも大切です。

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吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし


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