「着ようと思った着物の畳みジワが取れない」「一度着た着物の着ジワがひどい…」このような着物のシワやシワ取り方法に悩んでいる人はとても多いようです。着物は洋服のように着るたびに洗濯する衣類ではないので、余計にシワが残ると気になりますよね。
着物のシワ取り方法にはどんなものがあるのでしょうか?今回は着物のシワ取りスプレーやスチームアイロン等、着物の様々なシワ取りの方法やクリーニングに出す場合の注意点等について詳しく解説します。
目次
1.基本の着物のしわ取り方法は「長めに干す」!
着物の畳ジワ・着ジワといったシワを取るシワ取りの基本は「干すこと」です。着物は洋服と違い、着用しない時にクローゼットの中で吊るすような保管方法ではありません。そのため着物の生地にはシワが残りやすいのですが、形を整えて長めに干すことで繊維の状態が元に戻りやすくなり、シワが改善されやすくなるのです。
・畳ジワの改善:着物を着用する前に、最低でも着用予定日の2~3日前に影干しを始める
・着シワの改善:着物の着用後、1日以上は陰干しを行う
保管している着物を取り出す時、また一度着た着物をしまう前には、シワ取りのために長めの「陰干し(かげぼし)」をする習慣をつけましょう。
着物の上手な干し方
1)衣装敷の上で着物を脱ぎます。
2)衣装敷の上で着物を広げ、ハンカチや手ぬぐい等をあててから軽く手でシワを伸ばします。
3)着物専用のハンガー(和装ハンガー)に着物をかけます。
4)形をしっかりと整えます。
5)直射日光の差し込まない場所で、1日~3日程度陰干しを行います。
※素手で着物のシワを伸ばさないようにしましょう。手垢や手汗が生地に移り、黄変等のシミを作る原因になります。
※着物を干してからよりしっかりと手でシワ伸ばしをしたい場合は、白の綿手袋を使用すると便利です。
2.着物のしわ取りスプレーならカンタン?
「忙しくて、ゆっくり着物を干せない」「着ジワがくっきり付いて陰干しだけじゃ着物のシワ取りにならない…」着物を楽しんでいる人の中には、こんな悩みを持つ人も少なくないことでしょう。
「もっと手早く着物のシワ取りしたい!」という時に便利なのが、着物専用のシワ取りスプレーです。基本的には「スプレーをして乾かすだけ」という手軽さが魅力となっています。ただし使用にあたっては注意点やデメリットもありますので、その点も知っておくことが大切です。
シワ取りスプレーの使い方
1)着物を和装専用のハンガーにかけて、形をキレイに整えます。
2)生地から20~30センチ程度離して、シワの気になる箇所にスプレーをします。
3)軽くしっとりとする程度にまでスプレーしておきます。
4)手でシワのある部分を軽く引っ張って、生地を伸ばします。
5)そのまま自然乾燥させます。
シワ取りスプレー使用時の注意点
※刺繍部分、金箔・銀箔部分等、特殊加工がある部分には使用するのをやめましょう。
※シワ取りスプレーにはアルコールが含まれるため、染色によっては色落ち・変色が起こる可能性があります。必ず事前に裏側部分等の目立たない箇所で色落ち・変色のテストを行いましょう。
※着物の生地に近い位置からスプレーしたり、スプレーをかけすぎるのは厳禁です。シミができることがあります。万一シミができた場合には、速やかに専門店でクリーニングを行いましょう。
シワ取りスプレーは毎回使わない方が良い?
シワ取りスプレーには、界面活性剤やアルコール等の成分が含まれています。同じ箇所に何度もスプレーを吹きかけるとそれらの成分が繊維にたくさん含まれてしまい、保管中の変色やシミが生まれる元にもなりやすいのです。
「シワ取りスプレーが便利だから」と言って、着用するたびにスプレーを大量に使うのはあまりおすすめできません。あくまでも「困った時の緊急対策」として考えておいた方が良いでしょう。
3.着物のシワ取りにアイロンは?スチームアイロンもOK?
アイロンは洋服のシワ取り方法としては定番のアイテムですよね。着物の場合にも同じようにアイロンはシワ取りに使えるのでしょうか?基本のシワ取り方法や、アイロンが使えない着物について、またスチームアイロンの利用についてなども解説します。
着物のアイロンのかけ方
1)アイロンは木綿等の各素材に適した温度にあたためます。
2)着物を裏側を上にして、アイロン台に広げます。
3)白いさらし、または着物の共布を「あて布」として、しわのある部分の上に置きます。
4)目の細かい霧吹きを使い、あて布の上から軽く水を吹きかけます。
5)アイロンをなめらかに素早く動かします。
6)あて布を外して、シワの状態をチェックします。
7)シワが取れていない時には、もう一度あて布をして、5)とは違う向きに向かってアイロンをかけます。
8)シワが取れたら着物専用のハンガーにかけて、形を整え、冷まします。
着物にアイロンをかける時の注意点
※霧吹きで水をかけるのは「あて布の上から」です。直接着物に水をかけると、水シミができる可能性があります。
※あて布は十分な大きさがあるものを使いましょう。
※アイロンを強く押し当てるのはNGです。繊維が押しつぶされ、ふっくらとした風合いが失われます。
※アイロンは素早く動かしましょう。テカリや生地の変質が起きる原因になります。
※着物全体へのアイロンがけは避けた方が良いです。縫い目が目立ったり、風合いがペッタリとしてしまうことがあります。
シワ取りでアイロンがかけられない着物とは
以下のような着物にご自宅でアイロンをかけるのはおすすめできません。
・金箔・銀箔が使われている
・表地・裏地に正絹(シルク)が使われている
・自然素材(天然染め)で染色されている
・素材がわからない
・染め方がわからない
・留袖・振袖・訪問着等の礼服である
・着物のシワが非常に深い
正絹(シルク)は水による水シミ(ウォータースポット)ができやすい生地であり、また蒸気・水濡れによって収縮(縮み)が非常に起きやすい生地でもあります。着物のアイロンがけに慣れている人ならば縮まないように気をつけながらアイロンがけをできる人も居ますが、「初めての着物のアイロンがけ」で正絹着物を取り扱うのは避けた方が良いです。
特に留袖や振袖等、大切な礼装用着物で「着物にアイロン、初チャレンジ!」というのはおすすめできません。最悪の場合、着物クリーニング専門店でも失敗したテカリや縮みなどを元に戻せなくなることがあります。フォーマル向けの着物は特に、専門店にプレス(アイロン)を依頼をした方が安心です。
着物のシワ取りにスチームアイロンはアリ?
着物のシワ取りのお手入れにスチームアイロン(衣類スチーマー)が使えるのは、原則として「木綿着物のみ」と考えた方が良いでしょう。
衣類をハンガーにかけたままで蒸気をあてるスチーマーは、一般的なアイロンに比べてさらに多くの水分を着物に含ませます。そのため、正絹着物・ウール着物等の場合、種類や扱い方によっては大幅に着物が縮んでしまう恐れがあるのです。
家で着物のシワ取りができない時はクリーニング店で!
「大切な着物だし、やっぱりクリーニング屋さんでシワ取りをしてもらおうかな」と思ったら、着物クリーニングのお店選びを始めましょう。着物のシワ取りのためにクリーニングを使う場合には、以下のようなポイントをチェックしておくと安心です。
着物クリーニング専門店または着物クリーニングメニューがある?
洋服と着物では、アイロンのかけ方(プレスの方法)がかなり違います。いくら洋服に慣れているクリーニング店でも、着物を扱っていないところでは「着物向け」のアイロンのかけ方は苦手。縫い目を目立たせずにフンワリと仕上げる独自のプレス方法は、着物専門のクリーニング店や悉皆屋、着物を自社で扱っているお店でないとわかりません。
和装のクリーニング専門店または着物用のメニューがあるクリーニング店を選びましょう。
プレスだけでも依頼できる?
アイロン(プレス)だけのメニューがあれば、着物丸洗いをするよりも着物シワ取りの料金を安く済ませることができます。プレスだけを扱っているかどうか、問い合わせておくと良いでしょう。
なお既に目で観てわかるシミがあったり、数回以上は袖を通している着物の場合は、丸洗いまたはシミ抜きなどをした方が安心。汚れたままの着物をプレスすると、汚れが取れなくなってしまいます。
プレス前に検品してくれる?
上でもご紹介しましたが、万一着物に汚れやシミなどがあった場合、そのままアイロン(プレス)をしてしまうと汚れが取れなくなります。検品を行い、シミ・汚れなどが無いか事前にチェックしてくれるお店の方が安心です。
おわりに
着物のシワ取りの方法や注意点はいかがでしたか?「着物のシワがとても深く付いている」という場合、着物の着用中に汗をかいていて、着ている間に乾いたためにシワが取れにくくなっている可能性も考えられます。この場合、シワの問題だけでなく、汗の成分が残ったことによる「黄変」のトラブルが起こる恐れもあります。
シワが非常に深い、家では取れにくいという場合には、着物を専門に扱うクリーニング店で早めに相談をした方が良いでしょう。当店でも着物のシワ取りについてのご相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください!