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お宮参りの着物は他の行事でも使える?お食い初め・七五三での使い方

「お宮参りの着物(初着)って、一回だけしか使わないの?」「一回だけしか使わないなら、わざわざ着物を用意するのがなんだかもったいない…」赤ちゃんのお父様・お母様からは、時々こんなお声も聞かれます。でもお宮参りの着物は、一回しか使わないというものではありません。お食い初め・七五三等、お子様の成長を祝う様々な行事で使うことができるんです。

吉原ひとし
吉原ひとし
こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。ここではお宮参りの初着・祝着を様々な行事で使う方法について解説していきます。

お宮参り

「お宮参り(産土参り・初宮参り・初宮詣)」とは、生まれた赤ちゃんの健やかな成長を神様に祈る行事です。近隣の神社に赤ちゃんと共に参拝し、神主による祈祷を受けます。地域によっても行事を執り行う日程に違いはありますが、平均して生後30日前後~100日前後頃に行うことが多いです。

お宮参りでのお着物の使い方

お宮参りでは、着物(初着)は「掛着(かけぎ)」として、赤ちゃんを抱くお母様(もしくはお祖母様)の肩から羽織るようにして使います。
【初着の着せ方・羽織り方】

  1. 赤ちゃんをベッドに寝かせるか座らせて、先にフードを付けておきます。
  2. よだれかけ(スタイ)を付けて、首の後ろで結んでおきます。
  3. 長襦袢を初着(着物)と重ねて、袖を通して広げます。
  4. 着物の紐・襦袢の紐を重ね、袖の中に通して引っ張ります。
  5. 紐を引いて、紐の位置が袖の山に合うように整えます。
  6. 赤ちゃんを横抱きにして、赤ちゃんの足元が来る方の肩に着物・襦袢の紐をかけます。
  7. 着物の紐・襦袢の紐をまとめ、背中(肩の後あたり)で蝶々結びを作ります。
  8. よだれかけ(スタイ)を着物の外に出します。
  9. 小物を付ける場合には、お守り袋・デンデン太鼓等の小物を背中側の紐に吊るして完成です。

お食い初め

お食い初め(おくいぞめ)とは、母乳・ミルクから離乳食へと変わる頃に行う祝いの行事です。離乳食への切り替えがちょうど生後100日前後であることから、「百日祝い(ひゃくにちいわい)」と呼ばれることもあります。また地域によっては「箸揃え(はしぞろえ)」「歯固め(はがため)」「箸初め(はしぞめ)」と呼称されることもある行事です。初めて離乳食を食べる時に祝いをすることで、一生食べ物に苦労をしないこと、歯が石のようにしっかりと生えて健康であること等を祈ります。

お食い初めでのお着物の使い方

「お食い初め」では、同時に「色直し式(いろなおししき)」という儀式を行います。昔の日本では、生後100日頃までの赤ちゃんはまだ「神の子供」であり、人間の子供ではないことから「神」を連想させる白い着物を着せるしきたりがありました。生後100日を過ぎた赤ちゃんに「色の付いた着物」を着せることで、初めて人間の子供になる…「色直し式」には、そんな意味合いがあるのです。

かつては色直し式では、嫁側の祖父・祖母が色付きの小袖(こそで)を準備し、孫へと贈るのが一般的とされてきました。(※地域によっては、色直し式の準備を父方祖父・祖母が行うこともあります)でも最近では、お宮参りに使用した着物を使用して、小袖の代用とすることが増えています。

「色直し式」は正式には事前に白い着物を着せておき上から祝着を着せます。しかし近年ではお子様の負担等を考え、おしゃれなロンパース等を下に着せておき、写真撮影の時等にだけ祝着を羽織らせるという方も多いようです。

七五三(三歳の祝い)

七五三とは、お子様の順調な成長を祝い、正装で神社に参拝して神様に感謝と今後の更なる成長を祈る行事です。かつては数え年で女の子なら3才・7才、男の子は3才・5才の時に行うものでしたが、現在では満年齢で行事を行うことが一般的となりました。また元々は11月15日に行う行事ですが、近年では10月~11月のご家族のご都合の良い時に七五三をされる方が増えています。

お宮参りに使った「一ツ身(ひとつみ)」というお着物は、3才~4才頃まで着る事ができるサイズの着物です。七五三の三歳のお祝いの時には、この一ツ身を七五三向けに仕立て直し、晴着として活用することができます。

【お宮参りの初着を七五三着物にする方法】
1)縫い上げを行う
縫い上げ(肩上げ・腰上げ)とは、お子様の成長に合わせて着物の裄丈(ゆきたけ)や身丈(みたけ)をサイズ調整するものです。例えサイズがお子様にほとんどピッタリという場合でも、「これからもっと大きくなるように」という願いを込めて、ほんの少しの肩上げ・腰上げを行います。

2)付け袖を外す
お宮参りの初着の襦袢(じゅばん)には、男の子は白か水色、女の子には赤色の付け袖(つけそで)が付いていますね。七五三の装いの時にはこの付け袖を外します。

3)袖に丸みを付ける
お宮参りの着物・襦袢は筒のように広がったままになっています。七五三の時には袖の下側に丸みを付けて、袖口を綴じます。

4)紐の付替えをする
お宮参りの着物と長襦袢は、お母様やお祖母様の肩にかけやすいように、飾り紐が高い位置に縫い付けてあります。そのままの位置ですとお子様が着苦しさを感じますので、紐を一度外して3センチ程度下に縫い直します。

5)襦袢に半襟を付ける
半衿(半襟・はんえり)とは、着物の下に着る長襦袢に縫い付ける「替え衿(かええり)」のことを指します。元々は着物の襟元の汚れをカバーするためのものでしたが、現在ではフォーマルな装いであることの強調や装飾的な意味合いが大きいです。女の子の場合には華やかな刺繍入りの半襟を付けることで、可愛らしさやオシャレさがグッと上がります。

6)被布を準備する
着物を着慣れない現代人にとって、着物はかなり着苦しいこともあるもの。大人ですらそうなのですから、3歳のお子様には帯をしっかりと締めた装いをさせるのはちょっとかわいそうですよね。そのため七五三の3歳のお祝いでは、紐や兵児帯(へこおび)等で着物を軽く止めておき、その上から「被布(ひふ)」を羽織る装いが推奨されています。

被布」とは、現代で言えば袖なしのコートのようなもの。胴体部分にすっぽりと羽織ることができるので、多少ゆったり目にお着物を着せても目立ちません。また帯を結ぶ工程が必要なくなり、着付けにかかる時間や手間も大幅に短縮できます。

「縫い上げ」や「付け袖を外す」といった工程は、和裁・洋裁の経験がある方でしたらご自宅でも行うことができます。また「着物を直したことが無いから心配」「失敗したらどうしよう…」とご不安な場合には、呉服店・和装クリーニング店等の和装専門業者にご依頼をすることも可能です。

当店でも肩上げ・腰上げ・袖の丸み付け・紐付け直しといったお直しを承っておりますので、「初着を七五三の晴着として使いたい!」という時にはご相談下さい。

おわりに

お宮参りに使ったお着物は、上記のお喰い初めや七五三の他、お正月のお祝いの時に、雛祭り(ひなまつり)や端午の節句(五月のお祝い)といった季節の祝い事の際にも使用できます。

成長著しい赤ちゃんのお祝い着・おしゃれ着をひとつひとつのイベント毎に用意するのは、意外と大変なもの。「良いものを長く使う」という方法で、お子様のお祝い事を楽しまれてはいかがでしょうか?

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着物ケア診断士 吉原ひとし


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