お手入れがラクで着やすいポリエステル着物は、普段遣いや街着として楽しむのにピッタリの着物ですね。着物ビギナーさんはもちろん、着物ファンの方も発色の良さやデザイン性の高いポリ着物をたくさんお持ちではないでしょうか?
化繊(化学繊維)・ポリエステルの着物は、正絹着物やウール着物に比べると保管方法もかなりシンプルでカンタンです。その点でもポリ着物は初心者さん向きと言えるのですが…そうは言ってもTシャツ感覚で雑に保管していると着物がダメになってしまったり、他の着物に影響が出てしまうことも。
目次
着物の着用後には湿気を飛ばす
化繊・ポリエステルの着物は比較的カビ菌等が付きにくいため、正絹やウール等に比べるとカビ対策のお手入れもそこまで神経質になることはありません。ただ、着物を着てからタンスやクローゼットに保管する前には「陰干し」をして湿気を飛ばす習慣は必ず徹底するようにしましょう。
ポリエステル着物は多少の小雨位であれば着ることができるので、雨の日に着用するという人も多いはず。またポリエステル着物は通気性が今ひとつなので、着ていると中に汗をかきやすいです。つまりポリ着物は一回着るたびにたくさんの水分を繊維に付着させていることになります。
ポリエステル着物は綿等に比べて吸水性は弱いので「ずっと水分を溜め込んでいる」ということはないのですが、陰干しで乾燥させずに畳んで保管した場合は話が別です。内側に畳み込まれた水分がいつまでも残ってしまい、クローゼットやタンスの中の湿度を上げる一因となります。
【陰干しの方法】
- 直射日光の当たらない場所(屋外または室内)を選びます。
- 着物専用のハンガーまたは物干しに着物をかけて、形をキレイに整えます。
- そのまま1日~2日程度干し続けます。(屋外の場合は夜間取り込みます)
※屋外干しの場合、前日等に雨が降っていない湿度の低い日を選びましょう。
※室内干しの場合、エアコン等で室内の除湿を行いましょう。
※室内干しの場合、扇風機等で冷風をあて続けるのもOKです。
長期保管前には汚れをしっかり落とす
ポリエステル着物(化繊着物)は、ご自宅で洗えるものが多いですね。着る度に毎回着物を洗うという人は少ないと思いますが、長期保管をする前には必ずポリ着物の汚れをしっかり取っておくようにしましょう。
ポリエステル着物に限らず、繊維に付いた汚れは時間が経つごとにどんどん取れにくくなっていきます。半年、1年と時間が経つと、汚れがご自宅では落とせなくなることも。また場合によってはシミが変色し、取れなくなってしまうこともあります。シーズンの終わりや次回に着る予定が無いポリ着物は、特に徹底して洗浄することが大切です。
中性洗剤で全体洗い
ポリエステル着物(化繊着物)の保管前のお手入れの基本は、中性洗剤を使った水洗いです。着物によって手洗い必須の場合と洗濯機洗いOKの場合がありますので、洗濯表示をよく確認しましょう。
※ポリエステル着物でもレースや刺繍、縫い付け等の特殊加工がある場合にはご自宅での洗濯ができません。この場合には、速やかにクリーニング専門店に持ち込みましょう。
【ポリエステル着物の基本の洗い方】
- 中性洗剤をバスタブ等に入れて、ぬるま湯を入れよく溶かします。
- ポリエステル着物を全体的にぬるま湯に付けて、両手で押し洗いします。
- 襟元や袖の裏等の汚れやすい部分は、指で撫でるようにしてキレイに洗っておきます。
- ぬるま湯を2回取り替えて、よくすすぎます。
- 畳んでネットに入れてから30秒程度かるく脱水させるか、バスタオル2枚で挟んで軽く叩き水分を取ります。
- 着物専用のハンガーにかけて形を整え、直射日光を避けて風通しの良い場所で自然乾燥させます。
- アイロンを軽くかけて形を整え、熱を冷ましてからタンスにしまいます。
シミがあったら「シミ抜き」を
ポリエステル着物に「シミ・汚れ」を発見したら、汚れの原因に合わせたシミ抜きをしておきましょう。
「全体洗いをしているから大丈夫」と思う方が多いのですが、中性洗剤は比較的作用が穏やかなので、食べこぼしやメイク等の油の多いシミは落とし切ることができていないケースが多いです。保管中に変色して取れないシミになる前に、しっかり汚れ落としをすることが大切です。
それぞれの汚れの原因に合わせたシミ抜き方法は、次のページでご案内しています。
→ 水溶性シミのシミ抜き方法
→ 混合性シミのシミ抜き方法
→ 油溶性シミのシミ抜き方法
ご自宅でのシミ抜きが難しい場合や、不溶性シミ等の家でシミ抜きできない原因のものについては、早めに専門店にシミ抜きを依頼しましょう。
保管中には「通気性」に気をつけて!
ポリエステル着物・化繊着物の保管では、基本的に除虫剤(虫食い予防)などは特別に入れる必要はありません。ポリエステルが虫食い被害に合うことは稀だからです。
ただ長期間の保管中に通気性の悪い状態が続いたことで、色焼けや変色が起きてしまうというトラブルは見られます。例えばストーブのガスが溜まってしまったり、他の衣類に入れていた防虫剤同士が反応して生まれたガスが溜まったことで化学繊維が変色してしまったといったケースです。
通気性を良くしておけば、このような変色・色焼けトラブルのリスクは大幅に下げられます。
ビニール包装は必ず取る
ポリエステル着物・化繊着物をクリーニングに出した場合、店舗によっては着物にビニール包装がかかって戻ってくることもありますよね。タトウ紙と違ってビニール包装はとても通気性が悪いです。必ずすぐに包装を取って保管するようにしましょう。
衣類を詰め込みすぎない
ポリエステル着物・化繊着物の保管の場合には、1枚1枚をタトウ紙にキチンとしまって…というレベルで丁寧に着物を包む必要はありません。ただ、「楽だから」といって引き出しや衣装箱に着物をギュウギュウに詰め込むのはNGです。
衣類を詰め込みすぎると中の空気が動かなくなるだけでなく、取れにくいシワの原因にもなります。ポリ着物の収納は、箱の体積の7割程度を目安にしましょう。
正絹着物とポリ着物は分けて保管を
ポリエステル着物それ自体は、保管が比較的ラクな着物です。除虫や除湿にもそこまで気を使わず、気楽に出し入れができます。しかし問題なのは、お手入れがラクな分だけ、どうしても湿気や汚れに対して対策が甘くなりがち……ということ。そしてその影響が、一緒にしまっている正絹着物やウール着物に出てしまうことがあります。
特に正絹着物は湿度にも弱く虫食い被害も受けやすく、さらにはカビ被害も遭いやすいというとてもデリケートな着物です。ポリ着物と正絹着物を一緒にしまいこむのは、あまりおすすめができません。着物はできれば「正絹」「ウール」「ポリ」「綿」というように、素材ごとに分けて保管するようにしましょう。
おわりに
ポリエステル着物・化繊着物の保管について気をつけておきたいポイントをご紹介しましたが、情報はお役に立ちそうでしょうか。環境や着物の枚数によっては、着物を理想的な環境で保管するのが難しい…という人もいらっしゃることでしょう。
そのような時には、普段着る頻度の少ない着物を「プロの保管サービス」に預けておくのも手です。当店でも着物お預かりサービスを受け付けていますので、着物の保管にお困りの際にはお気軽にご相談ください。