和の文化を見直すようになった現在、若い方の中にも黒留袖や色留袖を着用される方が増えています。でも初めて留袖を結婚式に着る際に知っておきたいのが、フォーマル服(礼装)として留袖を着用する際のマナーです。知らないうちにマナー違反となっていた…なんてことの無いよう、帯や小物類の礼装用コーディネートをしっかり抑えておきましょう。
目次
帯締め・帯揚げは礼装用を!
帯締めは「白」が基本
帯の上から結ぶ飾り紐である「帯締め(おびじめ)」は、おしゃれ着の場合には様々な色合いのものが使用できる小物。でも結婚式に礼装用(フォーマル服)として黒留袖・色留袖を着る場合には、礼装向けの帯締めである「白」を使うのがマナーです。真っ白なタイプだけでなく金糸や銀糸がプラスされた華やかなものもありますので、装いに合わせて選んでみましょう。
ちなみにゲスト側として参列する友人同士の気楽な結婚式に、一つ紋の色留袖等を着る…このようなシーンであれば、薄い色地の帯締めでも可能とされる場合もあります。ただしこの場合にはカジュアルな装いとなり、着物の格はかなり下がりますのでご注意ください。
帯揚げも「白」で統一
帯の上に挟む飾り布である「帯揚げ(おびあげ)」。これもおしゃれ着の時には帯や着物の色に合わせてカラーコーディネートを楽しむ小物ですね。しかし、結婚式の場合にはこちらも絶対に白!白一色か白地に金糸・銀糸の刺繍を淹れたフォーマル用の帯揚げを合わせましょう。
帯は袋帯を選びましょう
結婚式に留袖を着用する場合、フォーマル用である「袋帯」をコーディネートします。名古屋帯等ではフォーマル服としてはNG。また柄行や色合いによっては袋帯でもカジュアルになってしまうことがありますので、礼装らしい柄行のものを選びましょう。金箔・銀箔・プラチナ箔等を使った華やかな袋帯を合わせると慶事らしい装いとなります。
留袖の中に着る長襦袢は?
「白」もしくは「薄色」を選びましょう
「長襦袢は中に着るから見えない」と思っていませんか?ところが袖口などから長襦袢の色は意外とよく見えるもの。カジュアル風の色の強い長襦袢を合わせれば、せっかくの正礼装・準礼装である黒留袖や色留袖も「おしゃれ着扱い」になってしまいます。
長襦袢も小物同様、色は白が基本。色留袖等で少し華やかな装いにしたい場合には、クリーム色や薄いピンク色等を合わせます。濃くキツい色合いではなく、必ず淡く上品な色を合わせるようにしましょう。
半襟は必ず「白」で!
長襦袢に付ける半襟は、黒留袖でも色留袖でも必ず「白」を選びます。半襟に色物を使うとフォーマル感が一気に失われ、留袖の意味がなくなってしまうので注意が必要です。お若い方でできるだけ華やかな装いをされたい場合には、白地に金糸や銀糸を入れた礼装用半襟を選んでも良いでしょう。
草履バッグはどうする?
草履は金銀の布製のものを
どんなにきちんとした留袖を着ていても、草履がエナメル等では礼服としてはNG。例えて言うなら、ブラックフォーマルのワンピースにブーツを合わせているようなものです。洋服の際にも、フォーマルの時にはフォーマルらしいヒールと踵のある靴を履きますよね。それと同様、留袖には礼装用の草履を必ず合わせるようにしましょう。
・布製であること
・白地であること
・佐賀錦・金綴織・銀綴織等の金銀模様であること
・踵(かかと)が5センチ程度はあること(履きづらい場合には4センチ程度でもOK)
以上をクリアした草履であれば礼装用として着用できます。ご不安な場合には呉服店等で「礼装用を」と指定した上で草履を探された方が良いでしょう。
バッグは草履とセットで
一般的には、礼装用の草履とバッグはセットとなったものを使った方がよりフォーマルらしく上品に仕上がります。セットであればコーディネートにもまとまりが出ますし、マナー違反の心配をする必要もありません。「着物用のバッグは荷物が入らなくて…」と心配される方も多いですが、近年の礼装用バッグはこのような声を受けてかなり大きめタイプが出回るようになっています。
スマートフォンやデジタルカメラといったお道具や、クレジットカード等が入った大きなお財布を結婚式に持っていたい方も多いはず。礼装用バッグをこれから買われるという方や、この機会に新調を考えていらっしゃる方であれば少し大きめのバッグと草履がセットになったものを選ぶことをおすすめします。
末広の準備を忘れずに!
末広(すえひろ)とは、帯の左側にさす慶事用の扇のこと。おめでたい場で使う扇であるため「祝儀扇」と呼ばれることもあります。扇子の形が広がっていて「末広がり」であり、縁起が良いことから「末広」と呼ばれるようになりました。
上記のように「縁起物」であることから、末広は小さいながら非常に重要なアイテム。こちらもカジュアルな扇子ではなく、礼装用のものを挿しておきます。
・骨(骨組の部分)が黒の塗りであること
・地色が金地もしくは銀地であること(白地に箔押しでもOK)
以上の点をクリアしていれば礼装用(慶事用)として使用できます。
ちなみに縁起物である末広は儀式的な小物なので、結婚式の場で扇を広げて使うというシーンはほぼありません。ですのでお着物にこだわる方であれば扇も「こだわりの小物」とされますが、「とりあえず揃えておきたい」という方であれば、末広の柄行等にそこまで心配をされる必要は無いでしょう。高額でカジュアルな色付き扇子よりも、リーズナブルでも礼装用として誂えてある末広の方がマナー的にはかなっている…というわけなのです。
おわりに
結婚式に留袖を着る時のコーディネートはいかがでしたか?「なんだか難しい…」と思った方は、黒いワンピースというプレーンな服を思い浮かべていただくと良いかと思います。肌色のストッキングに踵のある黒いヒールを合わせ、パールのネックレス等をすれば、シンプルなお洋服でもきちんとしたフォーマル感を出すことができますよね。
しかし反対に大振りでジャラジャラとしたネックレスやピアス・ブレスレットを合わせ、生足にミュールであったり、タイツにブーツであったとしたら、一気にカジュアルな装いになります。これで改まった席に出てきたら「えっ?」と思われる方が多いのではないでしょうか。
留袖もこれと同じ。
お着物自体が礼服であってもコーディネートがおしゃれ着向けのものであっては、フォーマル感はゼロになってしまうのです。コーディネートのポイントをきちんと抑えて、結婚式らしい礼装姿を楽しんでみましょう。