結婚式でミセスが着る着物と言えば、やはり留袖(とめそで)。でも現在では様々な結婚式スタイルがあるため「この結婚式に留袖を着て良いの?」と迷われる方も多いようです。ここでは代表的な神前式・チャペル式・人前式での親族が着る留袖の選び方、また最近人気のさまざまなウェデイングスタイルでの留袖選びについて解説していきます。
目次
神前式
日本の伝統的な結婚式の作法である「神前式」の場には、和装である留袖はピッタリです。
神前式
でお客様をお迎えするホスト側は、最も格の高い「正礼装」の着物を身につけるのがマナー。以下の身近な親族の既婚女性は、精霊そうである五つ紋付きの黒留袖を着用します。
・新郎新婦の母親
・新郎新婦の両親の姉妹(新郎新婦の伯母・叔母)
・新郎新婦の姉妹
・新郎新婦の祖母
・その他親しい親族の場合
・仲人の奥様
この他、ご親族の未婚の方で「振り袖はちょっと派手だから…」という時に、色留袖(三つ紋)を着用される方が増えています。最近では都会を中心に、既婚女性でも20代の方等は色留袖(三つ紋)を着用されることも増えているようです。
ただし特に神前式の場合、地域によっては「親族女性は全員黒留袖!」というルールが徹底されている場合もあります。「黒留袖か、色留袖か…」と迷われた場合には、ご親戚の方々に地域のお着物マナーを確認された方が良いでしょう。
チャペル式
「洋式のチャペル式なのに、留袖でもいいの?」と迷われる方も多い様子。でもチャペル式も洋風の「神様を前にした式」なのですから、第一礼装を身につけるのがマナーです。黒留袖はマナーに合い、礼にかなった服装というわけですね。
ちなみに洋装の場合の第一礼装とは「ロングドレス(イブニングドレス)」。脚の出るカクテルドレスでは準礼装となり、チャペル式に身近な親族が着用する服装としては少々格が下がります。ロングドレスをお持ちという方、着こなしに自信が有る方はあまり居ないですよね。そのためチャペル式でも「親族の女性は黒留袖」というのが一般的となっています。
人前式
列席者達に結婚の証人となってもらう「人前式」は、最近人気の結婚式のスタイル。人前式の場合、新郎新婦の考え方やお召し物によって親族・出席者の装いが大きく異なります。
新郎新婦がウェディングドレス/列席者も礼服の場合
新郎新婦のお二人が「神様の前でやる必要は無いので人前式にした」という考え方の場合、お召し物は人前式でもチャペル式と同様、ウェディングドレスとモーニングであることが多いです。この場合には出席者の方々にも特に平服指定を行いませんから、神前式・チャペル式同様の留袖を着用して良いでしょう。
新郎新婦が準礼装/列席者が略礼装(平服)の場合
新郎新婦のお二人が「もっと気楽に結婚式をやりたい!」とお考えの場合には、少々話が異なります。例えば新郎新婦が膝丈程度のフォーマルワンピース、礼装用スーツといった準礼装で、出席者の方々も通常のスーツや軽いワンピースといった略礼装でOKという式だったとしましょう。
この場合、親族が主役である新郎新婦よりも格の高い正礼装(五つ紋黒留袖)を着用しているのは、少々不適格かもしれません。主役が準礼装の場合には、親族の女性たちも三つ紋の色留袖(準礼装)等を着用して、格を揃えておいた方が安心です。
ガーデンウエディング
昨今では非常に人気の高い、屋外でのガーデンウエディング。この場合も人前式と同様に、新郎新婦のお二人の装いに合わせて親族の方々の留袖の格を決めれば安心です。なお屋外となるガーデンウエディングの場合、留袖を着るには暑さ・寒さ対策を考えておいた方が良いでしょう。
夏の場合には絽の留袖で、中の長襦袢を単衣のものにしておくと比較的涼しく過ごせます。また冬の場合には、肌襦袢や足袋等をあたたかい生地のものにしておくと安心です。新郎・新婦が上着を羽織るような場合には、親族も道行や礼服用コートをプラスして良いでしょう。
レストランウェディング
レストランウェディングも人前式スタイルと同様、新郎新婦お二人の考え方やレストラン店舗の規模によって装いが大きく変わります。最近ではほぼレストランウェディング専用に使用されるような大型で豪華な店舗も増えてきました。
レストランウェディングでも、チャペル式等と変わらないようなウェディングドレスを着用される新婦も大勢いらっしゃいます。この場合には神前式・チャペル式と同様の留袖を着用されても問題ありません。
反対にごく小規模なレストランウェディング、食事会のみといったスタイルの場合、主役のお二人も列席者の装いも非常にカジュアルとなる傾向があります。新郎新婦が通常のスーツ・カジュアルなワンピースといったいでたちで、列席者の方たちも平服OK(インフォーマルスタイル)といった式も珍しくありません。
この場合、格の高い着物である留袖はやや不向きである可能性があります。最高格である五つ紋黒留袖を止めて色留袖(一つ紋)にしておく、もしくは色無地・訪問着等のやや気楽な着物にしておくというのも手です。
おわりに:大切なのは「主役との関係」と「両家のバランス」
「お式の規模で着る着物が変わるなんて、なんだか難しい…」と感じる方がいらっしゃるかもしれません。しかし「主役との関係性」さえ抑えておけば、結婚式の着物の考え方はグッとラクになります。原則として「母親」「姉妹」「祖母」といった親しい親族は、新郎新婦と同格の着物を着るのがルールです。
新婦が正礼装である長いドレスを着るのであれば、親族の着物も正礼装(五つ紋黒留袖)を。新婦がカクテルドレスやフォーマルワンピースといった準礼装ならば、親族も準礼装(三つ紋色留袖等)を…と考えれば良いわけですね。
また親族の関係性が遠い場合には、更に一歩控えめの着物を選んだ方が良いでしょう。お式の規模がわからない時には、新郎新婦にどんな装いをされるのかを伺ってみると良いですよ。またもうひとつ重要なのが「両家のバランス」です。新郎の母親と新婦の母親の着ている服の格が同程度であること、これが意外と大切になってきます。
例えば新郎のお母様が五つ紋黒留袖(正礼装)なのに、新婦のお母様が授業参観等や二次会等でお召になられるようなインフォーマルスーツ(略礼装)…これでは両者の装いがチグハグで、バランスが良くないですよね。
できれば両家の奥様やご親族の方たちがどのような装いをされるご予定なのか、確認をされておいた方が安心です。