着物の長襦袢は自分で洗濯できるって知ってましたか?長襦袢のお手入れを自分で行えば、着物おしゃれにかかるコストも抑えられますし、汗汚れもスッキリ落とせて気持ちが良いですよ。
また、自分で洗うのが難しい場合の長襦袢クリーニングについても紹介するので、参考にしてみてくださいね。
目次
長襦袢は自分で洗濯できる?チェックリスト
長襦袢を自宅で洗濯できるかどうかは「素材」「加工」「半衿取り外し」「アイロン所持」「干す場所」「シミの状態」等で決まります。自分の長襦袢を出して見てみましょう!
1.素材はポリエステル?絹?
長襦袢が洗えるかどうかの確認のために、まずは長襦袢の素材を素材表示・洗濯表示で確認します。
ポリエステルやナイロン等の長襦袢は基本的に水に強いので、ほぼご自宅で洗えます。型崩れや収縮(ちぢみ)も起きにくく、丈夫なものなら洗濯機での洗濯も大丈夫です。ただし「2.」で説明するシワ加工・シボ加工製品等には注意が必要です。
絹の長襦袢は水に弱くて、縮みやすいです。そのため水洗いすると身丈や袖丈が縮んでしまいます。基本的に自分で洗えますが、縮みを引っ張って洗濯後に直していく作業が必要です。自分での洗濯には少々コツが居る、上級者向けの素材です。
水に縮みやすいですが、絹とは違って「引っ張ると縮みが戻る」があまり無い素材です。レーヨン混紡の場合は水洗いを避けた方が良いです。
麻の長襦袢もやや水に縮みやすいです。洗うことはできますが、絹と同じように、アイロン等で引っ張って縮みを元に戻す作業が必要です。なお、麻の濃い色の長襦袢は水洗いすると色落ち(色あせ)しやすいです。洗濯を繰り返すことで「味新品のような深くハッキリした色味をキープしたいなら、ご自分で洗うのは避けた方が良いでしょう。
2.シボ加工・シワ加工・特殊加工はある?
シボとは、凸凹のような加工のこと。表面がなめらかで平ではなく、ボコボコとしていたりシワシワしていたら、次のような加工がある可能性が高いです。
× シボ加工
× 縮緬(ちりめん)
× シワ加工
× プリーツ加工
このような長襦袢は、原則的に家では洗えません。せっかくの風合いが取れてしまうためです。ポリエステル製で洗濯表示に「水洗いOK」とある場合だけでは洗濯OK。その他の場合にはクリーニングに出します。
× 刺繍(ししゅう)
× 縫い付け(スパンコールやビーズなど)
× レース加工
× 金彩加工
オシャレな方向けに作られた刺繍やレース等の特殊加工がある長襦袢も、家では洗えません。加工がダメになってしまう可能性の方が高いからです。こちらもクリーニングに出してくださいね。
3.半衿の取り外し・縫い付けができる?
長襦袢を自分で洗濯するには、襟元に縫い付けてある「半衿(はんえり)」を外して、別洗いしなくてはなりません。また次に着用する時には、自分で半衿を縫い付ける必要があります。
お裁縫がある程度できる方なら、半衿縫い付けはそこまで難しくはありません。でも手縫いに慣れない場合には、洗濯は避けた方が良いです。(長襦袢をクリーニングに出す場合には、半衿は付けたままで洗えます)
4.シミ・変色の状態は?
自宅での長襦袢の洗濯で落とせる汚れは、次のようなものです。
- 最近(一週間程度)についた汗汚れ
- 最近(一週間程度)についた皮脂汚れ
- 付いて1~2日以内の水性の汚れ、シミ
- チリ、ホコリ
次のような汚れは、通常の洗濯では落とすことができません。
- いつ付いたかわからない古いシミ
- 汗ジミによる輪染み
- 黄ばみ
- 黄変による変色(オレンジ~茶色くなったシミ)
無理に汚れを落とそうとすると、布地が多大なダメージを受け、元に戻らなくなる可能性が高いです。
5.アイロン+アイロン台はある?
- 絹を含む長襦袢
- 麻を含む長襦袢
- 木綿を含む長襦袢
上の自然素材を含む長襦袢は洗うと縮むので、洗濯後にアイロンで強く引っ張って、縮みを元に戻す作業が必要です。いわゆる「スチーマー(スチームアイロン)」では、縮みを戻す作業はできません。
昔ながらの「アイロン+アイロン台」でのお手入れが必要となります。
6.長襦袢をまっすぐ干す場所はある?
長襦袢は洗濯後に干す際に、裾をたるませずに干す場所があるか確認しましょう。最近では鴨居等が無いか低く、無理に室内で干すと裾がシワになってしまうケースも見られています。
【普段着向けの長襦袢で洗濯の練習がオススメ!】
長襦袢を自分で洗濯すると、ちょっと縮んだり型崩れを起こしてしまうこともあります。最初に長襦袢を自分で洗濯するのは、多少の型崩れを起こしてもそこまで気にならない「普段着向け」の長襦袢、街着として遊ぶ時に着る長襦袢などがオススメです。
反対に、結婚式や成人式、葬儀、その他式典等で着るフォーマル向けの長襦袢は、万一の縮み等が起きると目立ちやすいです。フォーマル向け長襦袢を自分で洗濯するのは、十分に練習を積んでからの方が良いですよ。
長襦袢を自分で洗う方法【洗濯機編】
洗濯表示で「洗濯機OK」の表示がある長襦袢(多くはポリエステル製の丈夫なものです)は、ご自宅の洗濯機で洗うことができます。
洗濯機洗いのための準備
- おしゃれ着用洗剤(中性タイプのもの)
- 柔軟剤(できれば無香料だと安心)
- 洗濯用ネット
- 縫い針と糸または安全ピン
- バスタオル2枚
- アイロン、アイロン台
- あて布
- 着物専用ハンガー
※縫い付けてある半衿は事前に外します
※縫い針と糸で、襟元をカンタンに縫い止め、動かないように固定します。縫うのが面倒な場合は、安全ピンで止めてもOKです。※洗濯用ネットは長襦袢を畳んで平らに入れてピッタリおさまるサイズだとシワになりにくいです
洗濯機洗いの手順
- 洗濯機は「ドライコース」「手洗いコース」等の優しく洗えるコース設定にします。最後の脱水は10秒~20秒程度に短く設定してください。
- 洗濯機におしゃれ着用の中性洗剤と柔軟剤をセットしておきます。
- ネットごと着物を入れて、洗濯をスタートさせます。
- 最後の脱水はシワ予防のため、できるだけ短く設定しておきます。(ビショビショに濡れている状態でOKです)
- 洗濯が終わったら洗濯機から着物を取り出します。
- タオル2枚で着物を挟んで、軽く叩くようにして水分を吸い取っていきます。この方法だとシワになりにくいです。
- アイロンを素材に合った温度に温め、アイロン台・あて布を準備します。
- 半分濡れているままの長襦袢をアイロン台に広げて、アイロンで強く引っ張るようにしながらシワ・縮みを伸ばしていきます。
- 型崩れ・縮みが戻り、半乾き程度にまで乾いたら、着物専用のハンガーにかけて形をよく整えます。
- 直射日光を避けて風通しの良い場所で自然乾燥して仕上げます。
※洗濯機では「温水」を使用しないでください。縮みの現任になります。
※洗濯機に付随する乾燥機能、ならびに乾燥機の使用は絶対にNGです。乾燥で縮んだ長襦袢は元に戻りません。
長襦袢を自分で洗う方法【手洗い編】
絹の長襦袢など、縮みやすくデリケートな作りの長襦袢は手洗いをします。
手洗いのための準備
- おしゃれ着用洗剤(中性タイプのもの)
- 柔軟剤(できれば無香料だと安心)
- 洗濯用ネット(脱水用、省略は可能)
- バスタオル2枚
- アイロン、アイロン台
- あて布
- 着物専用ハンガー
※縫い付けてある半衿は事前に外しておきます。
※長襦袢は畳んで、汚れが気になる面を外側に出しておくようにします。
手洗いの手順
- 洗面器などにぬるま湯(30℃以下)を入れてから、中性洗剤を適量(ティースプーン1杯程度)入れてよく混ぜておきます。
- 長襦袢を畳んだ状態のままで1)の洗剤液に浸します
- 両手で優しく押し洗いをします。
- 汚れが気になる部分は直接洗剤を付けて、指でやさしくなじませてから振り洗いをします。
- 水で1回すすぎを行います。
- 洗面器に水を入れて、柔軟剤を適量溶かしておきます。使用量は製品説明書を確認してください。
- 長襦袢を6)の柔軟剤を溶かした水に全体的に漬けます。
- できれば洗濯ネットに入れて、30秒程度軽く脱水させます。(洗濯ネットが無い場合は10秒程度)
- タオル2枚で着物を挟んで、軽く叩くようにして残った水分を吸い取っていきます。
- アイロンを低温に温め、アイロン台・あて布を準備します。
- 濡れたままの長襦袢をアイロン台に広げて、強く引っ張るようにしてアイロンで縮みを伸ばしていきます。
- 半乾き程度にまで乾いたら、着物専用のハンガーにかけて形を整えます。(縮みが戻っているかよく確認してください)
- 直射日光を避け、風通しの良い場所で自然乾燥して仕上げます。
※ポリエステル長襦袢でシワになりにくい素材の場合は、アイロン仕上げは省略しても構いません。ハンガーにかける時にていねいに型崩れを直しましょう。
※布地を擦り合わせたり、ゴシゴシ洗ったりするのはNGです。毛羽立ち、スレなどが起きると元に戻らなくなります。
長襦袢の洗濯に失敗しないための5つの注意点
着物初心者の方からは「長襦袢の洗濯に失敗してしまった」という声もよく聞きます。特に失敗しやすいポイントを5つにまとめてみました。
1.必ず「中性タイプの洗剤」を使う
普段着に使う洋服向けの洗剤は、多くが汚れをしっかり落とせるアルカリ性です。粉石鹸・液体石鹸なども同様です。アルカリ性の洗剤は洗浄力が高いのは良いのですが、絹等を縮める力がとても強いのが難点。そのため、長襦袢の洗濯には使えません。
必ず「中性タイプの洗剤」を使ってください。エマールやアクロンなど、おしゃれ着洗い用洗剤ならほぼOKです。
2.漂白剤の使用は不可
脱臭やしみ抜き等のための漂白剤は使用できません。素材の種類によっては激しい色あせが起きたり、縮み等の変質が起きることがあります。
3.つけ置き洗いや長い放置はNG
つけ置き洗いをすると長襦袢が縮みやすくなるので、つけ置きも避けましょう。また洗濯の途中、脱水後等、濡れた状態の長襦袢を長く放置するのも縮みや型崩れの原因になります。
4.脱水させすぎない
長襦袢の洗濯でとても多い失敗が「脱水しすぎ」によるシワです。洗濯機での脱水はシワと型崩れの元。あとからのアイロンではシワが取れないくらいに長く脱水させて、長襦袢をシワシワのクチャクチャにしてしまう人も居ます。
脱水は長くても30秒程度でおさめて、あとはタオルとアイロンで水分を取るようにしましょう。
5.洗濯後にはすぐにアイロンを
長襦袢を洗濯したら「濡れている状態で」アイロンをかけるのが大切です!乾いてからアイロンをいくらかけても、縮んでしまった素材は元に戻りません。
特に初めての長襦袢の洗濯(水通し)の場合、絹や麻等の自然素材は驚くほど縮みます。「洗ったらすぐにアイロン」を徹底して、縮みを早く元に戻しましょう。
自分で洗えない長襦袢のクリーニング方法は?
- 半衿を縫い付けできない
- フォーマル向けなので型崩れさせたくない
- シボ加工なので家で洗えない
- 自分で洗うのが不安
上のような場合には、長襦袢はクリーニングに出します。長襦袢をクリーニングにする時のポイントは以下の2つです。
汗抜きクリーニングで変色防止
長襦袢によくつく汚れの代表格が「汗」です。この汗汚れは一般的な丸洗いクリーニング(ドライクリーニング)だけでは落ちにくく、繊維の中に残ってしまいがち。残った汗の成分は、何年かすぎると酸化して「黄変」という黄ばみや茶色い変色シミを作る原因にもなってしまいます。
長襦袢をクリーニングに出すのなら、「丸洗いクリーニング」に「汗抜き」をプラスするのがおすすめです。汗抜きクリーニングを行って貰うことで、汗の成分がスッキリ落ち気持ちよく着られるだけでなく、変色予防にもなります。
着物専門の店に長襦袢を出そう
長襦袢のクリーニングについては、着物関連に強い着物専門のクリーニング店や悉皆屋さんなどに相談するのがおすすめです。一般的なクリーニング店だと「別の業者に依頼して、ただ丸洗いをするだけ」で終わってしまうことも。キチンとした対処ができるお店を選ぶと安心ですよ。
おわりに
長襦袢を自分で洗濯するホウホウは、慣れてしまえば意外とカンタンなものです。でも初めての時には半衿を取り外したり、アイロンを強く引っ張ってかけたりすることに慣れず、戸惑う方も多いと思います。
中古着物屋さんやフリーマーケット等で激安長襦袢を買ってきて、それを練習台にしてみるのも良いでしょう。できるだけ早く長襦袢の洗濯に慣れておくと、着物のおしゃれも楽しみやすくなりますよ!