「車椅子で着物を着るには、どんな工夫が必要?」そんな疑問を持つ方もいるかもしれません。
車椅子用に二部式にした着物は、着物を上衣と下衣に分けるだけでなく、座った姿勢で着付けやすく、着用しやすくするためのさまざまな工夫が取り入れられています。
下衣の形や留め方、帯、袖、裾、衿など、工夫できる部分はさまざまです。
この記事では、車椅子用に二部式にした着物にはどのような仕立ての工夫があるのかを分かりやすく紹介します。
車椅子用に二部式にした着物とは?
車椅子用に仕立てた二部式の振袖
車椅子用に仕立てた二部式の黒留袖一般的な着物は、一枚の着物を身体に合わせて着付けます。一方、車椅子用に二部式にした着物は、着物を「上衣」と「下衣」に分けた仕立てになっています。
上半身と下半身を分けることで、車椅子に座った姿勢で着付けやすく、座位での着用を考えたさまざまな工夫を取り入れやすくなります。
つまり、二部式にする大きな目的は、単に着物を上下に分けることではなく、車椅子に座った状態で、無理なく着物を楽しめるようにすることです。
二部式にすることで期待できるメリット
車椅子用に二部式にした着物には、次のようなメリットが期待できます。
※仕立て方や素材、使用する部材によって、得られるメリットは異なります。
こうしたメリットを生み出すために、二部式の着物にはさまざまな仕立ての工夫が施されています。
車椅子用に二部式にした着物には、どんな工夫がある?
車椅子用に二部式にした着物は、単に着物を「上衣」と「下衣」に分けるだけではありません。
車椅子に座った姿勢で着付けやすくするために、下衣の形や留め方、帯、衿などにさまざまな工夫を取り入れることができます。
ここでは、一般的に考えられる工夫と、KIMONOiSUで実際に制作した仕立ての一例をご紹介します。
① 上衣と下衣を分ける
上衣と下衣の二部式着物
二部式の大きな特徴は、着物を上衣と下衣に分けることです。上半身と下半身を分けることで、車椅子に座った状態で着付けを考えやすくなります。
また、上衣と下衣をそれぞれの身体の状態や車椅子での姿勢に合わせて調整しやすいことも、二部式の特徴です。
② 下衣を座った姿勢や着用方法に合わせる
下衣をU字にカット
下衣は、車椅子に座ったときの姿勢や、どのように着脱するのかを考えて形を工夫することがあります。
たとえばKIMONOiSUでは、車椅子から立ち上がらずに、お尻の部分から差し込めるよう、下衣をU字にカットした仕立てを実際に制作した例があります。
トイレなどを除いて立ち上がる必要がない方の場合、このような形にすることで、座ったまま着用できるようにするという考え方です。
ただし、これはすべての車椅子用着物に共通する仕様ではありません。車椅子の使用状況や身体の状態、ご本人の希望に応じて選択できる工夫の一例です。
③ 留め方を工夫する
両サイドにファスナーを取り付けた袴
着付けをしやすくするために、通常の着物とは異なる留め方を取り入れることもあります。
- 面ファスナー
- スナップ
- ファスナー
などを使い、紐を結ぶ工程を減らす方法があります。
どの部材を、どの位置に使うかは、着る人の身体の状態や着付ける人の状況などによって変わります。
④ 帯を工夫する
腹胴帯と一体化した帯〆
帯の前飾り帯も、車椅子での着用を考えるうえで工夫できる部分です。たとえば、腹胴帯と太鼓帯を分ける方法があります。
KIMONOiSUで実際に制作した例では、腹胴帯をお腹のサイズに合わせて作り、後ろをマジックテープで留める仕様にしています。
帯揚げや帯締めを腹胴帯に取り付けることで、帯周りを扱いやすくする工夫もあります。また、写真撮影などでは、文化帯スタイルの太鼓帯を使用する方法もあります。
このように、帯も「どのように着けるか」「どのような場面で着るか」によって工夫することができます。
⑤ 袖・裾を工夫する
車椅子では、袖や裾が車輪やアームレスト、足元などに触れることがあります。そのため、袖の長さや裾の位置、布の収まり方を車椅子に合わせて考えることがあります。
車椅子の種類や姿勢によっても適した形は異なるため、実際の使用状況を確認することが大切です。
⑥ 長襦袢を袖に取り付ける
袖に取り付けた長襦袢
長襦袢についても、着付けをしやすくするための工夫があります。たとえばKIMONOiSUでは、長襦袢の袖を着物の袖に取り付ける仕立てを実際に制作した例があります。
長襦袢を別に着る工程を減らし、着物の袖と一体で扱えるようにする工夫の一つです。
⑦ 半衿・重衿を着物の衿に取り付ける
半衿・重衿を着物の衿に取り付け
衿元にも、着付けの工程を減らすための工夫を取り入れることができます。KIMONOiSUでは、半衿・重衿をあらかじめ着物の衿に取り付ける仕立てを実際に制作した例があります。
着物を着る際に衿元を整える工程を減らし、座った状態でも扱いやすくするための工夫の一つです。
⑧ 草履にも工夫を取り入れる
スリッパのように履ける「飾り草履」
足袋を履くことが難しい方には、足袋と草履を一体化し、スリッパのように履ける「飾り草履」という工夫もあります。
KIMONOiSUでは、こうした飾り草履のほか、一般的な草履や、鼻緒のないタイプの草履も用意しています。足の状態や履きやすさに合わせて、無理なく選べるようにすることも、車椅子で着物を楽しむための工夫の一つです。
このように、車椅子用に二部式にした着物には、上衣・下衣の分離だけでなく、下衣の形、留め方、帯、袖、裾、衿、草履など、さまざまな部分に工夫を加えることができます。
ただし、ここで紹介した仕立て方がすべての方に適しているわけではありません。
車椅子の種類や身体の状態、着物を着る場面、そして「どのように着たいか」という希望によって、必要な工夫は変わります。
必要な工夫は、車椅子や身体の状態によって異なる
車椅子で着物を着るために必要な工夫は、すべての人に同じというわけではありません。同じ二部式の着物でも、使っている車椅子や座ったときの姿勢、身体の動かしやすさ、着物を着る場面などによって、確認したいポイントは変わります。
そのため、「車椅子用だからこの形」と一つの方法に決めるのではなく、実際の使用状況に合わせて考えることが大切です。
車椅子の種類によって確認したいこと
車椅子には、自走式・介助式だけでなく、電動車椅子やティルト・リクライニング機能付きの車椅子など、さまざまな種類があります。
車椅子によって、座面の形や高さ、アームレスト、フットサポートなどの構造が異なります。
また、ティルトやリクライニングを使用する場合は、姿勢を変えたときの袖・裾・帯・背中側の生地の収まりなども確認する必要があります。
同じ「車椅子」でも構造が違えば、着物に必要な工夫も変わってきます。
着用する人によっても必要な工夫は変わる
車椅子の種類だけでなく、着る人の身体の状態や動かしやすさによっても、必要な工夫は変わります。
- 上半身をどの程度動かせるか
- 腕を上げたり前に伸ばしたりできるか
- 座った姿勢をどの程度保てるか
- 身体を左右に動かせるか
- 着付けをする人がどこまで介助できるか
などによって、着付けやすい形は異なります。
さらに、成人式、結婚式、記念撮影、家族との食事など、どこで、どのくらいの時間着物を着るのかによっても考え方は変わります。大切なのは、「二部式にすること」そのものを目的にするのではなく、その人が実際に着る場面を想像して、必要な工夫を選ぶことです。
車椅子の種類、身体の状態、着用する着物、着る場面。これらを一つずつ確認することで、必要な仕立ての工夫が見えてきます。
KIMONOiSUはオーダーカスタマイズに対応
車椅子で着物を着るために必要な工夫は、車椅子の種類や身体の状態、着用する場面によって異なります。
そのためKIMONOiSUでは、決まった形の車椅子用着物を選んでいただくだけではなく、お客様のご希望や使用状況に合わせたオーダーカスタマイズにも対応しています。
決まった形に合わせるのではなく、ご希望に合わせて考える
「車椅子だから、この形でなければならない」という一つの答えがあるわけではありません。
- できるだけ身体を動かさずに着付けたい
- 着付けをする家族や介助者の負担も減らしたい
- 座った姿勢での着物の見え方を大切にしたい
- 手持ちの着物をできるだけ活かしたい
- 成人式や結婚式など、特別な日に着たい
など、着物を着る人によって希望はさまざまです。
KIMONOiSUでは、こうしたご希望を伺いながら、どの部分にどのような工夫が必要なのかを一緒に考えることを大切にしています。
車椅子や身体の状態に合わせて、必要な部分をカスタマイズ
オーダーカスタマイズでは、二部式にすることだけを目的にするのではなく、実際の使用状況を考えて仕立て方を検討します。
- 上衣・下衣の分け方
- 下衣の形や長さ
- 留め方
- 帯の仕様
- 袖や裾の調整
- 衿や長襦袢の工夫
など、必要に応じて検討することができます。もちろん、すべての部分を変更する必要があるわけではありません。
必要なところに必要な工夫を加える。
それぞれの車椅子や身体の状態、着用する着物や利用シーンに合わせて考えることが、車椅子で着物を楽しむための大切なポイントです。
KIMONOiSUは、車椅子だから着物の選択肢を狭めるのではなく、「どんな着物を着たいのか」という気持ちも大切にしながら、一人ひとりに合わせた方法を考えています。
まとめ
車椅子用に二部式にした着物には、座った姿勢で着付けやすく、着用しやすくするためのさまざまな工夫があります。必要な工夫は、車椅子や身体の状態、着用する場面によって一人ひとり異なります。
KIMONOiSUでは、ご希望や使用状況に合わせたオーダーカスタマイズにも対応しています。「着たい着物」をあきらめず、自分に合った着物の形を考えてみてください。