七五三に欠かせないアイテムといえば千歳飴(ちとせあめ)。七五三の振袖姿・羽織姿に千歳飴を持った子どもたちの姿は、かわいらしいものですね。「長ーい飴を昔持ったことがあるなあ…」と思いだした人も多いのではないでしょうか?でもその有名さに比べて、千歳飴の由来や食べる理由を知っている人はほとんど居ないようです。
目次
七五三には千歳飴って、いつから決まったの?千歳飴の由来
千歳飴の由来については諸説あります。
- 江戸時代の初期である徳川家康・秀忠が幕府を起こして間もない頃(1605~1615年頃)、大阪から訪れた飴屋が江戸・浅草で「長い飴」を売り出し、「長寿になる飴」と言われてヒットした。
- 徳川五代将軍・綱吉公のご治世の頃(1680年~1709年頃)、浅草・浅草寺境内で「紅白に色分けした棒の形の飴」を売り出し、これに「千年」という名前をつけてヒットした。
- 江戸時代後期(1845年~)、江戸・神田明神前にある甘酒屋「天野屋」が千歳飴を取り扱って人気となった。
いずれにしても江戸時代に、江戸(現在の東京)を発祥として千歳飴を持つ・食べる文化が根づいたのは間違いないようです。
ちなみに七五三という文化は平安時代頃からあったと言われていますが、子どもを周囲に顔見世させる・派手に祝い事をするといった習慣は五代将軍・綱吉が行ったことで武家社会に浸透し、その後庶民にも伝わったと言われています。
七五三の祝い方が定着した17世紀~18世紀頃に、同時に「千歳飴」という文化も根付いたのでしょう。
千歳飴はなぜ長いの?
千歳飴の「千歳(ちとせ)」とは、千年を意味しています。かつての日本では「千年」や「万年」は、「永遠」と同じほどの長い年月として扱われてきました。つまり「永遠というほどに長生きしてほしい!」という親の思いが込められているのが千歳飴。千歳飴がとても長いのは、「健康で元気にいてほしい」という心の現れなのですね。
なお千歳飴の太さは半寸(約1.5センチ)、長さは三尺(約90.9センチ)というのが一般的です。時々「1メートルが決まり」と書いてあるサイトがありますが、千歳飴が販売開始された頃にはそもそもメートル法がありません。
昔の長さの数え方である「尺貫法」で、長さ・太さが決められていたんですね。90センチ以上という長さは、小さな子どもが持つと「大きすぎる」と感じられるかもしれませんが、「元気で長生き」という縁起物であると考えてみましょう。
千歳飴の袋の絵の意味は何?
千歳飴の袋には、大抵「鶴(つる)」「亀(かめ)」や「松(まつ)」等が描かれています。「もっとかわいいキャラものがいいのに」と思う人も居るかもしれませんね。でもこれも「縁起(えんぎ)」をかついだ絵なのです。
昔から日本では「鶴は千年、亀は万年」という言葉があるほど、鶴・亀は寿命が長い生き物であると考えられてきました。
また梅・松・竹は縁起の良い植物であり、中でも松は最高級の「常緑樹」です。長生きの動物や植物をパッケージに描くことで、「元気で健康に」という千歳飴の縁起の良さを更にイメージアップさせているのですね。
千歳飴は何本入っているの?
ひとつのパッケージに入っている千歳飴の本数については、時代や地域によっても差があります。かつては「紅白一本ずつ」「白のみ」というケースも多かったのですが、最近では紅白を取り混ぜて「年齢に合わせた数」を入れるところが増えているようです。
とは言え七五三は地域性も強い行事ですので、必ずしも「この本数が絶対に正解」というものはありません。
千歳飴は神社で貰う物?
神社や仏閣で「七五三の祈祷」を正式に依頼した場合に、祈祷後に「授与品」という形で千歳飴をいただくのが一般的です。この場合には、千歳飴は神社からいただくお祝いの品ということになります。
ただ最近では「祈祷を依頼せず、お参りのみで済ませる」というご家庭も増えました。そのためお祝いの品を配るのではなく、神社境内の社務所などで七五三の千歳飴を別途販売しているところもたくさんあります。
この他、神社境内では千歳飴の取扱が無く、神社の参道や近隣にある店舗(和菓子屋等)で千歳飴の販売が行われるケースもあります。
神社・仏閣によって千歳飴の取扱が異なるので、祈祷を依頼する際等に事前確認しておくと良いでしょう。ただ「千歳飴ってもらえますか?」と質問するのではあまりにも不躾ですよね。
「ご祈祷のすぐ後に境内でも写真撮影をしようと思うのですが、千歳飴は自分で持ち込んだ方が良いでしょうか?」といった質問の仕方であれば、スムーズに確認が取れるでしょう。
千歳飴を買えるのはどこの店舗?通販はある?
11月頃の七五三の時期には、スーパーや和菓子店の他、百貨店(デパート)などでも七五三の千歳飴の取扱を行います。近隣の神社では千歳飴の取扱が無い…という場合には、事前に店舗で購入をして写真撮影等にも使いましょう。
なお千歳飴は季節性の強い菓子なので、秋口以外ですと実店舗での取り扱いが極端に少なくなります。この場合には、インターネット等の通信販売を利用しましょう。
ただし千歳飴は「割れると困る(緩衝材を多く入れる)」「長さが有る」という2点があるため、品代よりも送料が高くかかることがほとんど。この点にはご注意ください。
なお千歳飴は高温多湿を避ければ、賞味期限の長い食品です。「11月ではなくて12月に七五三がある」といった場合には、11月のうちに実店舗で千歳飴を買って保存しておくのも手ですよ。
千歳飴は写真スタジオで貰える?貸してくれる?
写真館・写真スタジオでの千歳飴の取り扱いは、スタジオによって大きく異なります。
- 中身入りの千歳飴を撮影に使う→撮影後には「特典」として千歳飴を貰える
- 千歳飴のパッケージのみを小道具として撮影で使う(飴はなし)
- 千歳飴のパッケージの用意は無し
事前に写真館・スタジオに問い合わせをして、千歳飴の取り扱いを確認しておいた方が良いでしょう。
千歳飴はどうやって食べる?折って食べてもいい?
千歳飴は元々は、できるだけ長い状態で食べるものだったと言われています。これには前述した「長い飴を食べる=長寿を祈る」という意味があったのも大きな理由です。
また、昔の日本では砂糖の輸入が無かったため、飴がとても高価な食べ物だったというのも理由となっています。「長い飴を独り占めできる」というのは、とても贅沢なことだったのです。甘いものを独占できることが、お祝いの主役である証だったのですね。今でいえば、ホールケーキを独り占めできるようなものかもしれません。
とは言え現代で90センチ以上もある飴をそのまま舐めるのは大変です。適当に折ってしまって構いません。「折ってしまうと縁起が悪いのでは…」と心配される方もいますが、大丈夫!
きちんとした和菓子屋や神社で販売する千歳飴は、制作や販売の時点で祈祷やお祓いをしたものであることがほとんどです。
「縁起物である飴を口にする」ということが大切なのであって、食べる時の形状を気にすることはありません。ご家族の皆様で千歳飴を楽しんでくださいね。
おわりに
千歳飴についての様々な疑問と回答はいかがでしたか?「びっくりするほど長い飴を持った」「赤と白の飴がキレイだった」…非日常的なアイテムである千歳飴という存在は、祝い事の主役であるお子様にも大切な思い出となるはずです。
七五三の着物や持ち物等の準備が整ったら、千歳飴の準備についても忘れないようにしておきましょうね。