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お宮参りの初着を七五三着物に活用するには?

お宮参りの時に使った「初着(うぶぎ)」。せっかくの美しいお着物を、そのまま眠らせておくのはもったいないですよね。初着はちょっとしたお直しをすることで、七五三の三歳のお祝いの晴れ着として活用することができます。

吉原ひとし
吉原ひとし
こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。ここでは初着を七五三の晴れ着として活用するための工程について解説していきましょう。

1.肩上げをします

肩上げ(かたあげ)」とは、お子様の成長に合わせて裄丈(ゆきたけ:首~袖の長さ)をサイズ調整することです。山を取ってまっすぐに縫うだけですので、和装や洋装の経験がある方でしたらご自宅でも意外とカンタンに挑戦していただけます。

【肩上げの方法】
1)着物の裄丈を計測する
裄丈とは襟元の中心部から袖口までの長さのこと。平らに置いた状態で計測をして下さい。
2)お子様のサイズを計測する
お子様にまっすぐに立ってもらい、腕を斜め45度に上げておいて貰います。首の後ろのグリグリとしている部分(首の根元中央部)から手首(腕のくるぶし)までを計測しましょう。なお洋服のように、手にかかる程に袖を長く取るのはNG。袖が長すぎると着姿が美しくありません。
3)肩上げ寸法を割り出す
裄丈(1.で計測した寸法)からお子様のサイズ(2.で計測した寸法)を引きます。引いた数値が、肩上げをする寸法です。
4)肩上げ山を決める
後ろ身頃:横の位置は肩幅の中心(背中心から肩までの半分の位置)に。縦は身頃の最上部からまっすぐに下ろし、袖付止(袖と身頃が付いている部分)の2センチ上まで取ります。
前身頃:前身頃は肩幅の中心から、外側へ向けて1センチ程度斜めに下ろして取ります。
5)縫う部分を固定する
後ろ身頃:肩上げ寸法を2で割った数値を出し、そこから1センチ分を引きます。この数値を肩上げ山の左右両方から摘みだし、待ち針で固定します。
前身頃:肩上げ寸法をⅡで割った数値を出し、この数値を肩上げ山の左右両方から摘みだして待ち針で固定します。
6)縫い合わせる
肩上げ山を外側に倒し、二本取り・二目落としで縫っていきます。表面に細かい目が来るように縫うと、美しく仕上がります。

2.腰上げをします

腰上げ(こしあげ)」とは、お子様の身長に合わせて着物の身丈(みたけ:首~裾までの長さ)をサイズ調整することです。大人の女性向けの着物では着付けの際の「おはしょり」で調整を行いますが、子供向けの着物では腰上げで縫い付けておきます。肩上げ同様、こちらも和装・洋装経験がある方でしたらカンタンに行っていただけるサイズ調整です。

【腰上げの方法】
1)着物の身丈を計測する
着丈とは、襟元の中心部から裾までの長さのこと。平らに置いた状態で計測して下さい。
2)お子様のサイズを計測する
お子様にまっすぐ立ってもらい、首の後ろのグリグリとした部分(首の根元中央部)から足首のくるぶし部分までを計測します。
3)腰上げ寸法を決める
着丈(1.で計測した寸法)からお子様のサイズ(2.で計測した寸法)を引きます。この差が「腰上げ寸法」の参照数値です。
4)腰上げ山を決める
腰上げ山の位置は、「着丈-腰上げ寸法の半分」を2で割った位置が基準となります。しかしお子様に着物を羽織っていただき、帯下に上げ山が来るように上げ山の位置を取った方がバランスが取りやすいのでおすすめです。
5)縫う部分を固定する
腰上げ寸法を2で割った数値を出し、腰上げ山の上下両方からそれぞれ摘み上げて待ち針で固定します。身頃右側(下前部分)の端は1センチほど多めに摘んでおくと、着姿が美しく、着た時の足さばき等がしやすくなります。
6)再度羽織って調整する
仮止めをした状態で一度お子様に着物を羽織っていただき、丈の長さを見てみましょう。丈の長さが床から1センチ程度になっているのが理想的です。着付けの際に紐で結ぶと丈が上がりますので、羽織った際に短すぎるようでしたら再調整をしてみてください。
7)縫い合わせる
腰上げ山を下に倒し、二本取り・二目落としで縫っていきます。肩上げ同様、表面に細かい目が来るように縫いましょう。一目の大きさが5mm程度となるのが理想的です。なお上前(身頃左側)は表に見える部分ですので、端を揃えて縫うようにしてください。

3.付け袖を外して袖に丸みを付けます

お宮参りの初着には、男の子は水色、女の子には赤色の「付け袖」が付いています。七五三の時にはこの付け袖を外し、袖を綴じて丸みを付けます。

【袖のお直し方法】
1)袖を外す
袖元の糸を切り、付け袖を外します。
2)型紙を作る
直径13センチ~20センチ程度の円形の型紙を作り、これを1/4にカットして使用します。ダンボール等の厚手の紙を使った方が作業がラクですよ。
3)印を取る
袖を裏返して型紙をあて、丸みをつけるための印を付けていきます。この時、袖口・袖底の両方から2mm程度開けるようにしてください。
4)印に合わせて縫う
印を付けた部分に合わせて、3mm程度の細かな目で縫っていきます。
5)外側を縫う
縫い目の外側を更にぐし縫いし、糸端を残します。
6)丸みを形作る
アイロンを低温に温めておきます。型紙と合わせながら、5)で残した糸端を引き絞り、丸みを作ります。絞り余った部分の布は身頃側に向かって織り込み、アイロンで抑えます。
7)袖口を綴じる
着物を表に戻し、袖口(手を入れる部分)から丸みを付けた部分までをくけ縫い(縫い目が表に出ない縫い方)で綴じます。

なお袖の丸み付けは、肩上げ・腰上げに比べてかなり難易度が高いです。和装の経験を積んでいる方であれば丸み付けの要領やくける要領も理解しやすいと思いますが、まず長襦袢で練習をなさってからお着物に挑戦されることをおすすめします。

また和装経験が無い方の場合には無理にご自宅でお直しをなさらず、専門店にご依頼をされた方が無難です。

4.紐の付け替えをします

着物・長襦袢の飾り紐(付け紐)は初着の時には高い位置に縫い付けてあります。そのまま七五三着物に使うと締めにくく、お子様が着苦しさを感じることも多いようです。紐を外して、以前に付けていた箇所より3センチ程度下の箇所に縫直しをすると着やすくなります。

5.半襟(半衿)を付けます

女の子のお着物の場合には、長襦袢に半襟を付けます。半襟には様々なものがありますが、七五三の時には刺繍入りの半襟を付けるとお祝い事らしい華やかさが出て、可愛らしさ・オシャレさも上がりますよ。

【半襟の付け方】

  1. 半衿全体にアイロンをあてておきます。
  2. 襦袢の衿の背中心から紐の上までの長さを測っておきます。
  3. 半襟の中心から襦袢と同じ長さを取り、残りを裏側にアイロンで抑えてしつけ縫いをします。
  4. 襦袢の衿幅を測っておきます。
  5. 半襟の巾中心から襦袢の衿巾と同じ寸法を取り、アイロンで折り目を付けておきます。
  6. 長襦袢の衿の中心と半衿の中心を合わせ、マチ針で止めます。更に両端に向かってマチ針で止めていきましょう。
  7. 半襟の端側から、クケ縫い等の縫い目の出ない方法で縫い合わせていきます。

※長襦袢の内側に衿芯を入れておくと、仕上がりがより美しくなります。

6.被布を準備します

被布(ひふ)とは、着物の上から羽織る袖なしコートのような和装上着です。3歳の七五三参りの時には、帯をしっかりと締めた装いをするとお子様が着苦しく、長く着物を着ていることができません。また帯ありの着物は着付けの時間も長くかかりますから、小さなお子さんには負担が大きいですよね。

でも紐や兵児帯で着物をカンタンに止めて上から「被布」を羽織れば、着苦しさも軽減できますし着付けの時間も短縮できます。赤地のお着物に薄いピンクの被布、ピンクのお着物に白の被布等、敢えて色味の違う被布を合わせて3才ならではのコーディネートを楽しんでみてはいかがでしょうか。

おわりに

当店では初着から七五三着物へのお直し(肩上げ・腰上げ・袖の丸見つけ・紐つけ直し等)を承っております。「着物を直したことが無いから不安」「大切で高価な着物だから、失敗したくない」とお考えの時には、是非当店までご相談下さいませ。

また「お直しをしようと思って初着を出したら、変色をしていた」「カビ臭い」「シミが気になる」といったお着物の汚れや匂いについてのお悩みも、着物のプロである診断士がご相談を受け付けています。

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着物ケア診断士 吉原ひとし


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