染み抜き・ハウツー

着物シミ抜き料金相場+相場だけで決めるとソンする4つの理由

ここでは着物のシミ抜きの料金を知りたい人のために、着物のシミ抜きの料金比較や料金相場と、料金が決まるシステムについて、着物のシミ抜きでソンをしないためのポイントもお伝えしています。

吉原ひとし
吉原ひとし
こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。着物のシミ抜きのお店選びをする前に、ぜひ参考にしてみてください。

着物のシミ抜き料金の相場を知ろう!

まずは着物のシミ抜き料金の相場を見ていきます。

新しいシミのシミ抜き料金相場

着物に付いたばかりのような新しいシミのシミ抜き料金相場は、直径1センチ程度の場合で1ヶ所あたり800円~1,800円です。この料金相場は、着物クリーニング・着物シミ抜きを行う各社の料金を比較して換算しました。代表的な会社様の料金を見てみましょう。

【各社の着物シミ抜き料金比較(新しいシミの場合)】

※料金価格はいずれも税込価格です。
※2024年2月時点の公式サイト料金表の情報を基にしています。

【新しいシミのシミ抜き料金相場と注目点】
着物のシミ抜きの料金相場 800円~1,800円

小さいシミであれば安く扱う業者様とセット料金的にまとめている業者様があるため、染み抜きの料金相場は価格範囲が割りと広めです。落としたいシミが小さいものであれば、最低料金が安い染み抜き屋さんを選んだ方がオトクと言えます。

古いシミの場合のシミ抜き料金相場

着物にいつ付いたかわからない古いシミや、変色しているシミの場合のシミ抜き料金相場は1ヶ所あたりで2,500円~5,000円です。

【各社の着物シミ抜き料金比較(古いシミの場合)】

  • わ蔵様の場合 11,000円~
  • 洗匠工房様の場合 1,650円~2,200円
  • きもの染み抜き専科様の場合 5,500円~
  • 当社ふじぜんの場合 880円~

※料金価格はいずれも税込価格です。
※2024年2月時点の公式サイト料金表の情報を基にしています。

【古いシミのシミ抜き料金相場と注目点】
着物のシミ抜きの料金相場(古いシミの場合) 2,500円~5,000円

古いシミ(変色してしまっているシミ)の場合、まず「対応ができる店が少ない」という問題があります。そのため着物シミ抜きの料金相場が新しいシミ(ついたばかりのシミ)に比べると高いです。

着物のシミ抜き料金の仕組み

着物のシミ抜きの料金相場を見て「値段の数字のあとの”~”(から)ってどういうこと?」「1センチの場合って書いてあるけど、2センチ以上の場合はどうなるの?」と疑問に思った人も多いはず。着物のシミ抜き料金が決まる仕組みについて見ていきます。

シミ抜き料金はシミが大きいほど高くなる

着物のシミ抜きの料金は、原則としてシミの範囲が広くなる、つまりシミが大きいほど高くなります。これはなぜか?というと、シミ抜きは機械が一気に行うのではなくて、人の手作業で少しずつ行っているからです。

デリケートな着物にダメージを与えずにシミを取るために、専門の職人さんが一つ一つを少しずつ汚れ取りしていきます。シミが大きければ、職人さんがシミ取りするための時間も手間がたくさんかかりますよね。大きなシミともなると、一つを取り切るまでに1週間近くかかることも。ですから、シミの大きさ(範囲)で、段階的に料金が上がる仕組みになっています。

だいたい直径1センチごとに、少しずつシミ抜き料金が上がっていくお店が多いです。

【例】
直径1センチ以下の場合 1,000円前後
直径2センチ以下の場合 1,300円~1,500円前後
直径3センチ以下の場合 1,800円~2,500円前後

なぜ3センチだと高額になるのかというと、3センチを超えるようなシミを目立たなくするためには、とても高度な技術が必要となるためです。

とりあえず「シミが大きいほど値段は上がる」とおぼえておきましょう。

シミ抜き料金は色の濃さやシミが古いほど高くなる

着物のシミ抜き料金が高くなる要素は他にもあります。それが「着物についたシミの色の濃さ」や「シミの古さ」です。

古いシミ=変色シミ・黄変シミ

シミには段階があります。ここでは例として「汗」のシミについて見ていきましょう。

1)新しい汚れ(ついたばかり)
汗濡れしたときは目でわかるが、乾くと見た目ではわからなくなる。この段階で汗抜きをしておくと比較的カンタンに汚れが取れる。(自宅でのお手入れでもある程度の汗汚れを落とせる)

2)乾いてしまった汚れ(1週間~10日程度の経過)
汚れが繊維に定着しはじめた状態。自宅でのお手入れでは汚れを落とすことが難しくなる。着物クリーニング店での汗抜き加工などを依頼すれば、比較的カンタンに汚れが落とせる。

3)黄ばみとして浮き出たシミ(半年~3年程度の経過)
汗の汚れが酸素と結びついて酸化し「黄変(おうへん)」を起こす。わかりやすい言い方だと「黄ばみ」。酸化によって起こった黄ばみは、一般的なクリーニングや着物シミ抜きでは落とせない。汗の汚れ落としとともに、漂白作業などが必要になる。

4)黄ばみから濃いオレンジ・茶のシミへ(さらに時間が経過)
酸化による黄ばみは放置すると更に色が濃くなる。オレンジ色→薄茶色→焦げ茶色と段階的に濃い色へと変化し、漂白などの対処には更に手間がかかるようになっていく。完全には変色の色が落としきれず、染め直しなどの染色補正処理が必要となるケースも増える。

シミとなってからの時間が長く、色が濃いほどに、シミを目立たなくさせるための処理には時間と手間がかかるようになります。そのため、「古いシミ」「色の濃いシミ」ほど、シミ抜き料金が高くなるのです。

吉原ひとし
吉原ひとし
着物古いシミについてはこちらの記事もご参考下さい:着物の黄ばみ・古いシミを取る「黄変直し」とは?4つの疑問を解説

シミ抜き料金は「1個(1ヶ所)あたり」の値段

今まで解説してきたシミ抜きの料金は、どれも原則として「1個あたり(1ヶ所あたり)」の価格です。ですからシミの箇所が2ヶ所あれば、それぞれにシミ抜きの料金が発生します。1,000円で落とせるくらいの大きさのシミが2ヶ所なら、「1,000円×2」で、料金は2,000円になるというわけですね。

基本的には、上のようにシミの数に応じて料金が変動すると考えてください。ただ、あまりにもシミが細かく散らばっているような場合には、純粋に「シミ何個」という考え方ではなくなることもあります。(お店によっては「シミ5個までいくら」といったセット料金制にしている場合もあります)

シミ抜き料金を決めるための「見積もり」

上で解説したように、シミ抜きの料金は「大きさ」や「古さ(色の濃さ)」、そして「シミの数」で変わります。ですから一般的な着物クリーニング(丸洗い)とは違って、ひとりひとりの着物の状態でシミ抜き料金が変わるのです。そのため、多くの着物シミ抜きのお店では「お見積り(おみつもり)」というシステムを取っています。

「お見積り」とは?

お見積り(おみつもり)とは、ここでの場合、着物のシミ抜きにかかる料金を店員さんが作業に入る前にお知らせすることを言います。着物の状態を店員さんがチェックして、シミの大きさや状態等を細かく見てから「これだと、2,000円ですね」とか「3,000円かかります」といったように教えてもらえるわけです。

実際に着物を見てみないと大きさや色の状態などを把握できないので、ネット上だけでお見積りをするお店は少ないです。殆どの場合には、お店まで着物を持ち込むか、お店に宅配便で着物を送って状態を見てもらい「お見積り」となります。

!!!!シミ抜きが一律価格表示のお店に要注意!!!!
洋服とは違って、着物のシミ抜きができる職人さんはとても人数が少なく限られています。そのため、シミ抜き価格が上記のように変動性なのは、ほぼどこも同じだと考えて良いです。

「着物のシミ抜き一律◯◯円」といった書き方をするお店があったら、少し注意してください。着物専門の職人に依頼していなかったり、シミ抜き料金だけを取って「汚れが取れなかった」と返却するような悪質な業者もあるようです。「着物のシミ抜き料金がわかりやすいから」と、一律表記をする店に安易に依頼をするのはNGです。

着物シミ抜きは料金相場だけで決めるとソン?その4つの理由

ここまで着物シミ抜きの料金相場や料金システムについてご案内してきました。当社『着物ふじぜん』も、着物シミ抜きの料金相場の中では、安い価格帯でサービスをご提供しているかと存じます。

なお「ネットやSNSで探したら、相場よりもっと安くて1ヶ所100円でやってくれると書いてあった!」というような激安の価格のお店を見つけた方もいらっしゃるかもしれません。(例えば洋服クリーニングのお店で「着物のシミ抜きにも対応します」と書いてあるような場合等にも多いです)

しかし着物シミ抜きのお店を「激安だから」「相場よりもとても安いから」という理由だけで決めるのはおすすめしません。これには4つの理由があります。着物のシミ抜きでソンをしないために、ぜひ知っておきたいポイントです。

「シミ抜きだけだとNG」の店がある(他の料金がかかる)

まず絶対に知っておくべきなのは、「着物のシミ抜き”だけ”ではクリーニングを受け付けてくれない店がある」ということです。着物のシミ抜き(部分洗い)を単体では扱わず「着物丸洗いのオプションサービス」という扱いにしているお店も多いのです。

これでは最終的な値段に大きな違いが出ます!

着物丸洗いとは?

着物丸洗い(きもの・まるあらい)とは、着物を機械を使って全体的に溶剤で洗うクリーニングの方法のこと。洋服でいうところのドライクリーニングです。着物丸洗いの料金相場は着物の種類にもよって違い、10,000円程度のところもあれば、25,000円位する場合もあります。お店によっては「京洗い」「着物洗い」といった名称となることもあります。

では実際に、着物のシミ抜きのための料金価格にどのような違いが出るのか見てみましょう。

【例】着物に1センチ程度のシミが2ヶ所ある場合

A)シミ抜き単体で依頼ができるお店
・シミ抜き料金 1ヶ所1,000円(1センチあたり)
→1,000円(シミ抜き)×2ヶ所

料金全額:2,000円

B)シミ抜き単体では依頼できず丸洗いのオプションとなる場合
・シミ抜き料金 1ヶ所100円(1センチあたり)
・丸洗い料金 訪問着 1枚10,000円
→100円(シミ抜き)×2+10000円(丸洗い料金)

料金全額:10,200円

着物シミ抜きの価格だけで見ると、一見すればBのお店の方が「1ヶ所100円」でとても安く見えます。しかし「シミ抜きだけ」をやってくれないお店なので、全体を丸洗いするための料金もかかります。反対にAのお店はシミ抜き価格は1ヶ所1,000円ですが、シミ抜きだけで引き受けてくれるため、結果として8,000円近くの料金差額が出てしまいました。

例えば「すぐにまた着物を着たいから、全体洗いはしないでシミだけ取りたい」という方も多いはず。無理に丸洗いをせず、シミ抜きだけで依頼をできるお店を選んだ方が、結果的にはオトクというわけです。

【ポイント1】シミ抜きだけでも依頼ができるお店を選ぼう!

古いシミのシミ抜きができない店もある

上で解説した「シミ抜きの料金相場」の項目を読んだ時「古いシミの料金比較の例が少ないなあ」と感じた方も居るのではないでしょうか?それもそのはず、実は着物の古いシミ(黄変シミ・変色シミ)に対処ができるお店や職人さんは、現在ではとても減ってしまっているのです。

「着物クリーニングできます!シミ抜きOK!」と書いてあっても、実際には古いシミ(変色してしまったシミ)には対処ができず「シミ抜きしましたが落ちませんでした」と返却するようなお店が(とくにネット上で極端に激安な価格を提示するような店で)増えているというのが現状です。

特に「染み抜きしたい」と思っている着物のシミが「いつ付いたかわからないシミ」「1ヶ月以上は時間が経っているシミという場合、「シミ抜き料金が激安だから」というだけでお店を選ばず、古いシミ・変色シミに対処できるかどうかが明記されているお店を選んだ方がよいでしょう。

【ポイント2】古いシミ・変色シミにも対処ができるお店を選ぼう!

染色補正での対応ができない店がある

着物についたシミがとても範囲が広かったり、色が濃かったりすると、シミ抜きや漂白だけでは対処がしきれないかも・・・というケースがあります。着物の布はとてもデリケートなので、ムリに漂白を続けると、布が薬剤に耐えられず、破けてしまうかもしれないからです。

でも「シミが取れない」だけで着るのを諦めてしまうのは惜しい着物もありますよね。こんな時、キチンとしたお店だと「染色補正(せんしょく・ほせい)」という方法で、着物を蘇らせることができます。

例えばシミの部分に上から柄を書き足してシミを目立たなくしたり、着物の地色を染め替えて変色を隠してしまうといったカバーの方法も取れるわけです。でも、このような染色補正の対処ができるのは、基本的に「昔から着物のシミ抜きをやっているお店」です。シミ抜き料金も、圧倒的に安い!というほどではなく相場の範囲内・・・というところになるかと思います。

相場に比べてとても安いような(1ヶ所100円といった)圧倒的な激安着物シミ抜き料金を提示するお店は、その多くが染色補正などの高度な対処はできない可能性が高いです。古いシミや広範囲のシミ等、手強そうなシミほど、料金の安さだけで選ばず「様々な対処法が取れる店」を選んだほうが納得いく結果が得られることでしょう。

【ポイント3】染色補正など、様々な対処ができるお店を選ぼう!

無料の事前見積りが無い店もある

着物のシミ抜き料金は一律ではなく、着物の状態を店員さんが見てからの「見積もり」になることは上で解説しましたね。しかしこの「見積もり」は、必ずしも無料とは限りません。

お店によっては見積もりだけでキャンセルすると「見積もり手数料」を取られたり、そもそも見積もりだけの依頼は受け付けていないというところもあります。

シミ抜きの場合、シミの状態によっての価格変動が大きいので、料金がいくら位になるのかを知っておきたい方が多いことでしょう。安心のためにも、ぜひ「無料で見積もりを行うこと」「見積り後にキャンセルしても手数料等を取らないこと」を明記しているお店を選んでいただきたいところです。

【ポイント4】無料での見積もりができるお店を選ぼう!

まとめ

最後にもう一度、着物のシミ抜き料金相場やシステム、注意点についてまとめます。

【シミ抜き料金のまとめ】

  • 着物のシミ抜き相場は800円~1,800円(1ヶ所あたり・1センチ程度で新しいシミの場合)
  • シミ抜き料金は「大きさ」「古さ」「濃さ」「数」で変動する
  • シミ抜き料金だけで店を選ぶのはNG

【シミ抜き店舗の選び方のポイント】

  1. シミ抜き単体で依頼ができること
  2. 古いシミに対処ができること
  3. 染色補正もOKであること
  4. 無料見積もりをやってくれること

「シミ抜き料金相場より安い!」というだけでイージーにお店を選ばず、ぜひ上のポイントをチェックしてみてくださいね。

なお、当店「着物ふじぜん」ではシミ抜き単体のご依頼もOK!他店で断られた古いシミも喜んで承ります。リーズナブルな価格で、着物をキレイに蘇らせることができますよ。シミ抜きのお店選びに迷ってしまったときには、ぜひ候補に加えていただけると嬉しいです。

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吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし


着物の染み抜きやお直しをする場合、加工内容や料金は検討がつかないと思います。お近くに専門店があれば安心ですがシミや汚れを見てもらったが、無理だと言われ諦めてしまう方が多いのです。遠方にお住まいの方はお電話又はメールでご相談いただければ、無料にてアドバイスさせていただきます。クリーニングやお直し以外でも着物の事ならお気軽にご連絡ください。 初めてご訪問の方へ

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