着物にウイスキーやブランデーのシミをつけたらどうしたら良いのでしょうか?

目次
着物についたウイスキーやブランデーのシミは自分で落とせますか?
着物についたウイスキーやブランデーのシミは、「水洗いができる着物」で「付着して48時間程度以内のシミ」であり、なおかつシミの範囲が小さい場合には、ご家庭でシミ抜きなどの対処ができる可能性があります。水洗いできない着物、時間が経ったシミ・古いシミ、広範囲のシミについてはご家庭で自分での処理はできません。3つのポイントを確認してみましょう。
水洗いできる着物か確認を
着物についたウイスキーやブランデーの汚れは、アルコールが含まれるものの、基本は水分をメインとする水溶性の汚れです。水に溶けやすい性質の汚れなので「しっかり濡らして水で溶かす」という工程があれば、ついて間もないシミであれば比較的落とせる汚れと言えます。(※製品によっては香料・色素が強く汚れが落ちにくいシミもあります)ただし反対にいうと「水で濡らさないと家ではどうにもならないシミ」ということなんです。あなたの着物は水洗いに対応していますか?
【水洗いができる着物の例】
- ウォッシャブルウールの着物
- 東レ シルック(R)洗える着物シリーズ
- 一般的なポリエステル着物(特殊加工がない製品)など
【水洗いや水を使ったシミ抜きができない着物】
- 正絹(シルク100%)の着物
- シルク混紡の着物
- 一般的なウール着物 など
例えば振袖・留袖といったフォーマル向けの着物は、正絹というシルク100%で作られていることが多いです。この生地は水濡れに大変弱く、少々濡れただけでもその部分が縮みます。そのためご家庭では水を使ったシミ抜きや水洗いなどが一切できません。フォーマル着物のお酒のシミはプロにシミ抜きをお任せするのが基本です。
時間が経ったシミは自己処理NG
着物についたウイスキーやブランデーのシミは、時間が経つごとに少しずつ、アルコール成分や香料などが繊維に定着して「落ちにくいシミ」になっていきます。着物のウイスキー・ブランデーのシミを自分でシミ抜きするのであれば、できれば付いて24時間以内に対処するのがベストで、最大でも48時間(2日間)程度が限度だと考えたほうが良いです。
時間が経って乾いてしまったシミを取るには、強力な洗剤や漂白剤などの使用が必要になります。これをデリケートな着物で専門知識無しでやってしまうと、もしも汚れが取れても、今度は着物の方が生地が硬くなったり、色が部分的におかしくなったりといったトラブルが起きる可能性がとても高いです。無理に自分で処理せず、専門店に相談しましょう。
びっしょり濡れたシミはプロに任せて
着物についたウイスキーやブランデーのシミ、その範囲はどれくらいですか?ちょっとしたハネや1センチ程度のシミであれば、ご家庭での対処でもキチンと落とせる可能性は高いです。でも手のひらより大きいシミ、グラス全部をこぼしたようなシミだと、自分でシミ抜きをしても、汚れが繊維にムラのように残ってしまうことが多いです。
汚れが残ると、後から「変色シミ」として浮き上がってくる可能性が高くなります。こうなると専門店でも処理がちょっと大変になります。しっかり濡れてしまったシミや、縫い糸まで濡れたようなシミの場合には、早い段階でプロに任せたほうが良いですよ。
着物のウイスキー・ブランデーのシミの落とし方は?
着物についたウイスキーやブランデーのシミの落とし方は、水洗いをベースに、できるだけ繊維への負担が少ない中性洗剤を用いた方法が基本です。ポリエステル製品などの特に丈夫な製品については、キッチン用食器洗剤を使う方法もあります。
※準備に入る前に、必ず上の「1」の項目を確認して、着物が水洗いできる製品か、シミはご家庭で落ちる状態のものかをご確認ください。
※自己処理のシミ抜きによって着物が色落ち・変色・変質する恐れがあります。作業は自己責任でお願いします。
ウイスキー・ブランデーのシミ落としで用意するもの
- 中性タイプの洗濯用洗剤
- 仕上げ用柔軟剤
- 着物が入るサイズの洗濯用ネット
- バスタオル数枚
- 着物専用ハンガー(物干しでも代用OK)
- アイロン・アイロン台・霧吹き・当て布などの一式(木綿など洗えるが縮みやすい製品の場合、スチームアイロンはNG。アイロン台の上で、濡れた状態のまま、ひっぱって縮みを伸ばせるアイロン台と昔ながらのアイロンが必要です)
- ポリエステル製品などの場合にはキッチン用洗剤(藍などの天然染色製品、デリケートな製品、木綿製品などの縮みやすい製品には使わないこと。部分的に生地が縮んで硬くなったり、色落ちする恐れがあります)
事前の準備
- 着物の型崩れを防ぐため、衿元をぐし縫いで縫いとめておきます。安全ピンで固定する方法でもOK。
- 目立たない部分、または共布を濡らしてから洗剤を少量付けて、変色テストを行います。少しでも色落ち・色にじみ・変色が起きた場合には作業を中止します。キッチン用洗剤は
ウイスキー・ブランデーのシミ落としのプロセス
- シミがある部分が表にくるようにして着物を畳んでおきます。
- シミ部分を水で濡らします。
- 中性洗剤を少量だけシミ部分につけて、指で馴染ませるようにして汚れを落としていきます。強く擦ったり、揉んだりしないことが大切です。(特にデリケートな製品の場合には洗剤をあらかじめ水で薄めて使用してください)
- 汚れが落ちたら、輪じみ防止のための仕上げ洗いに移ります。バスタブやシンクなどに水を溜めて、中性洗剤を適量溶かしてください。(使用量は製品裏面の使用説明書を参考にしましょう)
- 着物をネットに入れて、ネットごと4)で作った洗剤液に浸けます。両手で優しく押すようにして、押し洗いします。
- 水を取り替えて2回、濯ぎも押し洗いで行います。最後に柔軟剤を行き渡らせます。
- ネットごと洗濯機に入れて、脱水機能で30秒だけ脱水させます。(長い脱水はNG)脱水で型崩れやシワになりやすいので、気になる場合には脱水を省いて、次の工程に移っても良いです。
- バスタオルで挟むようにして軽くポンポン叩き、水分を取ります。この時も強く擦ったり叩いたりはNG。
- 着物をハンガーか物干しにかけて形をよく整え、直射日光の当たらない風通しの良い場所で乾燥させます。
- アイロンを使ってシワをとり、形を整えます。
※汚れが落ちないからと、シミ部分を強く擦らない、何度もシミ抜きを繰り返さないことを注意しましょう。摩擦のダメージで生地が白っぽくスレたり毛羽立つと、プロでも元に戻せなくなってしまうこともあります。
※部分洗い後には必ず全体を洗って仕上げましょう。部分洗いのみだと、輪じみが残りやすいです。
※木綿などの濡れによる縮みが起こる製品の場合は、濡れた状態(バスタオル脱水後)でまずアイロンを強くかけて伸ばし、それから干して乾燥させます。乾燥してしまってからのアイロンでは、縮んだ状態が元に戻らなくなります。
着物のウイスキー・ブランデーのシミはクリーニングで落ちますか?
着物のウイスキー・ブランデーのシミは、いわゆる丸洗いや京洗いと呼ばれる全体的なドライクリーニングでは落ちません。着物専門の汚れ落としの職人さんが手作業で行う「シミ抜き」が必要です。着物の「シミ抜き」ができるお店に相談をしましょう。
シミが古くて変色している場合だと、より専門的な対処が必要になります。また、シミが広範囲な場合だと、着物を一度解いて洗ったほうが良いことも。様々な対処法をよく知っている、着物に強いクリーニング店を選ぶことが大切です。
おわりに
正絹(シルク)などの高級着物をよく着るけれど、ウイスキーやブランデーなどのシミが心配…そんな時には、事前に「ガード加工(パールトーン加工」をする手もあります。ガード加工はいわゆる撥水加工の一種で、ウイスキーやブランデーなどの水溶性の汚れを弾きやすくしてくれるのです。
当店『ふじぜん』は、着物専門のクリーニング店として、着物についたウイスキーやブランデーなどのお酒のシミ抜きはもちろん、古い変色シミ取り(黄変抜き)や部分的な染め替えなど、幅広いシミ対処に対応しています。もちろん、ガード加工もOKです。着物のウイスキーやブランデーのシミにお困りの時には、ぜひお気軽にご相談ください。