染み抜き・ハウツー

【プロ解説】着物の水シミの落とし方や対処法の正解は?

今回は着物の水シミについて解説します。水シミとは、その名の通り、水滴や雨などによってできるシミのようなものです。水シミは大きさも様々で、ポタリと落ちた水滴の1センチ程度のものもあれば、袖や肩まわり全体、裾まわり全体など、広範囲に濡れて起こる水シミもあります。

吉原ひとし
吉原ひとし
こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。ここでは着物の「水シミ」の落とし方や対処法について寄せられるよくある疑問・質問を、プロが詳しく解説していきます。

自分で行える着物の水シミの落とし方はありませんか?

まず結論から申し上げます。残念ですが、着物の水シミはご家庭では(自分では)対処ができません。自己処理は無理です。これは決して意地悪であるとか、着物クリーニング屋を儲けようとして言っているわけではありません。「水シミ」はシミになる理由や成り立ちが、他のシミとはまったく違うのです。

一般的な「シミ」は、何らかの汚れがついてできるものですよね?例えばジュースなら、果汁の色素成分や砂糖などが布にくっついて、シミになるわけです。ですから(水洗いできる着物ならば)すぐにお洗濯をすれば色素成分などが流れ落ちて、自分で染み抜き対処ができた!ということになります。

ところが水シミは、「水の汚れ」でシミになっているわけではありません。原因は汚れではないのです。パッと見がシミのように見えるだけで、成り立ちがまったく違います。そのため、ご家庭では対処ができず、プロにお任せするしかない・・・ということになるのです。では水シミはなぜ起こるのか?その理由は次の項目で解説します。

なぜ着物の水シミができるの?原因は?

着物の水シミができる理由には大きく分けて二つあります。「絹などの繊維の縮み」または「染料等の流出」です。それぞれについて詳しく解説していきます。

濡れた布が縮んで水シミに(ウォータースポット)

着物の素材の中には、水濡れするととても縮みやすいものがあります。フォーマル着物に使われることの多い「正絹(シルク100%の布のこと)」は、濡れると縮みやすい素材の代表です。

濡れると縮む布に水滴を垂らすと、その部分だけが軽く縮んでしまいます。乾いた後に、そこだけがごく僅かに凸凹になります。そして光の屈折率が部分的に変わって、その部分だけまるでシミのように色が変わったように見えるのです。

このような水滴による水シミのことは「ウォータースポット」とも呼ばれます。縮んだことによって起こる水シミ(ウォータースポット)は、ほんの少しの水滴、雨粒などによっても起こります。

糊や染料が流れ出して水シミに

もう一つの水シミができる理由は「糊や染料の流出」です。着物がビッショリと濡れてしまった場合、着物の色を染めていた「染料」や、着物の布をパリッとさせていた「糊(のり)」が浮き上がって流れ出し、輪ジミのように偏った状態になってしまうことがあります。このような「糊や染料の流れ出し」は、新品に近い新しい着物であったり、自然素材を使った染料(藍や草木染めなど)でもよく起こります。

糊や染料が流れ出して起こるタイプの水シミは、どちらかというとビッショリと濡れた場合に起こりやすいです。

水シミはもう一度濡らす対処法で落とせませんか?

水シミを自己処理で濡らして対処する方法は、おすすめしません。高確率で水シミの範囲がもっと広がり、今よりひどい状態になってしまうからです。

霧吹きでさらに水シミが増える

ネット上では水シミを目立たなくする対処法として「霧吹きで水をかけてスチーマーで蒸気を当てる」といった案内をしているものもあります。しかしご家庭でこの方法を行った場合、水シミが目立たなくなる前に、霧吹きで水をかけたその他の部分が縮みによる水シミを起こし、さらに目立つシミになる可能性の方が高いです。

染料の流出がひどくなるケースも

さらに最悪なのが、水シミの原因が糊または染料の流出だった場合です。濡らせば濡らすほど流出していくこともあり、シミによる柄のにじみや輪ジミの被害程度が拡大されていきます。

専門店でも直せなくなることがある

失敗の一例として、水シミを何とかしようと霧吹きで濡らし続けた結果、袖全体が激しいまだら模様の水シミになってから「どうにかしてください」とご相談されるようなケースもあります。水濡れによる縮みや滲みがあまりにも酷い状態になってしまうと、後から専門店にご相談いただいても、もはや手の施しようが無い・・・といったこともあるのです。

着物の水シミ、クリーニング屋なら対処できますか?

一般的な洋服のクリーニング店だと、着物の水濡れによる水シミ(ウォータースポット)や染料流出による滲みなどには「対処ができない」とお断りされてしまう可能性も高いです。着物を専門に扱うクリーニング店で、なおかつ「洗い張り」や「染色補正」など、幅広い対処法ができる店を選ぶことをおすすめします。

「丸洗い」では水シミは直らない

一般的な着物クリーニングである丸洗い(京洗い・ドライクリーニング)では、水シミには対処ができません。水シミ対処には、着物を専門に扱うシミ抜きの職人さんが居ることが必須です。

範囲が広いと「洗い張り」

水シミの範囲が非常に広い場合だと「洗い張り(あらいはり)」と言って、着物を一度ほどいて張り直す方法が必要になることもあります。

流出の場合は「染色補正」

水シミの原因が染料や糊の流出であった場合には、部分的な染め直しや柄の描き足し(染色補正)といった方法でリカバーをしていくことになります。

着物の水シミを予防する対処法はありませんか?

水シミの予防的な対処法として、撥水加工(ガード加工、パールトーン加工)をしておくことをおすすめします。特に飲食業などのお仕事で着物を使う方や、お稽古などで水シミが起きるリスクが高い場合には、撥水加工をしておく人が多いですよ。

撥水加工とは?

水を弾きやすくする特殊な液を噴霧して繊維に定着させる加工法のことです。「防水」とは違って完全に水を入れないわけでは無いのですが、瞬間的に水が染み込みにくくなるため、「濡れたらすぐに拭く」という対処をすることで水シミの予防ができます。水シミ・雨シミの他、飲み物のシミなどが付きやすい人にもおすすめです。

市販の撥水スプレーではダメですか?

市販スプレー品ですと、まず着物の繊維や染料に合った配合であるかが不明であるため、危険です。(市販品では絹や特殊品には使えないものが多々あります)スプレーした部分が万一にでもシミになってしまったりすると、困りますよね。また市販品スプレーですと噴霧のムラが起きやすいです。スプレー品でもしも失敗すると、専門店でもお直しができません。スプレー噴霧で定着した成分を落とすのはプロでも困難です。安易に市販品を使わないことをおすすめします。

撥水加工は着物のクリーニング・加工専門店であればできますし、品質も安定しています。ぜひ専門店にお任せください。

おわりに

着物の水シミは、コップの裏から落ちた水滴、傘から垂れた雨粒と言った「ちょっとした濡れ」でも起こることがあります。特によく着る着物、お気に入りの着物などは事前に撥水加工をしておくと安心ですね。また、最近着物を始めたという方でしたら、水シミ対策のためにも雨グッズ(和装用の雨コートなど)を準備されることもお勧めします。

当店『着物ふじぜん』は、着物のクリーニング・加工の専門店として、着物の水シミ・雨シミについてもご相談を受け付けています。「だいぶ昔に水シミを作ってしまった」「染料が流れ出して滲んでいるかも」といったご相談もできる限りご対応しますので、どうぞお気軽にご相談くださいね。

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吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし


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