お宮参り等の場では、着物で赤ちゃんとイベントに参加することもありますね。このような時、気になるのが着物時の母乳の問題です。ここでは着物を着た時の母乳対策について、実際のところを着物のプロが詳しく解説していきます。授乳中だけど着物をどうしよう?とお困りになった時の参考にしてみてくださいね。
目次
1.着物を着ている間に授乳できますか?
フォーマルとして着物を着る場合、着用中の授乳は正直言って「できない」と考えた方が良いです。これは意地悪で言っているわけではありません。着物を着た状態での授乳は、大きく身八つ口や襟元を動かすため、着付けが崩れてしまい、撮影や式典に不向きな状態になってしまう可能性が高いのです。
普段着着物とフォーマルでは「着付け」が違います
「昔は着物を着て赤ちゃんを育てていたのだから着物でも授乳できる」と仰る方も居ますし、ネット上でもそのような意見も見られます。しかしこれは正直に言いますと「普段着の着物」についての考え方です。
日本では元々、普段着の着物は現在よりもかなりルーズに着ていました。ですから身八つ口から手を入れたり、襟元を開けることで胸を出し、赤ちゃんに授乳をすることも、かなりカンタンだったのです。現代でも、普段着着物をザックリ家で着たい~という方でしたら、このような方法で着物で赤ちゃんに授乳することもできるでしょう。
でも現代の「着物で赤ちゃんと過ごす」という場面は「お宮参り」や「上の子の七五三」「結婚式」といったフォーマルな場が多いですよね。着る着物も訪問着などの礼装用のものです。そしてフォーマルな場では襟元の形をキチンと整え、美しく着物を着ることが求められます。着物で授乳をしたら、確実に激しい着崩れが起きます。よほど着物に慣れていて、ご自分で着付け直しが完璧にできます!という人でも無い限り、「着物で授乳」はおすすめできません。
早めのミルクまたは搾乳の習慣をおすすめ
お宮参り・結婚式・七五三といった式典やフォーマルの場で授乳中に着物を着るご予定がある場合、早めのミルク習慣、または搾乳した母乳に赤ちゃんに慣れてもらうことをおすすめします。
2.着物を着ている間、母乳パッドで間に合いますか?
着物の着用時間によります。1~2時間程度であれば大きめの母乳パッドで大丈夫だったという方も多いです。ただ、個人差もありますし、突発的なアクシデント等で思ったより着用時間が長引いてしまうこともあります。母乳パッド一枚に頼らず、できる限りの対策をすることをおすすめします。
和装ブラを使う
和装用ブラの方が締め付けが起きにくいため、大きめの母乳パッドや次に紹介するおむつなどでの対策がしやすいです。また外に汚れがしみにくい素材を使った、授乳中用の和装ブラもあります。
おむつを使用するのは良い手です
授乳中のお母達から人気のある工夫としては、新生児用のおむつを切って、母乳パッドかわりに使う方法があります。母乳パッドよりも吸水率が良く多量の水分を吸い込めるので、着物を汚しにくいです。
着付けの際に着付け師に相談を
着付けの際に着付け師に相談をして、少し緩めに着付けてもらい、母乳パッドを交換しやすくするという方法もあります。ただしこの方法だと着付けが崩れやすいので、着物に多少慣れている向け(自分である程度は着付けが直せる方)の方法と言えます。
3.着物を母乳で汚さないために対策はありますか?
着物を母乳で汚さないための対策としては、「着物を着ている時間をできるだけ短くする」という工夫をする方が多いです。
ヘアセットしてから授乳または搾乳
着物の着付けでは、先にヘアセットをしてから着付けを行います。ヘアセットをしてから余裕を持って授乳(または搾乳)を行うことができると、次の授乳までの時間を少しでも延長することができます。授乳コーナー等がある美容院やスタジオを選ぶと安心です。
現場着付けのスタジオや式場を選ぶ
ご自宅や美容院等で着物を着付けてから撮影または式典会場へ移動すると、それだけ時間がかかってしまいます。できるだけ着物の着用時間を短縮するために、現地でヘアセットや着付けができる撮影スタジオ、式場等を選ぶことをおすすめします。
着替えの洋服を持っていく
現場到着後、なるべく早くに着物での撮影を行って、帰りは洋服に着替えるという方も多いです。着物をほどくにはある程度の広い場所が必要になるので、(トイレ等での着替えはできません)着替え場所があるかどうかをよく確認しておきましょう。また着替えの洋服や靴以外に、脱いだ着物を汚さないための敷物等も持つ必要がありますので、荷物は誰が持つのか、会場クロークなどでの荷物預かりサービスの事前確認をしっかり行っておくと安心です。
4.着物に母乳のシミを付けましたが自宅でシミ抜きできる?
着物についた母乳汚れをご家庭で自己処理できるかどうかは、着物の素材(種類)によります。手洗い(水洗い)に対応した着物であれば、早めの水洗いを行うことでキレイにできることもありますが、そうでない場合には自己処理はできません。
正絹着物はシミ抜き不可
母乳は油脂と水分の両方が混じった物質なので、シミ抜きの際には水洗いの工程が必要になります。
しかし訪問着などのフォーマル着物の場合、その多くは正絹というシルク100%の素材です。ご家庭で水に濡らすと、ほぼ確実に濡らした部分が縮んでしまいます。(ウォッシャブル加工がされていれば別ですが、そのような着物は購入時に「洗える着物」と銘打っています。書いていない礼装用着物はほぼ水に弱いです)
正絹でできた着物、また素材(選択対応)のよくわからない着物に母乳の汚れを付けたら、自己処理をせず、早めに専門店に相談しましょう。
5.着物に付いた母乳シミは丸洗いクリーニングで落ちる?
全体を機械洗浄する「着物丸洗いクリーニング」だけでは着物の母乳汚れが落ちないで残ってしまいます。着物に付いた母乳の汚れを落とすには、職人さんの手作業による「シミ抜き」が必要です。「着物のシミ抜き」ができるお店に相談しましょう。
母乳汚れは混合性なので手強い
上でも少し解説しましたが、母乳は水分をベースにして、油脂成分も含んでいます。水と油の両方の性質を持った混合性の汚れです。一般的な着物クリーニングである「丸洗いクリーニング」では、石油系の溶剤を使っています。この溶剤は油汚れを落とすのは比較的得意なのですが、母乳のような水分を含む汚れを取るのはニガテなんです。
そのため、母乳汚れが付いた着物を丸洗いクリーニングに出したのに、後から変色してしまった…といったトラブルがよく起こります。汚れがキチンと落ちきらずに残ったために、その部分が酸化して、時間をかけてガンコな変色シミになってしまったのです。
着物専門の店に相談するのがオススメ
着物の母乳シミといった水分系のシミ抜きは、一般的なクリーニングのお店(洋服クリーニングがメインで、着物も受け付けるといったお店)では断られてしまうこともあります。汚れ取りを行うのが難しいためです。
「着物に母乳のシミ汚れを作ってしまった」という時には、着物を専門に扱うクリーニングのお店で、なおかつ丸洗いだけでなく、職人がシミ抜きも行うお店を選ぶことをおすすめします。
おわりに
今回は着物の母乳対策について解説しましたが、お出かけのお役に立ちそうでしょうか?当店『着物ふじぜん』は着物クリーニングの専門店なので、もちろん着物についた母乳シミのシミ抜きも受け付けています。
宅配便での全国対応も行っているので、お近くに着物クリーニング店が無かったり、近所の店だと母乳シミのシミ抜きを断られてしまった時には、ぜひお気軽にご相談くださいね。