赤ちゃんの無事の誕生を感謝し、これからの健やかな成長をお祈りする行事である「お宮参り」。赤ちゃんが生まれて初めての正式な行事ですから、お宮参りをやってみて楽しかったけれど疲れた…という人も多いのではないでしょうか。でもお宮参りをした後には、着物のお手入れやキチンとした保管を忘れてはいけませんよ!
赤ちゃんの初着(祝着)やご両親・祖父母の皆さまが着たフォーマル着物は、とてもデリケート。正しいお手入れや保管をしないと「カビ」「変色」「虫食い」といったトラブルが起きてしまいます。せっかくの大切な着物が、次に使えなくなってしまう…そんなこともあるのです。
大切な着物を守るために、着物のお手入れ方法や保管方法をキチンと知っておきましょう。

目次
お宮参り着物の着用後のお手入れ
お宮参りが終わって家に帰ったら、すぐに着物のお手入れを。早め早めの対処が大切です。
1.お手入れの基本は「陰干し」
着物のお手入れの基本は「陰干し(かげぼし)」です。陰干しとは、「陰(かげ)」という名前のとおり、直射日光に当たらないところで着物を干すことを言います。なぜお宮参りの着物を着た後には陰干しが必要なのでしょう?
それは着物を着ている間、繊維の中に溜め込まれてしまった水分(汗や空気中の湿気)を飛ばすためです。着物を一回着ると、繊維の中にはたくさんの湿気が入り込みます。干さずにそのまま保管すると、その湿気が「カビ」「虫食い」等の原因になってしまうんですよ。
【陰干しの手順】
- 屋外(庭やベランダ)または室内で、直接は日が当たらず、風通しの良い場所を選びます。
- 着物用ハンガーまたは物干しに着物をかけて、形を整えます。
- 1日~2日程度、干します。屋外の場合は、夜間は室内に取り込んでください。
- 室内干しの場合は、エアコンで室内の湿気を除去し、さらに扇風機等で風を当てるのが効果的です。
陰干しをしている間には、着物の状態をすみずみまでチェック。襟元(えりもと)や胸元、袖口(ソデの裏側も)、裾(すそ)等に汚れが付いていないか、入念に確認しましょう。
2.汗をかいたら「汗抜き」
お宮参りが夏だったり、お参り後のお祝いの席で暖房がきいていたり……そんな理由で「汗をかいたかも!」という場合には、「汗抜き」のお手入れも付け加えると安心です。
汗の成分が繊維に残ると、2~3年で着物が黄ばんだり、変色することに。一度変色すると元に戻せないこともありますから、予防が肝心です。
【汗抜き(汗取り)の手順】
- やわらかいタオルをぬるま湯にひたします。
- ギュッと固くタオルをしぼります。ビショビショはNG!
- 着物の裏側をひろげて、汗をかいた部分をタオルで優しく叩きます。
- 乾いたタオルでさらに叩いて、水分を取り除いていきます。
- 上で解説した「陰干し」を、通常より長く、3~4日程度行います。
なお「汗取り」は、プロに任せるとよりしっかりとした汗取りクリーニングをして貰えます。真夏で汗びっしょりだった……といった場合には、専門店に汗抜きを依頼しましょう。
3.シミを見つけたら「シミ抜き」
陰干しや汗抜きの間に、お宮参りの着物に汚れを見つけた!そんな時には、できるだけ早くシミ抜き処理を行うことが大切です。
シミが油溶性の場合
シミの状態によっては、ご家庭で対処ができることがあります。お手入れ方法は以下のページで詳しくご案内しているので、参考にしてみましょう。
シミが混合性・水溶性・不溶性または原因不明の場合
残念ながら、ご家庭ではシミ抜き等の対処ができません。一日でも早く専門店に「シミ抜き」を依頼しましょう。
【母乳やヨダレシミは家でシミ抜きできません】
お宮参りの初着(祝着)やご両親の着物に多いシミとしては「母乳のシミ」「ミルクのシミ」「ヨダレのシミ」が挙げられます。これらはいずれも「混合性・水溶性のシミ」であり、残念ながらご家庭ではシミ抜きができません。
お宮参りで使うフォーマル着物はほとんどが正絹(シルク)でできており、水分に非常に弱い仕様になっています。ところが母乳やヨダレのシミを取るには、ご家庭の場合だと「水」が必要。シミを家で取ろうとすると、着物の生地が部分的に縮む「水シミ」ができてしまいます。無理にお手入れせず、早めにプロに任せましょう。
4.長く保管するなら「丸洗い」
お宮参りの初着や祝着、ご家族の着物を次に着る予定がまったく無い…こんな時には、保管期間が2~3年以上になることも考えられます。
このような場合には「丸洗いクリーニング」で着物全体のチリ・ホコリや軽い皮脂汚れ等を取り除いておくと安心。保管期間中のリスクを減らし、次に着用するときにも気持ちよく着ることができます。
お宮参り着物の保管方法
お宮参りの初着や祝着、ご家族の着物をお手入れしたら、次はキチンと保管をしましょう。
1.着物は「平らに保管」が必須
着物は洋服とは違い「かけて保管」ができません。長期間ハンガーなどにかけっぱなしにしていると、糸が傷んだり、形が崩れる原因となります。
着物は必ず「本畳み」をして、平らに保管するのが鉄則です。タンスの引き出しにいれるのが理想的ですが、無い場合には「平にしまえる保管場所」をまず作っておきましょう。
2.タトウ紙を取り替えよう
お宮参りの初着や祝着は、祖父母から親へ、そしてお孫さんへ…と何代も続いて着ているというケースもよく耳にします。これは素晴らしいことなのですが、着物を包む「タトウ紙」が古いままなのは問題です。
着物を包むタトウ紙は、空気中の湿気を吸い取り、着物に余分な水分が入るのを防ぐ役割も果たしています。ところがタトウ紙が古くなると吸湿率が下がり、防湿効果が弱ってしまうのです。
5年以上は同じタトウ紙を使っている…という場合には、ぜひタトウ紙の交換を。当店『着物ふじぜん』でも販売していますので、お気軽にご相談くださいね。
3.タンスがなければ保存袋を
着物を保管するのにもっとも良いのは和ダンス(木製桐たんす)です。その次としては桐等の木製の衣装箱が挙げられます。
とは言っても、和ダンスや木製衣装箱をお持ちの方は現代だと少ないですよね。そんな時にはプラスチックの衣装箱でもOK。ただし木製のタンスに比べると換気ができない、湿気やすいという欠点があるので、次の2点には十分に気を配ってください。
- 2ヶ月に1回のペースでフタを開けて換気する
- 年に3回は陰干しする
- 除湿剤はこまめに取り替える
また衣装箱も無い…という場合には、着物専用の保存袋を使うのも良い手です。着物用の保存袋は、最近ではAmazon・楽天等で気軽に買うこともできるようになりました。
4.防虫剤と湿気取りを忘れずに
正絹(シルク)の着物は、ヒメマルカツオブシムシ等の虫の大好物です!きちんと予防しておかないと、次に出したら着物が虫食いだらけ…なんてことも考えられます。また湿気取り(吸湿剤)もキチンと入れておきましょう。
防虫効果も高く、匂いもつきにくいものとしては「エンペントリン(ピレスロイド系)」の使用がおすすめ。なお製品に「着物に使えること」や「金箔等に使えること」が書いてあるかどうか、必ず確認しましょう。中には金箔を変色させてしまう防虫剤もあるので、十分に注意してくださいね。
5.プロに着物管理をおまかせする手も
最近では着用後に着物をクリーニングに出して、そのままプロに着物の保管もお願いできる「お預かりサービス」も人気となっています。
- 着物を保管する場所が無い
- こまめに換気や陰干しするのが難しい
- きちんと保管中のお手入れできるか不安
こんな時には、プロによるお預かりサービスを検討してみても良いでしょう。当店『着物ふじぜん』でも、着物お預かりサービスを受付中です。お宮参り着物の保管にお困りのことがあったら、お気軽にご相談くださいね。
おわりに
お宮参り着物の着用後のお手入れや保管について解説しましたが、お役に立ちましたか?お宮参りの赤ちゃんの初着は、百日祝い(お食い初め)で使ったり、お正月で着たり。また七五三の三歳のときのお祝いにも使うことができます。
またご両親やご家族が着るフォーマル着物は、入園式や卒業式等のお子様とのイベントでも使えるものです。着物をきちんとお手入れ&保管して、着物と長く付き合って見ましょう!