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着物に輪ジミを見つけた時の対処法3ステップ

ソースのシミが輪染みに

「輪ジミ(輪染み)」とはその名のとおり、汚れや染料等が輪(リング状)になっているシミのこと。リングがとても大きい場合だと、汚れが線(ライン)のようになっていることもあります。

洋服でもできることがあるシミですが、特に着物や浴衣では、この「輪ジミ」のトラブルは起こりがち。着物に輪ジミを見つけたものの、どうしたら良いかわからない--そんな人も多いのではないでしょうか?

大切な着物をダメにしてしまわないように、正しい輪ジミ対策を知っておきましょう。着物に輪ジミができた時の対処法を、3つのステップに分けて詳しく解説していきます。

着物の輪ジミの原因を突き止めましょう

雨で着物が濡れた時
「着物の輪ジミ」と一口に言っても、実はその原因は様々です。着物を傷めずにキレイにするには、原因に合わせた対策を施す必要があります。どんな原因で輪ジミができたかの究明をしましょう。代表的な着物の輪ジミの原因には、以下のようなものがあります。

水濡れによる「縮み」が原因(ウォータースポット)

繊維は水に濡れると、その部分だけが縮んでしまうことがあります。雨粒やグラスの底から垂れたような少量の水滴で生地濡れた場合、その部分だけがキュッと縮んで反射率が変わるため、色が変わったように見える(シミができたように見える)こともあるのです。このような現象は「ウォータースポット」と呼ばれます。

ウォータースポットは特に下の3つの生地で起こりやすいです。

・正絹(絹、シルク)
・レーヨン
・ポリエステル

また以下に思い当たることが多い場合、原因はウォータースポットである可能性が考えられます。

・雨の日に着物を着用した
・傘の水滴がハネた
・濡れた着物をアイロンやドライヤーで乾かした
・グラスの下の水滴を拭かなかった
・着用中に食事はしていない(食べ零しではない)
・スチームアイロンをかけた
・霧吹きで水をかけた

水濡れによる「染料の流れ」が原因

同じ「水濡れ」でも、生地の縮みではなく「生地を染めている染料」が流れ出しているケースもあります。伝統的な製法で作られた着物の染料は、現代の洋服に比べて定着率が強くありません。着物がビッショリと濡れたことで繊維から染料が取れて偏り、輪の状態になって乾くと「着物の輪ジミ」ができてしまうのです。

以下のような点に思い当たることが多い場合、染料の流れ出しによって着物の輪ジミができている可能性も考えられます。

・雨や雪で着物をかなり濡らした
・濡らした着物をそのまま乾かした
・水や飲み物をこぼした
・着物・浴衣は天然染料(藍染や草木染め)で染められている
・輪ジミができた箇所の柄がにじんでいる
・輪ジミができた箇所の地色がグラデーションのようになっている

油溶性シミの汚れ残りが原因

着物の輪ジミは上記のような繊維の変質・染料の変質だけでなく、一般的な「シミ・汚れ」でできていることもあります。特に多いのは、油溶性のシミができ、シミ抜き等で対策をしたものの汚れが残ってしまっている場合です。

油溶性の汚れは汚れが溶けた時に外側に向かって広がりやすく、シミの中心部はキレイになっても外側の汚れが「輪」のように残ることがあります。

油溶性の汚れの一例

・マヨネーズ等の食べこぼし
・ステーキソース等のハネ
・口紅・ファンデーション等の化粧品汚れ
・油性インクの汚れ 等

また着物のシミ抜きをしたものの、油分を溶解させるための溶剤(ベンジン等)を使っていない場合、油汚れが繊維に残って輪ジミとなることもあるのです。食べこぼし等のシミをケアしたつもりだったけれど輪ジミになっている…という場合、油溶性のシミの汚れ残りの可能性も高くなります。

水溶性シミの汚れ残りが原因

水溶性のシミは油溶性に比べると、比較的汚れ残りや輪ジミが起きにくいもの。しかし色素が非常に強いシミの場合、「拭いたら取れた」と思っていたシミの輪郭の汚れが取り切れておらず、輪ジミとなってしまっていることもあります。

水溶性の汚れの一例

・醤油のハネ
・赤ワイン等の酒類のハネやシミ
・コーヒー・紅茶のハネやシミ

ベンジンのシミ抜きの失敗が原因

最近増えていると言われているのが、ご自宅での着物のシミ抜きに使う「ベンジン」の取扱の失敗による着物の輪ジミです。ベンジンでしみ抜きをする場合、最後に濡れた箇所と乾いた箇所をていねいにボカす必要があります。

しかしボカしが甘かったり、ベンジンが早く乾いて作業が間に合わなかった場合、ベンジンで濡れた箇所だけが「輪ジミ」となってしまうことがあるのです。またベンジンでの汚れ落としが十分ではなく、汚れが残って「輪ジミ」となっていることもあります。

・シミ抜きにベンジンを使った
・ベンジンの工程でボカシをしていない
・ベンジンを使うのが初めて/慣れていない
・ベンジン使用前に裏地等でテストしていない

上記に思い当たる点が多い場合、輪ジミの原因はベンジン使用による可能性が高いと考えられます。

自宅での着物の輪ジミ対策を試してみましょう

原因の特定ができたら、早速輪ジミの対策に入ります。なお輪ジミのケースや素材・染色等によってはご自宅では輪ジミの対策ができず、専門店での対処が必要な場合もあります。注意点までしっかりと読んだ上で対策を行いましょう。

水シミ(ウォータースポット)による輪ジミの対策

水滴(ウォータースポット)による輪ジミは、全体の収縮率を均等にすることで目だたくなります。

【着物の輪ジミ対策の手順】
1)素材をチェックし、水洗い可能な製品であることを確認します。
2)着物を畳み、市販の大型洗濯ネットに入れます。
3)浴槽等に水を張って、着物全体を水に漬けます。
4)十分に水に浸したら、着物を軽くさばいて水分を飛ばします。洗濯機使用可能な着物の場合は、洗濯機で1分程度脱水をしても大丈夫です。
5)着物ハンガーにかけて、よく形を整え、自然乾燥させます。
6)アイロンができる生地の場合には、ドライで裏側からアイロンをかけて仕上げます。

※正絹(シルク)、一般的なウールの素材は水洗いで大幅に繊維が収縮するため、ご自宅では水洗いができません。
※金箔・銀箔・刺繍・レースなどの特殊加工があるものは、ポリエステル素材でも水に濡らせません。
※アイロンは必ずドライで行い、あて布をあてましょう。スチームアイロンで水滴が飛ぶと再度水シミができる原因になります。

油溶性シミの汚れ残りによる輪ジミの対策

洗える着物を中性洗剤等でシミ抜きしたけれど、輪ジミが残っている--このような場合、化粧品や食品の油分が落ちきれずに輪ジミができていることも。油分を溶解する「溶剤(ベンジン)」で汚れを分解し、残った汚れを取ります。

【着物の輪ジミ対策の手順】
1)着物のシミがある部分の裏側に、汚れても良いタオルをあてておきます。
2)ガーゼにベンジンを染み込ませて、輪ジミの部分をトントンと叩いていきます。
3)ガーゼの位置を常に動かしながら、キレイな面が着物の接するようにします。
4)汚れが取れたら、ガーゼを取り替えてもう一度ベンジンを染み込ませます。
5)輪ジミができた周辺部まで軽く叩いて、輪郭をボカシていきます。
6)水洗い可能な製品の場合は、この後に中性洗剤で全体洗い(手洗いもしくは洗濯機洗い)をしてから仕上げます。洗いにくい製品の場合は、和装ハンガーにかけて形を整え、乾燥させて仕上げます。

※ベンジンは気化しやすい(空気中に蒸発しやすい)物質です。使用中も瓶のフタは必ず締め、また作業中は窓を開けて換気をしましょう。
※ベンジンは引火性です。作業中はストーブ、マッチ、ライター、コンロ等は一切使わないでください。
※素材や染色によっては、ベンジンで色落ちや変色をすることがあります。輪ジミの対策をする前に、裏地部分や共布で色落ちテストをしましょう。
※刺繍や金箔・銀箔等の特殊加工がある部分にはベンジンは使えません。
※生地をガーゼで強くこするのはやめましょう。毛羽立ちやスレの原因になります。

水溶性シミの汚れ残りによる輪ジミの対策

コーヒーやワインといった水溶性シミの汚れが残っている場合は、ベンジンでの対策では着物の輪ジミが落とせません。この場合は中性洗剤を使って、残っている色素を落とします。

【着物の輪ジミ対策の手順】
1)小皿等の容器に中性洗剤を適量出して、水で薄めておきます。
2)汚れても良いタオルを着物の輪ジミがある部分の裏にあてておきます。
3)霧吹きもしくは綿棒等で、シミがある部分を濡らします。
4)綿棒もしくはガーゼを1)の中性洗剤の溶液に浸して、シミの部分に少しずつ付けてなじませます。
5)綿棒もしくはガーゼでトントンと生地を軽く叩き、汚れを浮き上がらせて落とします。
6)輪ジミ部分の汚れが落ちたら、一度水でよくすすぎます。
7)中性洗剤で全体を手洗い(または洗濯機洗い)して仕上げます。

※正絹(シルク)・ウール等の素材は水洗いができないため、上記の対策は使用できません。
※金箔・銀箔・刺繍加工・レース加工・ビーズ加工等がある製品は、水洗い可能な生地で作られていてもご自宅ではシミ抜き・洗濯ができません。
※この方法では必ず最後に全体洗いで仕上げをしましょう。シミ抜きだけで乾燥させると、汚れが再度残る可能性があります。

【注意!】自宅では着物の輪ジミ対策ができないケース

以下のような場合には、残念ながら自分で着物の輪ジミ対策をするのは難しいです。

※着物に輪ジミができた原因がよくわからない
※いつ付いたシミなのかがわからない(古いシミである)
※正絹(シルク)やウール等、自宅で洗えない着物に水シミ(ウォータースポット)ができている
※正絹(シルク)やウール等、自宅で洗えない着物に水溶性シミ・汚れができている
※シミ抜きにベンジンを使って失敗して輪ジミができた
※刺繍・金箔・銀箔・レース・ビーズ・スパンコール等の特殊加工がある
※水濡れによる染料の流れ出しが起きている
※以前に輪ジミを取ろうとして、スレや変色が起きている

輪ジミの原因や状態が上の項目のいずれかに当たる場合、ムリに着物の輪ジミ対策を行うと生地の変色や変質が起こり、もう一度着物をキレイに着ることができなくなってしまう可能性が高いです。自宅ではムリに着物の輪染み対策を行わず、下の3.の項目を参考にクリーニング専門店に相談をしましょう。

関連記事:振袖にシミや汚れを見つけたら?6タイプの応急処置・染み抜き方法

クリーニング専門店に依頼をします

自宅で着物の輪染み対策ができない場合や、「大切な着物を自分でシミ抜きするのは不安…」という場合には、クリーニングの専門店に依頼をします。ただし「着物の輪ジミ」の場合、着物のクリーニング店を選ぶのにもポイントがありますので注意しましょう。

「着物シミ抜き」のメニューはありますか?

着物の輪ジミは、「着物丸洗い(京洗い)」では落とすことができません。丸洗いとは洋服で言う「ドライクリーニング」のことで、石油溶剤を使って機械で全体を洗う方法です。着物の輪ジミの場合、手作業によるシミ抜き作業が必要になります。「着物の染み抜き」ができると確認できるお店を選びましょう。

「洗い張り」を依頼できますか?

着物の輪ジミが大きい場合や、色素の強いシミの場合、「洗い張り(あらいはり)」という洗濯方法が必要となることがあります。「洗い張り」とは一度着物を反物の状態に戻して、水で洗ってから糊をかけて張り直し、再度着物に仕立てる伝統的な方法です。

一般的なシミ抜きよりも複雑で専門的な「着物専門の洗濯方法」であり、技術を持った職人でないと「洗い張り」はできません。「シミの状態によっては洗い張りも受注可能」と明記している着物専門のクリーニング店や悉皆屋を選びましょう。

「色掛け」ができますか?

染料が流れ出していたり、ベンジン等の溶剤で変色が起きている場合には、「色掛け(いろかけ)」等の染色補修対策が必要になります。また着物の柄の部分に輪ジミがある場合、柄を書き直す必要があることも。クリーニングだけでなく、染色の補修もまとめて相談できるお店を選んだ方が安心です。

おすすめサービス:着物染み抜き 他店で落ちなかった古いシミ落とします

おわりに

着物輪ジミ ビフォア
着物にできた輪ジミは、放っておくとどんどん落ちにくいガンコなシミになってしまいます。半年・一年と置けばおくほど、着物をクリーニングに出した時の料金も高くなる可能性大。「着物に輪ジミがある!」と気づいたら、早めに適切な対策を取るようにしましょう。

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プロフィール

吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし

着物の染み抜きやお直しをする場合、加工内容や料金は検討がつかないと思います。お近くに専門店があれば安心ですがシミや汚れを見てもらったが、無理だと言われ諦めてしまう方が多いのです。遠方にお住まいの方はお電話又はメールでご相談いただければ、無料にてアドバイスさせていただきます。クリーニングやお直し以外でも着物の事ならお気軽にご連絡ください。

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