スキンケアの基本である化粧水が着物についた場合、どのように対処をしたら良いのでしょうか。
目次
着物の化粧水シミは自分で落とせますか?
着物の化粧水シミに自分で対処できるかどうかは「着物が水洗いできるか」と「汚れがついてからの経過時間」で決まります。まずはその2点を確認しましょう。また、化粧水に含まれる香料や色素などでも家で対処しにくい場合があるので注意しましょう。
その着物は「洗える着物」ですか?
着物についた化粧水のシミは、水をベースにした水溶性の汚れです。ついて即時であれば水を含ませていけば溶かしやすく落としやすいのですが、その他の油系溶剤等では溶かして落とすことができません。
ですから、着物の化粧水シミをご家庭で落とすのであれば「水洗い」のプロセスが絶対に必要です。ただし、着物にはご家庭での水洗いができないもの、水洗いしない方が良いものがたくさんあります。
- 正絹(シルク)や一般的なウールの着物
- ウォッシャブル加工の施されていない着物
- お出かけ用の着物 など
まずは化粧水シミがついた着物が「水洗いに対応した着物であるか」を、洗濯表示や素材などから確認しましょう。なお、礼装用着物(フォーマル着物)である振袖・留袖などは正絹(シルク)製品であることが多いです。フォーマル着物についた化粧水のシミは、ご自宅でのシミ抜きはできないと考えた方が無難です。
着物の化粧水シミはベンジンや染み抜き剤では落ちない
着物の化粧水シミは、ベンジンやシミ抜き剤などでは対処ができません。例えば「ベンジン」は油系の汚れを溶解させるための揮発油であり、化粧水シミのような水溶性汚れを溶かすのには向いていないのです。汚れを分解させられないだけでなく、却って汚れの範囲を拡大させる可能性が高く、おすすめができません。
最近ついたシミですか?
着物についた化粧水シミは、付いてから間も無くであれば比較的対処がしやすいです。しかし完全に乾いて汚れが繊維に定着すると、ご家庭での対処では落ちない手強いシミになります。ご家庭で対処できるかどうかの目安は、汚れがついてから数日程度までです。1週間?数週間以上が経過していたり、いつ付いたかわからないシミは、専門店に依頼した方が無難です。
特殊な香料や果汁が含まれていませんか?
次のような化粧水製品だと、ご家庭ではシミを落とせない可能性が高くなります。
- 香料が強い化粧水
- 果汁や酒などの自然由来の成分を混ぜている化粧水
- トロミが強い化粧水 など
着物の化粧水シミの落とし方は?注意点は?
着物の化粧水シミにご家庭で対処するには、着物へのダメージが少ない中性洗剤を使用します。輪ジミが残ったり、着物の形が崩れたりしないように注意していくことが大切です。また上で解説した水洗いの可否、経過時間などを必ず確認してから作業を行いましょう。
着物の化粧水シミの対処で用意するもの
- 中性洗剤(おしゃれ着用の液体タイプ洗濯洗剤)
- 柔軟剤
- 洗面器またはバケツ
- バスタオル 数枚
- 洗濯用ネット
- 着物用ハンガーまたは物干し
- アイロン
- アイロン台
- 霧吹き
- 当て布
※衿・胸周りの型崩れを防ぐため、事前に襟もとをぐし縫いで縫い付けておくか安全ピンなどで固定することを強くお勧めします。
※縮みやすい木綿着物などの場合、アイロン台の上でアイロンを強くかけて伸ばす工程が必要です。そのため、ハンガーにかけた状態で使うスチームアイロンなどは適しません。
着物の化粧水シミの落とし方・対処法手順
シミがある部分を表にして畳んだ状態で作業を始めるとやりやすいです。
- 着物の化粧水シミがついた部分を、ぬるま湯で濡らします。
- 中性洗剤を洗面器などに少量出して水で薄め、シミのある部分につけて、指で優しく洗います。(強く擦らないこと)
- 水ですすいで状態をチェックします。2?3回程度までなら繰り返してOK。
- 汚れが落ちたら、輪じみ防止の仕上げ洗いに入ります。大きな洗面器かバスタブなどに水を入れて、中性洗剤を適量溶かします。
- 畳んだ状態でネットに入れた着物を水につけて、両手で優しく全体を押し洗いします。
- 水を取り替えて濯ぎます。濯ぎの回数は2?3回で、最後の濯ぎで柔軟剤を使用します。
- ネットに入れた状態で、洗濯機の脱水を30秒程度、とても軽く行います。(型崩れが不安な場合には洗濯機脱水無しで、次のタオルでの脱水をていねいに行います)
- バスタオルで着物を挟んで、軽く叩くようにしながら水分を取っていきます。ここでも擦らないことが大切です。
- 着物用ハンガーまたは物干しにかけて形を整え、直射日光を避けて干します。(縮みやすい素材の場合には先にアイロンをかけた方が良いです)
- アイロンで形を整えて仕上げます。
【着物の化粧水シミに対処する時の注意点】
※シミ部分だけの手入れで終わらせると輪ジミができやすいです。必ず全体を仕上げ洗いしましょう。
※シミ部分を強くこすったり、何度もシミ抜きを繰り返すのはNGです。毛羽立ち、色落ちの原因になります。
※3回程度洗剤をつけても汚れ落ちが見られない場合には、それ以上は無理に染み抜きせず、専門店に相談しましょう。
着物の化粧水シミはクリーニングで落ちますか?
着物の化粧水シミを落とす場合、着物を専門に扱うクリーニング店での「シミ抜き」や「洗い張り」などの対処が必要になります。昔のシミ、変色してしまったシミの場合だと、シミ抜きだけでは落とせず、染色補正が必要になるケースもあります。いずれにしても「着物のシミ抜き」に強い専門店に相談することをお勧めします。
丸洗いでは落ちないので注意
着物の一般的なお手入れ法である「着物の丸洗いクリーニング(京洗い)」では、着物についた化粧水のシミは落ちません。丸洗いしか対応できない店もあるので注意が必要です。
シミ抜きまたは洗い張りが必要
着物の化粧水シミを落とすには、着物専門のシミ抜き職人が手作業で行う「シミ抜き」が必要です。シミの範囲が広かったり、化粧水の汚れが縫い糸にまで染みている場合には、一度着物を解いて洗う「洗い張り」が必要になるケースもあります。
水溶性シミである化粧水シミの場合、一般的なクリーニング店(洋服のクリーニング店)だと「汚れが取れない可能性がある」としてお断りされてしまうこともあるようです。まずは「着物のシミ抜き」ができることを明記しており、洗い張りや染色補正など、さまざまな対処ができる専門店に相談することをおすすめします。
着物の化粧水シミの予防対策はありますか?
着物を着ている間に化粧水での保湿を行う習慣が多い人は「水滴がつきやすい箇所を防護する」という習慣をつけると良いでしょう。また撥水加工(パールトーン加工)を行うのも手です。
大きめバンダナやタスキを使う
保湿スプレーを使う時には、大きめのハンカチやバンダナで胸元を保護しましょう。また襷(タスキ)で袖を捲っておくと、袖周りに化粧水スプレーが撥ねるのも防ぎやすくなります。
撥水加工で水シミを防ぐ
撥水加工(パールトーン加工)をしておくと、水性の汚れがついたときに染み込みにくくなり、軽い汚れならサッと拭いただけで対処できるようになります。よく着る着物、お酒や化粧水といった水性汚れがつきやすい時に着る着物などは、撥水加工をしてみると良いでしょう。撥水加工も着物専門のクリーニング店や加工店で依頼できますよ。
おわりに
着物についた化粧水のシミは色素が薄いため、一度乾くと目立たなくなり「放っておいてもいいか」と判断してしまう人が多いようです。しかし化粧水に含まれる美容成分や香料などの成分は、時間が経つと少しずつ酸化してガンコな変色シミに変化してしまいます。汚れがついた!と思ったら、早めに対処することが大切ですよ。
当店『着物ふじぜん』は、着物専門のクリーニング店として、着物についた化粧水シミなどのご相談にも対応しています。宅配便での全国対応も行っていますので、お近くに着物専門クリーニング店が無い時にはお気軽にご相談くださいませ。