「着物に付いた血液シミの落とし方」について、ネット上では様々な情報が溢れています。どれが正解でどれが間違いなのか分からず、お困りの人も多いのではないでしょうか？
着物に付いた血液シミは、対処法を誤ると汚れが落ちなくなったり、着物自体をダメにしてしまうことが本当にあります！適切な落とし方や対処法をキチンと知っておきましょう。
目次
着物の血液シミの応急処置
まずは「着物に血液シミが付いた！」というその場の応急処置についてです。ご家庭での普段のお手入れ方法によって血液シミの応急処置が違います！十分に注意しましょう。
ご家庭で水洗いしている着物の場合
【こんな着物に向いた対処法です】
- ポリエステル素材で家で水洗いしている
- 「洗える着物」表記があり家で洗濯している
着物の中にはポリ着物やウォッシャブル着物など、ご家庭での水洗いに対応している着物もあります。血液シミは早めに水を使うと落としやすい汚れではあるので、水に強い着物の場合に限っては、その場で少々水を使った応急処置をすると有効です。
【応急処置の方法】
- ティッシュペーパー、紙ナプキンなどで汚れの水分をやさしく吸い取る
- タオルやハンカチなどを水で濡らして絞る（お湯はダメです）
- 汚れた部分を濡らしタオルで軽く叩いて汚れを移しとる（擦らず、広げないこと）
- 乾いた別のタオルで叩いて水分を取る
※汚れ範囲が2～5mm程度の場合に有効な対処法です。血液シミの大きさが1センチを超えるような広範囲の場合、濡らすと汚れ範囲が広がる上、汚れが取りきれません。大きなシミの場合には次項の「水洗いできない着物」の対処法を選びましょう。
※ゴシゴシ強く擦るのはNGです。
※お湯を使うと血液のタンパク質が固まるので、必ず冷水を使いましょう。
水洗いできない着物・素材不明の着物の場合
【こんな着物に向いた対処法です】
- 正絹（シルク）でできている
- 素材がわからない
- 木綿着物だが家では水洗いしたことがない
- 礼装用（フォーマル用）の振袖・留袖・訪問着等
上で書いたようなウォッシャブル着物を除くと、着物は基本的に「水に弱い」です。濡らしただけでその部分がものすごく縮んだり、色落ちなどを起こすことがあります。そのため水洗いできない着物、素材がわからない着物に血液シミが付いた場合には、水を使わない応急処置のみで止めます。
【応急処置の方法】
- 紙ナプキン、綺麗なタオルなどでシミをやさしく押さえ、水分を吸い取る
（ギュッと叩き込んだり擦ったりしないこと） - 汚れの部分になるべく触れないようにして帰宅する
※濡れタオルは絶対に使わない、濡らさないこと。布が縮みます！
※おしぼり類は使用禁止です。アルコールなどが含まれていて変色する原因になります。
着物の血液シミの落とし方【家庭でできる範囲】
次に、着物の血液シミの落とし方についてです。まず落とし方に入る前に、家で汚れを落とせる可能性のある「条件」についてから解説しますね。
【ご家庭で着物の血液シミを落とす条件】
- 今まで家で水洗いしてきた着物であること
- 今日付いたばかりの血液シミであること
厳しすぎる条件でとても申し訳ないのですが、これ以外の着物についた血液シミはほぼ家では落ちないです。血液シミをご家庭で落とすには「水」が必要なので、まず扱える着物がとても限定されます。正絹、ウールなどはもちろん、木綿着物なども水洗いNGというものはとても多いですが、これらの着物はご家庭で血液シミに対処できません。ページ下部でお店選びの方法をご紹介しているので、早めに専門店に相談しましょう。
着物の血液シミを落とす方法
【用意するもの】
- おしゃれ着洗い用の洗剤（中性タイプのもの）
- 着物用のハンガーまたは物干し竿
- 洗濯用ネット
- バスタオル2枚
- 血液シミ部分を軽く水で濡らす
- 中性洗剤（おしゃれ着洗い用液体洗剤）の原液を少量つける
- 指で優しく揉み洗いする（強く擦らない）
- 水でよく洗い流す
- 中性洗剤を溶かした水に着物全体を漬けて、優しく押し洗いする（仕上げ洗い）
- 水を取り替えて2回以上濯ぐ
- 洗濯ネットに入れて、洗濯機でごく軽く（30秒くらい）脱水させる
- バスタオルで挟むようにして叩き、水分を取る
- 着物ハンガーまたは物干し竿にかけて、直射日光を避けて自然乾燥させる
※歯ブラシなどでゴシゴシ擦るのはNGです。毛羽立ち、色はげの原因になります。
※汚れが落ち切らない場合には染み抜きを繰り返さず、早めに専門店に相談しましょう。
着物の血液シミはセルフシミ抜きNG？理由は？
着物に付いた血液シミの落とし方について「もっと強力な落とし方は無いの？」「洗えない着物でもなんとかならない」と考える人も多いことでしょう。でも決して意地悪を言う訳ではなくて、本当にこれ以上のセルフシミ抜きは「やらない方がいい」というのが正解なんです。決して当店が着物クリーニング屋で、儲けたいから言っているわけではありません。血液シミのセルフシミ抜きがおすすめできない理由はこれだけあります。
水で縮む着物が多い
上でもちょっと解説しましたが、着物の多くは水濡れにとても弱いです。そして、血液シミをご家庭で落とすには「ザブザブと水を使う」しか方法がありません。無理に着物の血のシミを落とそうとして濡らした結果、片方の袖だけが縮んでしまったり、部分的な「水シミ（ウォースポット）」ができてしまうケースがとても多いのです。
漂白剤に負ける着物が多い
着物の素材や染色にはとてもデリケートなものも多いです。普段着の洋服であれば使える漂白剤の類を血液シミ抜き部分に使って、色抜けや変色を起こしてしまうケースも見られます。
アルカリ性で変質する着物が多い
血液シミをご家庭で落とすには、本来、合成洗剤やセスキ炭酸ソーダ、重曹などといったアルカリ性物質を使った方が有効です。しかしアルカリ性物質は、シルクやウールはもちろん、一部の木綿、化学繊維なども変質させることがあります。「布が縮んだ」「手触りがゴワゴワになった」「色が変わった」このような変化が起きてしまうと大変なのです！
「つけ置き」で再汚染する
「丈夫なポリエステル着物だから家庭でシミ抜きできる?」と考える人も多いのですが、血液シミの場合、そうとも言い切れないところがあります。ご家庭でガンコな血液シミをシミ抜きするには「つけ置き」の工程が必要になるのですが、繊維によっては剥がれた汚れが他の部分に付着する「再汚染」が起きることも。
特にポリエステル着物などにセスキ炭酸などを使って長くつけ置きすると、汚れが他の部分に移る「再汚染」が起きたり、染色の一部が剥がれたりして、着物全体がくすんでしまうこともあるのです。
【失敗したら専門店でも戻せないことがあります！】
現在ではご家庭のシミ抜き方法にも様々なものがあります。例えばメイク落としオイルや重曹、セスキ炭酸などを使ったシミ抜きです。しかしこれらを使って着物が「変質」「変色」を起こした場合、最悪、専門店に後から相談しても着物を元に戻せなくなってしまうことがあります。無理をせず、早めにプロへの相談をおすすめします。
着物の血液シミはクリーニングで落ちる？
着物に付いた血液シミは、できれば早めに専門店に持ち込んだ方が安心です。お店の選び方についてご案内します。
「丸洗い」では血のシミは落ちません
着物の血液シミは一般的なドライクリーニング（着物丸洗い）では落ちません。丸洗いしかできないお店はNGです。職人さんが手作業で落とす「シミ抜き」ができる店を選びます。
着物に強い店を選びましょう
洋服系クリーニング店だと、着物の血液シミを「落ちない」と断ってしまうことがあります。着物専門のクリーニング店や悉皆屋さんなど、着物の取り扱いに慣れているお店に相談した方が良いです。
血のシミが糸にも染みている場合
血のシミの範囲が広く、縫い糸にも汚れが染みている場合には、一度着物を解いて洗う「洗い張り」の方が良いことも。様々な対処法ができる専門店を選んだ方が安心です。
古い血液シミも「染色補正」で対処できるかも？
いつ付いたかわからない程の昔の血液のシミになると、一般的なクリーニング店では落とし方や対処法が分からずお手上げになることも。でも専門的なお店なら、職人による漂白や柄の描きたし、部分的な染め替えといった「染色補正」で、古い血液シミをカバーできることもあります！諦める前に、着物に強いお店に相談してみてくださいね。
終わりに
着物に付いた血液シミの落とし方について解説しましたが、お役に立ちそうでしょうか？着物の血液のシミ抜きを専門店で行う場合、「シミの大きさ」と「落としやすさ」でシミ抜き料金は段階的に変わります。
「昨日ついたばかり」という5ミリの小さなシミならば安い料金でシミ抜きできるのですが、「3ヶ月くらい前で、自己流で染み抜きを失敗して汚れを広げました」という10センチ以上のシミとなると、どうしても料金が上がってしまうんですよね。ちなみに当店『ふじぜん』では小さいシミなら1カ所550円（税込）～でシミ抜きができます。セルフ染み抜きで無理するより、早めにご相談いただきたいなあ・・・というのが正直なところです。
当店では宅配便での対応も受け付けているので、お近くに着物の血液シミに対処できるお店が無いときにはお気軽にご相談ください！血液シミの染み抜きに失敗してしまった時などのご相談も受けつけています。
