夏のイベントには欠かせない浴衣(ゆかた)。暑い夏に着る浴衣には汗汚れもたくさんつきますね。またイベントで食べこぼしや飲み物のシミ等を作ってしまって、浴衣のシミ抜きをしたいという人も多いのではないでしょうか。
浴衣は他の着物類に比べてばお手入れがしやすい衣類なのですが、普段着の洋服と同じ感覚で対処をするのは厳禁です。洋服と同じシミ抜き・お手入れをすることで、浴衣が縮んだり、変色をしてしまうこともあります。十分に気をつけて浴衣のお手入れをしましょう。
目次
合成洗剤・アルカリ洗剤で洗濯
木綿製等の多くの浴衣は、ご家庭での水洗いでお手入れをすることができます。ただし普段着のTシャツなどと同じ感覚で、次のような洗剤を使うのはNGです。
使用してはいけない洗剤
- アルカリ性・弱アルカリ性の洗剤
- 酵素入りの洗剤
- 蛍光剤入の洗剤
浴衣には天然素材・天然染料が多く使われているため、弱アルカリ性の洗浄剤や酵素等を使うと、色あせや収縮(縮み)等が起きてしまうことがあります。いわゆる合成洗剤がNGなのはもちろん、一見して衣類に優しそうな「液体せっけん」「粉せっけん」等も避けた方が無難。これらも弱アルカリ性の洗剤だからです。
おしゃれ着洗い洗剤を使う
浴衣の洗濯やシミ抜きには、中性タイプの液体洗剤を使いましょう。商品名で言うとエマールやアクロン等「おしゃれ着洗い用」のものは多くが中性です。中性洗剤かどうかは、製品の裏の説明書でも確認することができますよ。、
漂白剤を使用する
普段のお洗濯では、黄ばみ等の防止のために漂白剤を使用するという人も多いことでしょう。また食べこぼし等にパッと漂白剤の原液をかけて対処をするという人もいるのではないでしょうか。
たしかに酸素系漂白剤は、基本的には色柄もの等の衣類にも使用することができます。しかしすべての染料に対して安全というわけではありません。
例えば粉末タイプの漂白剤(過炭酸ナトリウム)によって液剤がアルカリ性に傾くと、その性質に弱い藍(インディゴ)等は染料が剥がれ、流れ出しやすくなってしまいます。
- 柄がにじむ
- 色が薄くなる(あせる)
- 白い部分に色移りする
浴衣の染料によっては、漂白剤の使用で上のようなトラブルが起こる可能性があります。安易な漂白剤の使用で変色等が起きてしまうと、専門店でも浴衣を元に戻すことができなくなってしまうのです。
浴衣のお手入れは早めに!
シミや汚れは、付いてから時間が経つほどに取れにくくなります。つまり強力な洗剤や漂白剤が必要になってしまうということです。
ダメージの穏やかな中性洗剤だけで汚れを落としきるには、できるだけ早く浴衣を洗うことが大切。できれば着用した当日中、遅くとも翌日までには、浴衣を洗濯するようにしましょう。
重曹やクレンジングオイルを使う
浴衣にシミが出来た時、インターネットでシミ抜き方法を探すという人も多いはず。でもその時、一般的な「洋服のシミ抜き方法」の情報を取り入れていませんか?
洋服向けのシミ抜き方法だと、次のような材料をシミ抜きに使う方法がよく案内されています。
- 重曹
- クエン酸
- クレンジングオイル
- アルコール 等
しかしこれらの方法は、浴衣の場合にはほぼおすすめができません!例えば「重曹」は一見すると穏やかなシミ抜きのイメージがありますが、その性質は弱アルカリ性。藍色等の浴衣を色あせ・色移りさせる可能性があります。
反対にクエン酸の場合、強い酸性なので、濃度によっては天然染料を変色させる恐れもあるのです。クレンジングオイルやアルコールも同じこと。一般的な服に比べてデリケートな浴衣には向かず、シミを抜くはずが別のシミを作ってしまった…というトラブルがとても多く起きています。
着物用の情報を参考に
浴衣のお手入れをする時には、「着物・呉服」に関する専門的な情報を取扱っているところを参考にしましょう。呉服店や着物を専門に取り扱うお店、着付け学校等、着物に強い施設・店舗の公式サイトを見ることをおすすめします。
浸け置き洗いをする
洋服の汚れが落ちにくい時には、洗面器等に洗浄液を作って浸け置き洗いをしておく…という人も多いことでしょう。でもこの方法、浴衣の時には絶対にやらない方がよいです。
水洗いに対応している浴衣でも、長時間水に濡れているとそれだけ染料が取れやすくなります。また、木綿製品等が縮んでしまうリスクも高くなるのです。
木綿の布の場合、織り方によっては長時間浸け置きをすると8%近くも縮んでしまうことがあります。1メートルの布地であれば8センチ、2メートルなら16センチ縮むということです。
体にピッタリ合っていた筈の浴衣が、おはしょりが作れなくなったり、身幅が足りなくなってしまう……長時間の浸け置き洗いには、このような危険性もひそんでいます。
濡らす時間は短めに
色落ちや縮み等を防ぐために、浴衣の洗濯は短時間で。またいつまでも浴衣が濡れているのも良くないので、風通しの良い場所で乾燥させるようにしましょう。
畳まない・ネットに入れないで洗う
普段着のTシャツやジーンズ等であれば、ネットに入れずに洗濯機に入れて洗っても、干せばだいたい形は元に戻りますよね。また綿のシャツ等も、アイロンをかければ大丈夫、ということが多いでしょう。
しかし浴衣の場合、洗っている時にくしゃくしゃにしてしまうと、形が崩れて元に戻らないことがあります。特に襟元や袖等に激しい負担がかかると、アイロンをあてても型くずれが戻らないことが多いです。
適当にグシャグシャと洗ったり、ネットに入れずに洗濯をしたことで、買ったばかりの浴衣が「部屋着」のようなみすぼらしい仕上がりになってしまった…というケースは珍しくありません。
型崩れ防止が大切
浴衣を型崩れさせずにご自宅で洗うには、次の4点が重要になります。
- きちんと畳んで洗う
- 畳んだ状態でネットに入れて洗う
- 物干しにかける(洋服用ハンガーは避ける)
- アイロンでしっかり形を整える
浴衣の畳み方がよくわからない、浴衣をかけられる高さの物干しが無い、ご自宅にアイロンが無い…といった場合には、無理をせずに専門店にクリーニングに出した方が安心です。
浴衣の洗濯表示を確認せず洗う
浴衣は着物よりカジュアルな印象があるため、「浴衣 = 家で洗えるものである」と思い込んでいる人は大勢居ます。しかし昔とは違い、最近の浴衣は「おしゃれ着」「お出かけ着」の扱いです。そもそも家で洗うことができない浴衣もたくさんあります。
家でお手入れができない浴衣の例
- 絹紅梅(一部に絹が使用されており縮みやすい)
- 金箔・銀箔の箔押し仕様(箔押し加工が剥がれる)
- 刺繍がある (刺繍の色落ち、縮みによる刺繍の型崩れ)
- ビーズ・スパンコール縫い付けがある(変色、剥がれが起きる) 等
これらの浴衣を無理に自宅でお洗濯すると、多大なダメージが起きてしまう可能性が高いです。
洗濯表示は必ず確認
最近のプレタポルテ浴衣(お仕立て上がりの浴衣)には、洗濯表示が付随しています。必ずその表示を見て、家での水洗いができるかどうかを確認してから洗濯等のお手入れをしましょう。
家で洗えない浴衣の場合には、早めに専門店でドライクリーニングやシミ抜き等のお手入れを相談することが大切です。
おわりに
浴衣は和装初心者の方が挑戦することが多い分、シミ・汚れ対処の失敗例も非常に目立つのが特徴です。上の解説でも触れましたが、お手入れの失敗で縮んだり、変色が起きてしまった浴衣は、後から専門店に持ち込んでも「職人もお手上げ」というケースが珍しくありません。
浴衣はカジュアルなもの…と言っても、お気に入りの大切な一着のはずです。大切にお手入れすれば、来年も再来年も着ることができます。
「中性洗剤で洗ったけれどシミが落ちない」「自分で上手に洗えるか不安だ」という時には、できるだけ早く専門店に相談をしましょう。当店でも浴衣のクリーニングやお手入れを受け付けていますので、お気軽にご相談ください!