夏のイベントでは浴衣(ゆかた)を着る!という人、最近では若い人を中心に増えていますね。その分だけ、浴衣の洗濯方法やシミ抜き等、浴衣のお手入れについて知りたい人も多いようです。
浴衣は振袖や訪問着等の着物に比べれば扱いやすく、お洗濯等も比較的カンタンに行うことができます。とは言え普段着のTシャツ感覚等で浴衣を洗濯してしまうと、せっかくの素敵な浴衣がダメになることも!あるファッション雑誌が行ったアンケートでは、浴衣の洗濯方法って、実は7割以上の人が「勘違い」をしているそうですよ。
目次
まず「洗える浴衣」か確認!
「浴衣は家で洗えるもの」とは限りません。近年のおしゃれ着としての浴衣の中には、家での水洗いができない浴衣がたくさんあります。まずは洗濯表示や素材を確認しましょう!洗えない浴衣には次のようなものがあります。
絹が混じっている浴衣
絹(シルク)は縮みやすいので、家での水洗いは不可。絹紅梅等の浴衣はお洗濯ができません。
箔加工がある浴衣
金箔・銀箔等、キラキラとした加工のある浴衣は水洗いNG!箔が剥がれてしまいます。
刺繍や縫い付けがある浴衣
刺繍(ししゅう)やビーズ・スパンコール縫い付け等の加工がある浴衣も水洗いNG。部分的に縮んで刺繍の形が崩れたり、色落ち等が起きやすいです。
しぼりの浴衣
ウォッシャブル加工がされているものは別ですが、絞り染の浴衣の中には家で洗うと独特の凹凸の風合いが失われてしまうことがあります。
本麻染・柿渋染等の浴衣
非常に高級品であり、色落ちがしやすいです。このような浴衣については、家でお洗濯やシミ抜きをせず、クリーニング店等の専門店に相談をしましょう。
浴衣には普段の洗剤や漂白剤は使えない?
浴衣の洗濯では、縮みにくく色落ちしにくい中性タイプの洗濯洗剤を使います。普段のお洗濯に使われることが多いアルカリ系洗剤類や液剤・溶剤は使うことができません。
【使える洗剤】
◎中性タイプの洗剤:ファーファココロ、エマール、アクロン等
【使えない洗剤類】
・弱アルカリ系洗剤:酵素入り・蛍光剤入り洗剤、粉末石けん含む
・重曹
・クエン酸
・セスキ炭酸ソーダ
・漂白剤 等
浴衣には藍(インディゴ)等、天然染料が多く使われています。天然染色製品は通常の衣類に比べて「色落ち」をしやすいです。
また木綿浴衣等はそもそも縮みやすいのですが、洗剤液がアルカリ性に傾くほど縮みやすくなります。浴衣の色合いや形を長持ちさせるためにも、中性洗剤を使いましょう。
浴衣の洗濯方法は?
浴衣の洗濯方法は、中性洗剤を使い、洗濯機または手洗いで洗っていきます。
用意するもの
- 中性洗剤
- 柔軟剤
- 洗濯ノリ(パリッとさせたい場合)
- 柔らかい布 数枚
- タオル 数枚
- 洗濯ネット(浴衣を畳んで平らに入るサイズ)
- 着物用のハンガーか物干し
- アイロン、アイロン台、あて布(スチームアイロンはNG)
- 木綿糸、針
- ベンジン(油系のシミがある場合)
しつけをかける
浴衣を洗う場合、もっとも型くずれしやすいのが「襟(えり)」。ここだけはヨレが起きないように、先に軽く縫っておいた方が良いです。
縫うといっても、ザクザクと長め・粗目でかまいません。100円均一等で売っている木綿糸で大丈夫。おもちの方はしつけ糸を使いましょう。
部分洗い(シミ抜き)をする
汚れが付いていないかチェックして、シミ抜きをしていきます。
油汚れにはベンジンを
バターやマヨネーズ等の油分の多い食べこぼしや、ファンデーション汚れ等は油溶性シミなので、中性洗剤だけでは落ちきらないことがあります。ベンジンでシミ抜きしておきましょう。
- タオルを敷いてから浴衣のシミがある場所を広げておきます。
- 布にベンジンを染み込ませて、上から軽く叩きます。
- 汚れが下に落ちるので、常にキレイな面が当たるように布を動かします。
- シミが取れたら、濡れている箇所の輪郭がわからなくなるようにぼかします。
水性の汚れは洗剤で部分洗い
お茶のシミやジュースのシミ等、水分の多いハネがついている場合には、事前に洗剤でシミ抜き(部分洗い)をしておいた方が良いです。
- タオルを敷いてから、浴衣のシミがある場所を広げておきます。
- 洗面器等に水を入れて、中性洗剤を適量垂らして溶かします。
- 洗剤を溶かした水をシミがある場所にたらして、汚れに染み込ませます。
- 上から乾いた布を置いて優しく押さえ、水分を吸い取ります。
- 「洗剤液をたらす」→「水分を取る」を何度か繰り返して汚れを吸い取ります。ゴシゴシこすったりはしないでください。
本洗いをする
目立つシミが取れたら、浴衣の本洗いをします。
洗濯機洗いの場合
次のような浴衣は洗濯機洗いができます。
- ミシン縫いの浴衣
- 化繊(ポリエステル)等の浴衣
- 洗濯表示で「洗濯機OK」の表示がある浴衣
- 浴衣を畳んでネットに入れます。
- 洗濯機は「ドライコース」「ソフトコース」等、優しく洗えるコースを選びます。
- 中性洗剤・柔軟剤をそれぞれセットしておきます。
- 脱水は30秒程度で終わらせます。
- タオル2枚で浴衣を挟んで軽く叩き、残った水分を取ります。
- 濡れた状態でアイロン掛けを行います。生地を引っ張るように意識しながら伸ばしましょう。
- 浴衣を着物ハンガーか物干しにかけて形を整え、陰干しして乾かします。
手洗いする場合
次のような浴衣は手洗いをした方が良いです。
- 手縫いの浴衣
- 天然染料を用いた高級浴衣
- 洗濯表示で「手洗い」の表示がある浴衣
- 型崩れさせたくない浴衣
- 縮ませたくない浴衣
- 洗面ボウルや浴槽等に水をはって、中性洗剤を適量溶かします。使用量はパッケージの説明書を見て確認しましょう。
- 洗濯ネットに浴衣を入れて、ネットごと洗濯液に漬け込みます。
- 上から両手で押して、全体を優しく押し洗いします。
- 2回水をとりかえて、すすぎを行います。
- 浴衣をピシッとさせたい場合はすすぎの最後に「洗濯のり」を少量入れてから浴衣を漬けて、薄めたノリが全体に行き渡るようにします。6.洗濯機の脱水機能で20秒程度だけ軽く脱水させます。
- タオル2枚で浴衣を挟んで軽く叩き、水分を取ります。
- 濡れた状態でアイロン掛けを行います。生地を引っ張るように意識しながら伸ばしましょう。乾いてきたらあて布をします。
- 浴衣を着物ハンガーか物干しにかけて形を整え、陰干しして乾かします。
浴衣を洗ったら型崩れが酷い?
「浴衣を洗濯したら型崩れした」という失敗は意外と多いものです。これには次のような理由が挙げられます。
しつけをしていない
洗うと一番型崩れするのが「襟(衿・えり)」です。衿は一度型崩れすると元に戻りません。しつけ等が面倒な場合には、浴衣の洗濯は専門店に任せた方が安心です。
洗濯・脱水のしすぎ
洗濯機を使った方が型崩れは起こりやすいです。型崩れが不安な場合は手洗いを。また、脱水は20~30秒程度と、長く回しすぎないように気をつけましょう。
浴衣を乾燥機で乾燥させた
浴衣は絶対に乾燥機を使ってはいけません。生地が一気に縮んで型くずれし、元に戻らなくなります。
浸け置き洗いはNG
浸け置き洗い等、長く水に触れさせていると浴衣は縮みます。特に木綿着物・麻が混じっている着物は縮みやすいです。浸け置き洗いは止めましょう。
ハンガーのかけ方が適切でない
洋服用のハンガーは衿・肩の型崩れの原因になります。また女性用の浴衣は丈が長いため、「裾までしっかり伸ばしてかけられるところが家にない」というケースも最近では増えています。
裾をくしゃくしゃにしたままで干すと、アイロンしても型崩れが戻りにくいです。
アイロンが適切ではない
洋服用のスチームアイロンでは、洗濯による型崩れを伸ばして戻すことはできません。アイロン不要の製品以外、アイロン台を使うタイプのアイロンは必須です。
「家に浴衣を干す場所が無い」「アイロンが無い」といった場合には、浴衣の洗濯はプロにおまかせした方が良いかもしれません。
家の洗濯ではキレイにならないシミもある?
浴衣の次のようなシミは、家での洗濯ではキレイに落とすことができません。
- 付いてから数日以上が経過した汚れ(乾いてしまったシミ)
- 一度洗ったが残っている汚れ(油染み等)
- 古い変色シミ
- 黄ばみ
- カビによるシミ
- 色素が多いシミ(ワインのシミ、カレーのシミ、着色料のシミ等)
このようなシミが浴衣にある場合には、和装や着物に強いクリーニング店で「シミ抜き」をしてもらいましょう。
おわりに
「浴衣は洗えるもの」という印象が強いためか、浴衣にはついては気軽にお洗濯にチャレンジされる人が多いです。しかしTシャツ等の普段着の洋服と同じ感覚で浴衣を洗濯すると「型くずれする」「縮む」「色落ちする」といった失敗が起きてしまいます。
浴衣等の和装の服は、洋服に比べてとてもデリケートです。大切な一枚を長持ちさせるためにも、十分に気をつけて浴衣をお洗濯しましょう。
浴衣のお洗濯に不安がある場合には、どうぞお気軽に着物クリーニング専門店にご相談ください!