染み抜き・ハウツー

着物の香水シミの対処法・落とし方の正解は?よくある疑問をプロが解説

着物でお出かけする時にも、香りのオシャレを楽しみたい方は多いことでしょう。でも着物に香水のシミがついてしまうと、対処が大変になってしまうのが困りものです。

吉原ひとし
吉原ひとし
こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。ここでは着物の香水シミへの対処法・落とし方についてのよくある疑問・質問を、プロが詳しく解説していきます。

着物の香水シミ、乾いたら透明になったけど放置して平気?

着物の香水シミは放置してはいけません!香水のシミは乾くと一旦は透明になりますが、複数の香料成分は繊維の中にたっぷりと残っています。

時間が経つとこの成分が変色シミの原因になったり、虫害・カビなどを招くことも。特に香水シミは変色を起こしやすいので、早めに対処することが大切です。

着物の香水シミは洗えば落ちる?

着物についた香水シミは、例え「洗える着物」であっても、普通の洗濯では落ちない可能性が高いです。この理由としては、香水がとても複雑な構成をしていることが挙げられます。

香水は複数の濃度の高い香料を混ぜて作られるものです。その原料も多種多様で、植物性の花びらなどから抽出した成分もあれば、果汁や果皮から抽出し濃縮した成分が使われていることもあります。

手ごわいシミで知られる「果汁」や「花の蜜・花粉」などを、さらに凝縮して混ぜ合わせたようなシミと言えます。そのためご家庭できれいに落とすのは難しいと考えた方が良いです。

着物の香水シミはアルコールで落ちる?

洋服の香水シミ抜きでアルコールを使う方法がよく紹介されていますが、着物のシミ抜きにはおすすめできません。理由は「水洗いが必要になる」「変色リスクがある」「シミが広がる」という3点です。

水洗いしないとアルコールシミができる

アルコールでのシミ抜き後には、水を使った濯ぎ(水洗い)が必須になります。水洗いで仕上げないと、今度はアルコールによるシミができてしまうためです。

そのため、まず水洗いができない「正絹」「シルク混紡」「一般的なウール」など、多くの着物にはアルコールでのシミ抜きは適さない方法と言えます。(振袖・留袖など、いわゆるフォーマル着物は原則として水洗いできないものがほとんどです)

変色や色落ちリスクが高い

アルコールには、一部の染料を変質させる働きがあります。簡単にいうと「使った部分が変色するかもよ」と言うことです。

また、アルコールのシミ抜き使用後には強い洗剤(アルカリ系洗剤)を使わないとアルコール成分も落としきれないのですが、これも着物の染料の変質・変色の原因になることがあります。

例え「ウォッシャブルの着物」であったとしても、「中性洗剤の使用が指定されている」「オシャレ着洗い・手洗い指定」「天然染料(藍など)が使用されている」といった多くの着物には、アルコールでのシミ抜きが向かないのです。

かえってシミが広がることも

香水はとても複雑な構成をしているので、アルコールを用いるだけでは汚れや香りが取り除き切れないケースは多々あります。特に問題なのが、アルコールで少々溶けた汚れが広がるだけ広がって落ち切らないパターンです。

専門店でのシミ抜きは、シミの大きさで決まります。アルコールでシミの範囲を広げてしまうと、結局シミ抜きの料金を高くしてしまうことになるのです。

着物の香水シミは重曹で落とせる?

一般的な普段着の洋服ですと、シミ抜きや消臭のために重曹を使う人も多いようです。しかし重曹を使ったシミ抜きも「着物」の場合にはやらない方が良いです。理由は「水洗いが必要になる」と言う点に加えて、「生地の変質」「摩擦によるスレ」と言うリスクが高いためです。

重曹は「優しい洗濯」ではありません

重曹は自然界に還元しやすいと言う意味で「地球に優しい存在」ではあるのですが、成分は普通に「弱アルカリ性」です。一般的な石鹸や合成洗剤と同じです。繊維に対するダメージの違いは、石鹸や食器用洗剤を使うのとたいして変わりがありません。

中性洗剤を指定しているような「縮みやすい素材」「変色しやすい染料」の着物に対して、アルカリ性の重曹を使うとどうなるのでしょうか?

一番起こりやすいのは変質(縮み)と考えられます。着物の一部が部分的に縮んだり、生地が固くなったり、型崩れを起こす可能性があるわけです。変色のリスクもゼロでは無いです。

重曹のアルカリ性成分でもしも繊維が変質してしまった場合(例えば激しく縮んでしまったと言うようなケースです)残念ながら、専門店でも着物を元に戻せなくなります。

摩擦でのスレが起きると元に戻せない

重曹が汚れを落とす仕組みは、細かな粒子で汚れを削って落とす「研磨(けんま)」の力があるためです。ですから例えば普段着である白いTシャツを白くシミ抜きするのであれば、重曹はお役立ちなのですね。Tシャツの素材も編み方も基本的に丈夫ですし、染料がハゲる心配が無いからです。

ところが着物の染料や繊維はとてもデリケートです。例え「洗える着物」でも、重曹でゴシゴシ擦れば、摩擦によるスレ(白っぽくなる現象)が起きる可能性が非常に高くなります。

一度「スレ」が起きたら大変です。部分的な染め直し(染色補正)など、シミ抜きの何倍も手間と料金がかかる対応が必要になりますし、そこまでしても着物が元に戻らないことも。重曹でのお手入れは、デリケートなオシャレ着の代表である着物には不向きと言えます。

着物の香水シミはクリーニングで落ちますか?

着物についた香水のシミは、一般的なクリーニングである「丸洗いクリーニング(京洗い、着物丸洗い等)」だけでは落とすことができません。着物のシミ抜き専門の職人が手作業で行う「シミ抜き」などが必要になります。様々な着物のお手入れができる専門店に相談することをお勧めします。

シミ抜きできない店もあるので注意

「着物専門クリーニング」と言っていても、中には機械を使った全体洗いしかできないお店もあります。料金が激安だったりするので、若い人に選ばれることが多いようなのですが、シミのある着物には不向きです。

必ず「シミ抜き」ができることをハッキリと明記していているお店を選びましょう。

洗い張りや染色補正が必要になることも

香水のシミの状態や範囲の広さによっては、部分的なシミ抜きではなく、一度着物を解いて洗い直す「洗い張り」が必要になることもあります。

またシミが古くて変色してしまっている場合だと、部分的な染め直し(染色補正)での対応が必要になることも。様々なカバー方法を提案できる専門店に相談することをおすすめします。

着物の香水シミを予防する方法はある?

着物の香水シミは、スプレー液が飛び散ることで発生するケースがほとんどです。香水を直接スプレーしない方法を取り予防策とすることをおすすめします。

ハンカチなどにスプレーしてから手首に

液状の香水を直接、着物を着ている自分に対して吹きかけるのはシミを作る大きな原因になります。ハンカチやコットンなどに香水を染み込ませてから、手首をコットンで拭うことで、香りを移すことができますよ。

耳の後ろにつける方法も

香水をコットンなどに染み込ませてから、耳の後ろに少しつける方法も人気です。体温によって少しずつ香りますし、着物に香りが移りにくいのもメリットと言えます。

おわりに

着物についた香水のシミは、着物専門店でも「難易度が高い」と言うことで知られる汚れの一つです。「自分で処理してみようと思って」とシミを広げたり変色させてから相談されるケースも実に多く見られます。

シミの色が薄いからか、ぱっと見には自己処理できそうに見えそうなこともあるのですが、実際の香水シミは本当に手強いし落としにくいです。着物を今後キレイに着るためにも、ぜひお早めの着物クリーニング専門店への相談をおすすめします。

当店『ふじぜん』も、着物クリーニング・着物加工の専門店として、着物の香水シミのご相談を受け付けています。古いシミ、他店で断られたシミのご相談も大歓迎です。宅配便での全国対応もできますから、お近くに着物のお手入れのお店がない時にはお気軽にご相談くださいね。

30年前の古いシミ承ります!

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吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし


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