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着物のクリーニング「丸洗い」と「洗い張り」の違いとは?

反物

「この着物、クリーニングに出した方が良いのかも」と思って調べたら、「丸洗い」と「洗い張り」が出てきてどちらが良いのか迷ってしまった…着物に挑戦中の方の中には、こんな疑問を持つ方が多いようです。そもそも着物クリーニングを専門に行う業者が少ないので、街にある一般的なクリーニング店舗ではその違いをうまく説明できない…なんてこと、珍しくないんですよね。中には2つの違いがよくわからないまま、業者にオススメされたクリーニング方法を適当に選んでしまった、といったケースもあるようです。

着物丸洗いも洗い張りも、「着物全体を洗うクリーニング方法」であることには変わりはありません。でも、そのクリーニングのプロセスやメリット・デメリットにはかなりの違いがあります。さらに丸洗いと洗い張りでは、料金にもかなりの差が出てくるんです。両者の違いをよくわかった上で、適切なクリーニング方法を選びたいですね。今回は「着物の丸洗い」と「着物の洗い張り」の違いやそれぞれの料金相場等を、着物初心者の方にもわかりやすくご紹介していきます。

着物の洗い張りとは?

着物の「洗い張り(あらいはり/あらいばり)」とは、着物をほどいて反物(生地)の状態に戻し、それから洗う伝統的なクリーニング方法のことを指します。起源は不明とはされているものの、室町時代には既に洗い張りが行われたいたことを示す記録も残されており、とても歴史のある洗濯方法です。

既成品の洋服文化に慣れている現代の日本人にとっては、「着物をほどく」という文化が既に珍しいですよね。洋服の場合、衣類を作る時には生地を型紙に沿ってカッティングし、立体的に仕上げられています。また既製洋服は「ほどいて直す」ということを念頭に置いていないので、ミシン目等をほどくのも一苦労です。コートやジャケットをわざわざ全部パーツごとにほどいて洗ったら、大変なことになるでしょう。

しかし着物(和服)は、全体的に平面的に作られており、ボディサイズより大きな部分は縫い込む等、「布」の状態に近いかたちに仕立てる縫い方が行われています。「ほどいて縫い直す」ということを念頭に置いて作られており、知識さえあれば解くことも意外と簡単なんです。着物をほどき、端をつなぎ合わせると、幅40センチ弱・長さ12メートル以上という「反物(たんもの)」の状態に戻ります。「洗い張り」ではこの「反物」の状態で洗濯をするんですね。

洗い張りのプロセス

洗い張りのプロセスはかなり細かいものなのですが、ここではカンタンにご紹介します。

  1. 1.着物をほどいて反物の状態にする
  2. 2.糸くずやごみを取る
  3. 3.反物を水洗いする
  4. 4.素材に合わせた「張り」を行う(板に張り、糊付をする等)
  5. 5.反物を再度着物の状態に仕立てる

※「張り」の方法は素材によって異なります。
※「洗い張り」とは元々「反物の状態に戻して洗い、張りを行うまで(プロセスの4番まで)を指す言葉です。そのため業者によっては、「張り」までの料金と「仕立て」の料金が別会計となることが多々あります。

洗い張りの基本は「水洗い」。とは言え水(お湯)だけで洗うというわけではなく、専用の洗剤や薬品等も使用します。

洗い張りのメリットは?

全体がスッキリとキレイになる

「洗い張り」では完全に着物をほどいた状態で洗濯を行うので、汚れがすみずみまで取れます。「丸洗い」と比較すると、洗浄力は平均的に「洗い張り」の方が上とされることが多いです。(ただし汚れの内容によっては、丸洗いの方が合っていることもあります)

光沢・風合いが蘇る

反物の古い糊を取り除き、新たに糊を引いて張りを行うので、生地が真新しい状態のように風合いが良くなります。光沢感・風合いが蘇ることで、着物が新品のように生まれ変わるのです。

サイズ変更ができる

反物の状態から再度仕立てを行う際に、現在のお体に合わせてサイズ変更を行うこともできます。

様々な仕立直しができる

振袖から訪問着へ仕立て直したり、羽織・コート等へのお仕立て直しをされる方も居ます。また裏地を替えて雰囲気の違いを楽しんでみたり…サイズ変更だけでなく、様々な仕立て直しを行うことで、着物をまったく新しい形に蘇らせることも可能です。

洗い張りのデメリットは?

時間がかかる

洗い張りは「ほどく→洗う→仕立てる」というプロセスを経るため、出来上がるまでにはかなりの時間がかかります。業者によっても工期は異なりますが、最短でも1ヶ月、長い場合には2ヶ月程度を見た方が良いでしょう。また混雑期等には更に工期がかかる場合もあります。一般的なクリーニングのような「2~3日、一週間でお渡し」といったお急ぎ対応はできません。

料金が高い

「洗い張り」では「解く」「洗う」「張る」「仕立てる」というすべてのプロセスが手作業であり、それぞれに専門的な技術が必要になります。そのため料金は平均的に高くなりがちです。

【洗い張り(反物の状態で完成)の料金相場(税別)】
・振袖13,000円~20,000円
・留袖16,000円~24,000円
・訪問着10,000円~13,000円

【洗い張り→再仕立て(着物の状態に仕立てて完成)の料金相場(税別)】
・振袖40,000円~70,000円
・留袖50,000円~75,000円
・訪問着35,000円~50,000円

業者が限られる

洗い張りを行うのは、主に洗張屋(あらいはりや/関西では悉皆屋・しっかいや)と呼ばれる専門の業者、もしくは専門技術を洗い張り屋・悉皆屋等で学んだ職人が在籍する和装クリーニング店等です。ちなみに「着物のクリーニングやってます!」という業者でも、洗い張りには対応していなくて丸洗いだけ…というケースは意外と多くあります。

着物の丸洗いとは?

着物の丸洗い(まるあらい)とは、その名のとおり「丸ごと洗う」というクリーニング方法のこと。洗い張りのように反物んの状態に戻さず、着物の状態のままで丸ごと洗うことを指します。現在の「着物丸洗い」は、洋服クリーニングでいう「ドライクリーニング」の技術を応用しており、洗濯には有機溶剤等を使用します。現在では「着物をクリーニングに出す」という場合、こちらの「丸洗い」を想定される方が多いようです。

着物の丸洗いのプロセス

着物の丸洗いのプロセスは、業者によってかなり違いがあります。ここでは一例として、当店の丸洗いの工程をご紹介していきましょう。

  1. 1.生地の状態のチェックする
  2. 2.一点一点を専用のブラシを使い手でブラッシングし、丁寧な予洗いをする
  3. 3.一点ずつをネットに入れ、着物専用の有機溶剤でドライクリーニングを行う
  4. 4.真空低温乾燥機を使い、ゆっくりと低温で乾燥させる
  5. 5.更に乾燥室で一昼夜は乾燥させ、溶剤の成分や匂いをしっかりと揮発させる
    (着物の汗抜きクリーニングをご要望の場合には、汗抜きも合わせて行います)

※業者によっては予洗い無しの場合もあります。
※使用する溶剤等は業者によって異なります。

着物丸洗いのメリットは?

油汚れ・皮脂汚れに強い

着物丸洗いでは石油から生まれた溶剤を使うため、油で分解される「油溶性汚れ」を落とすのは得意です。例えばファンデーション等のお化粧品の汚れ、マヨネーズ等の食品の汚れ、皮脂汚れ等には特に向いています。

工期が比較的短い

着物丸洗いは着物を解く必要が無いので、工期が洗い張りに比べてグッと短いです。業者によっては2~3日でお渡しといったスピード受け渡しを売りにしているところもあります。(当店では丁寧な予洗いといった手作業プロセスが多いので、1週間~10日前後をいただいております)。

料金が洗い張りより平均的に安い

着物丸洗いの料金は、洗い張りよりもグッとお安めで手軽になります。

【着物丸洗いの料金相場】
・振袖:8,000円~12,000円
・留袖:8,000円~13,000円
・訪問着:6,000円~8,000円

中には上記相場より更に安い、価格破壊とも言えるリーズナブルな価格で丸洗いを請け負う業者もあります。

着物丸洗いのデメリットは?

業者によっては落とせない汚れがある

一般的な油性溶剤のみしか使わないクリーニング業者の場合、丸洗いでキレイに落とせる汚れはほぼ「油溶性の汚れ」のみです。水性の輪ジミだったり、ビール等のアルコール類を含んだシミ・血液汚れ等は、一般的なドライクリーニング用の溶剤だけでは落としきることができません。

「汚れが落とせないので、もう一度シミ抜きをした方が…」と、更に追加料金を請求するクリーニング業者、意外と多いと言われています。特に気をつけたいのが、上記でご紹介した「価格破壊系」の安い和装クリーニング店です。激安の理由は、予洗いも無しで機械に入れて、一律のドライクリーニングをしているだけだから…という業者が実は珍しくないのです。必ずしも「安い店=悪い店」というわけではありませんが、「洋服のコートやワンピースと変わらない料金(2,000円~3,000円前後)」という場合、「機械のみ仕上げ」である可能性はかなり高いと言えるでしょう。

当店では、水性汚れ・タンパク質汚れ等が落とせるように研究を重ねた着物専用の溶剤・洗剤を使用しています。また汗ジミ対策の汗抜きも丸洗いと合わせてできますので、よりスッキリとした仕上がりにすることも可能です。

着物の状態によっては丸洗いNGの場合がある

着物丸洗い」は、一部に手作業ではないプロセス(ドライクリーニング)を含みます。そのため着物が以下のような状態の場合、傷みを促進させてしまう可能性が考えられるため、「丸洗いはできない」と言われるケースも多いです。

【丸洗いNGの着物とは?】
・金箔・銀箔の箔押し部分が剥がれかかってしまっている
・金箔・銀箔が変質し、ベタつきがある
・刺繍部分に歪みやゆるみ等の変質が見られる
・刺繍・箔等の装飾部分の範囲が非常に広い 等

 

上記のようなお着物の傷みが気になっている場合には、洗い張りの方が良いか、補修をした方が良いのか…といった様々な観点で見てもらえるクリーニング専門店に相談をした方が良いでしょう。

なお「激安系」のクリーニング店に丸洗いを依頼したところ、着物の状態をろくにチェックもせずに洗われてしまい、着物が酷い状態になってしまった…というトラブルも見られているようです。不適切なクリーニングで刺繍や箔・生地が大幅に傷んでしまうと、最悪の場合には専門店でも補修ができなくなってしまいます。後から「しまった…」と思わないように、着物クリーニングの料金の安い・高いの部分だけでなく、クリーニングの内容などもしっかりチェックしておきたいですね。

おわりに

着物クリーニングの「丸洗い」と「洗い張り」。同じ「着物全体を洗う」という洗濯方法でも、その内容にはかなりの違いがありますね。一般的には、シーズンの終わりや保管前のお手入れには「丸洗い」、より本格的なお洗濯が必要な場合には「洗張」が選ばれることが多いです。とは言え必ずしも全てのケースでこの通り!というわけではありません。お着物の状態、今後の着用予定等によってもベストなクリーニング方法は変わってくるものです。

「洗い張りにしようか?丸洗いにしようか?」と悩んだら、両方のサービスを行っているクリーニング業者に着物を見て貰って、相談してみることをおすすめします。当店でも有資格者がご相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせくださいね。

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プロフィール

吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし

着物の染み抜きやお直しをする場合、加工内容や料金は検討がつかないと思います。お近くに専門店があれば安心ですがシミや汚れを見てもらったが、無理だと言われ諦めてしまう方が多いのです。遠方にお住まいの方はお電話又はメールでご相談いただければ、無料にてアドバイスさせていただきます。クリーニングやお直し以外でも着物の事ならお気軽にご連絡ください。

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