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着物のクリーニング「丸洗い」と「洗い張り」の違いとは?

着物の洗い張りは、着物が新品のようにキレイになるのが魅力と言えます。でも最近では洗い張りができるお店が少ないので、「洗い張りって何?」「料金は?」「丸洗いとは違うの?」等、洗い張りについてわからないことだらけ…という人の方が多いのではないでしょうか。

吉原ひとし
吉原ひとし
こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。ここでは着物の洗い張りについて、丸洗いとの違い、料金相場、お店の選び方等を着物のプロが詳しく解説していきます。

着物の洗い張りとはどんな洗い方?

着物の洗い張り(あらいはり)とは、着物の縫い糸をほどいてつなぎ直し、一回「反物(たんもの、布の状態)に戻してから水等で洗う方法です。平安時代の書物にもに「洗い張り」の方法が記録に残されており、日本の衣類のお手入れ方法としては、とても伝統的な方法のひとつと言えます。

洗い張りの手順

  1. 着物をほどいてバラバラの状態にします。
  2. パーツになっている布をつなぎなおし、一枚の布(反物)の状態に戻します。これを「端縫い(はぬい)」と言います。
  3. 水や水溶性の溶液を使い、布全体を職人が丁寧に洗っていきます。汚れの状態等によって、使う刷毛なども切り替えます。シルク等のデリケートな繊維が傷むことのないよう、使用する水の温度の調整、使用する液剤の調整等には経験が求められます。
  4. 洗い上げた布をピンと張り直し、乾燥させていきます。伸子張り、板張り等の方法がありますが、こちらも素材や状態等によって使い分けていくのが一般的です。
  5. 布全体に新しく糊(ノリ)を引いて、パリッとした状態に仕上げます。
  6. ゆっくりと時間をかけて乾燥させ、着物の繊維の状態を新品のようにふっくらと蘇らせていきます。
  7. 反物の状態でお客様にお渡しする場合には、ここまでの状態で完成・お渡しとなります。(例えばご自分で和裁をされる方の場合等ですね。)
  8. 着物としてもう一度着るけれど自分では縫わない、という場合には、業者側で「再仕立て」を行います。現在のお客様のサイズやご要望に合わせて、着物を縫い直すのです。(お仕立てのための料金は、洗張りとは別料金になります)

着物の丸洗いと洗い張りの違いは?

着物を全体的にクリーニングする時の方法としては、洗い張りの他に「丸洗い(きもの丸洗い)」があります。丸洗いがいわゆる「ドライクリーニング」で、洗い張りが「水洗い(ウェットクリーニング)」なのが、もっとも大きな違いです。

きもの丸洗い

「着物の丸洗いクリーニング」とは、石油系の溶剤を使って着物全体を洗浄する方法です。着物はほどかずに、丸のままで洗うので「丸洗い」と言います。洋服の場合の「ドライクリーニング」と考え方は同じです。

皮脂汚れやチリ・ホコリを落とす

一般的なお店の「きもの丸洗いクリーニング」で落ちる汚れは、最近付いたばかりの皮脂汚れや軽いメイク汚れ、全体的なチリ・ホコリ等の汚れ等です。石油系溶剤を使うので軽い油溶性の汚れは落とせますが、水性汚れ(お酒のシミ、お茶のシミ等)は落とし切ることができません。

部分的な汚れについては別途シミ抜き等で対処するか、症状によってはやはり洗い張りが必要になります。

定期的なお手入れ用のクリーニング

きもの丸洗いは、しばらく着物を着ることが無い時や、シーズン終わりの長期保管の前等に「定期的なお手入れ」として行うクリーニングです。冬の終わりにコートをしまう時にドライクリーニングに出すのと同じような感覚と考えて使うと良いでしょう。

着物の洗い張り

着物の洗い張り(あらいはり)は、上でも触れたとおり、着物をほどいてからつなぎ直して布の状態に戻し、水と水性用の洗剤等を用いて、徹底的に洗っていく方法です。

ガンコなシミや水性汚れを落とす

着物の洗い張りでは、水性の汚れや、カビによる汚れ、ガンコなシミ、広い範囲のシミ等、ドライクリーニングでは対処がしきれない様々な汚れを根こそぎ落としていくことができます。

着物を再生させたい時のクリーニング

「丸洗い」が時々行う定期的なお手入れだとしたら、「洗い張り」は着物の状態を完全にリセットさせるような方法です。汚れの状態の良くない着物、昔の着物、ニオイが気になる着物、作り直したい着物等をお手入れする時に向いています。

着物の洗い張りはどんな時に頼む?

着物クリーニング店が着物の「洗い張り」をおすすめするのは、次のような時です。

着物を仕立て直したい

着物のサイズを全体的に直したい時には、一度着物をほどいてから仕立て直すことになります。この時、一度洗張りをしてからのお仕立て直しを強くおすすめします。これは洗張りをすると繊維の状態が新品のようになり、ツヤ感・質感ともに美しい仕上がりとなるからです。

また洗張りをすることで繊維の歪みが取れ、正しい計測でのお仕立てができるというメリットもあります。例えば「娘や孫に着物を譲りたいけれど、身幅も丈も合わないし…」といった時には、洗張り+仕立て直しをするのがベストと言えるでしょう。

着物に広範囲のシミ・ガンコなシミがある

着物についた汚れやシミは、基本的には「シミ抜き」という部分洗浄で取り除いていくものです。しかしあまりにも汚れが広範囲に渡っていると、部分洗いでは対処ができなかったり、仕上がりがムラになってしまうおそれもあります。このような場合には、シミ抜きではなく「洗い張り」をおすすめすることが多いです。

縫い糸・縫い目が汚れている

着物に付いたシミ・汚れでも、特に問題となるのが「縫い目についている汚れ」です。縫い目にまで染み込んだ汚れはシミ抜きだけで落とし切ることができません。時間をかけてゆっくりと汚れが糸を劣化させ、着物のほつれ・破け等の原因となる恐れがあります。

そのため汚れが縫い目をまたいでいる場合や、シミが縫い糸にまで到達している場合等には、シミ抜き(部分洗浄)ではなく洗い張り → 仕立て直しで、縫い糸を全体的にお取替えした方が安心です。

着物のカビの状態が酷い

着物のカビについては、症状が初期で軽いものであれば、当店では「カビ取りクリーニング」と「シミ抜き」での対処をご案内しています。この組み合わせであれば着物をほどかずに対処できるからです。
しかしカビの状態が重く、次のような場合には、カビ取りクリーニングやシミ抜きだけでは対処ができない可能性が高くなります。

  • カビ症状の範囲が着物全体に行き渡っている
  • 縫い目にもカビ症状が見えている
  • カビによる変色が起きている 等

このような場合は洗い張りをして、カビ菌を根こそぎ駆除した方が安心です。カビ菌はご自宅では完全な駆除ができないため、何度でも再生をしてしまいます。キチンとカビ取りクリーニングまたは洗い張りで対処するようにしましょう。

着物の風合いを蘇らせたい

なんとなく着物の様子が「古く見える」「疲れて見える」ということはありませんか?着物は長く保管していると少しずつチリやホコリ等の細かな汚れが蓄積したり、着用によって繊維が潰れたりすることで風合いが劣化することがあります。

「洗い張り」はそのような時間経過によって失われたツヤ、風合いを取り戻すケア方法でもあるのです。お気に入りの着物が疲れて見えた時、洗い張りを検討してみてはいかがでしょうか。

着物の洗い張りはどこでできる?

「着物の洗い張りをしてみたい!でもどこのお店に頼めばいいのかわからない」そんな方も多いのではないでしょうか。洗い張りを依頼する時のお店選びのポイントについて解説します。

呉服店・百貨店

着物を販売している呉服店や百貨店(デパートの呉服コーナー等ですね)であれば、洗い張りを含む着物のメンテナンスの依頼ができるのが一般的です。ただし、お店によっては「その店舗で購入した着物に限る」といった制限がある場合もあるので事前に確認しておくと良いでしょう。

また、ほとんどの着物販売店舗では、着物のクリーニングやメンテナンス料金に紹介料・仲介料を乗せています。販売店自体が洗い張り作業を行うわけでなく、販売店を通して業者に渡すため、その分の手数料(マージン)が発生してしまうわけです。そのため、あくまでも一般的にですが、販売店での洗い張り料金は高い傾向が見られます。

悉皆屋

悉皆屋(しっかいや)というのは、着物のクリーニングやリペア等のお手入れを行う業者さんを取りまとめる専門店です。洗い張りはもちろん、一般的なクリーニングからシミ抜き、仕立て直し、染め直し等、幅広い対応を行っています。

ただ最近では呉服業界の縮小の結果、悉皆屋さんの数も少なくなりました。お近くに悉皆屋さんが無い、なかなか合うお店が見当たらないという方は珍しくないことでしょう。その点が問題ですね。

着物クリーニング店

最後に着物専門のクリーニング店についてです。着物専門のクリーニング店なら洗い張りできて当然!と思われそうですが、実はそうでもありません。ごくカンタンな機械洗いしかできなかったり、洗い張りの職人さんと繋がりが無くて難しいシミに対処ができないお店、実は結構多いのです。

「洗い張り」も視野に入れて着物のお手入れをしたい!という場合には、事前にお店の公式ホームページや問い合わせ等を使って、洗い張りの依頼ができるかどうか、確認をしておくことをオススメします。

ちなみに当店『着物ふじぜん』は着物のクリーニングやリペアの専門店ですから、もちろん洗い張りにも仕立て直しにも対応しています!宅配での対応もしていますので「近くに洗い張りができるお店がない」という時にはお気軽にご相談ください。

着物の洗い張りの料金はいくら位?相場は?

最後に着物の洗い張りにかかる料金について、相場や注意点を見ていきましょう。

着物洗い張りの料金は高め?

着物の洗い張りの料金相場は、着物の種類によって少しずつ変動します。また業者によって料金設定が大きく異るため、相場の開き(差)が大きいのも特徴です。

【洗い張り料金相場】

振袖の洗い張り料金相場15,000円~35,000円(税別)
留袖の洗い張り料金相場20,000円~40,000円(税別)
訪問着の洗い張り料金相場13,000円~33,000円(税別)
長襦袢の洗い張り料金相場10,000円~20,000円(税別)

着物をほどく・つなぐ・洗うという工程を手作業で行うため、一般的なクリーニングに比べると洗い張りの料金相場は高めになる傾向が見られます。また業者数が限られているため、着物丸洗いクリーニングのような、いわゆる「激安店」はほぼありません。

「縫直し」(仕立て)料金に注意!

着物洗い張りの料金を比較する際には、洗い張りに仕立て直し料金が含まれているかどうかをよく確認しましょう。一般的に、洗い張りは「反物の状態」が完成です。そのためもう一度着物として着るには、仕立て直しの料金を払い、着物に縫い直してもらう必要があります。

【仕立て直し料金相場】

振袖の仕立て直し料金相場55,000円~80,000円(税別)
留袖の仕立て直し料金相場60,000円~90,000円(税別)
訪問着の仕立て直し料金相場45,000円~70,000円(税別)
長襦袢の仕立て直し料金相場25,000円~40,000円(税別)

業者さんが「洗い張り」の料金として提示しているのが「洗い張りのみ(反物)」なのか、「仕立て直し込み」なのか、よく確認するようにしましょう。

わりに

今回は着物の「洗い張り」について、料金や注意点、丸洗いとの違い等をご紹介しました。着物の洗い張りは仕上がりが鮮やかで着物が新品のように蘇るのが大きな魅力です。しかしその反面、着物の洗い張りは料金がどうしても高くなるのが最大のデメリットと言えます。

「洗い張りしようか、どうしようか」と迷われる方も多いのではないでしょうか。当店『着物ふじぜん』では、着物をほどかずにシミや汚れを取る「シミ抜き」、着物をほどかずサイズを部分的にお直しする「サイズ直し」などもご用意しています。

いずれも着物の洗い張りに比べると価格も安めですし、気軽にご依頼いただけるのが魅力です。「今の自分の着物を洗い張りした方が良いのか、ほどかないで大丈夫なのか」がわからない時には、どうぞお気軽に当店までご相談ください!有資格者の着物専門士が、お客様の着物に最適なリペアプランをご提案します。ご相談は無料なので、迷った時にはお早めにどうぞ!

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吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし


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