赤ちゃんが無事生まれたことを産土神(氏神様)に感謝し、これからの無事を祈る行事である「お宮参り」。平安時代~鎌倉時代には定着したと言われる歴史ある行事ですが、近年では現代的な考え方に沿って、お宮参りのマナーやしきたりも少しずつ変化しています。
核家族化が進む現在、ご親族のお宮参り等を見る機会も減っていますし「お宮参りのマナーやしきたりがよくわからない」というご家庭も多いのではないでしょうか。
目次
お宮参りの服装のマナー
お宮参りは「赤ちゃんの無事と成長を祈るという正式な儀式です。ですから赤ちゃん本人はもちろん、一緒に参加する家族も「フォーマル服(礼服)」を着るのが鉄則と言えます。ただし、フォーマル服に対する考え方は昔と今で少しずつ変化しています。
お宮参り衣装の伝統的なしきたり
- 赤ちゃん:白羽二重に祝着(初着)
- 家族:女性は五つ紋の黒留袖、男性は黒紋付に羽織袴
昔のお宮参りは成人式や冠婚葬祭に匹敵する行事の扱いでした。そのためご家族も「最高格のフォーマル」である五つ紋の黒紋付を着るのが一般的だったのです。現在でも、「お宮参りは黒紋付五つ紋で行う地域は多々あります。
現代のお宮参りの服装マナー
- 赤ちゃん:白羽二重またはベビードレス+祝着(初着)
- 母親:和装 → 訪問着または付下げ等の略礼装
洋装→セミフォーマル向けワンピースまたはツーピース(ブラックフォーマルはNG) - 祖母:和装 → 一つ紋色無地、訪問着、一つ紋江戸小紋等の略礼装
洋装 → セミフォーマル向けワンピースまたはツーピース(ブラックフォーマルはNG) - 父親、祖父:和装 → 色物無地の着物に羽織(袴は無しでもOK)
洋装:ブラックスーツ(準礼装)またはブラックスーツ(略礼装)
現代のお宮参りは昔より少しくだけて「家族のイベント」という扱いになっています。そのため主役である赤ちゃんは最高格の純フォーマル服を着ますが、ご家族は脇役なので少し控えめな「準礼装」または「略礼装」を身につける地域が増えました。
準礼装・略礼装についてザックリした言い方では「子どもの入園式や卒業式に行く時のようなフォーマル」と考えていただくと良いでしょう。卒業式にブラックフォーマルを着る人はいませんよね。反対にジーンズやスニーカーなど、ラフな格好やカジュアル服で行くことや派手すぎる服がNGであることもわかるはずです。
お宮参りの参加者
お宮参りの参加者についても、今と昔では変化があります。
お宮参り参加者の伝統的なしきたり
- 父親
- 父方の祖母
- 父方の祖父
昔の「お宮参り」は、父方の家族による行事とする地域が多かったです。母親は産後の穢がまだ明けない時期であるとされ、不参加とする地域も珍しくありませんでした。
現代のお宮参りの参加者
- 父親
- 母親
- 父方祖父母
- 母方祖父母
- 親族(赤ちゃんにとっての伯父・叔母等)
現代ではお宮参りは「家族のイベント」という扱いになり、母親が参加をすることがごく一般的となりました。また父方祖父母のみならず母方祖父母が集まることも普通であり、その他お子様との縁が深い親族(父母の兄弟等)が集うケースも多く見られています。
反対にご夫婦と赤ちゃんだけでコンパクトにお宮参りを行うご家庭も増えてきました。よりお宮参りの自由度が高くなっていると言えそうです。
お宮参りで赤ちゃんを抱くのは誰?
お宮参りの祈祷時や記念撮影時、誰が赤ちゃんを抱っこするのか?こんな「しきたり」や「慣習」も、昔と今とでは変わってきています。
お宮参りの伝統的なしきたり
- 赤ちゃんは「父方の祖母」が抱く
上の「お宮参りの参加者」の項目で解説したように、お宮参りはかつて赤ちゃんの父親家族が主催する行事でした。そのため家族の中でも女系親族である「父方の祖母」が赤ちゃんを抱くのが習わしとされたのです。現在でもこの風習を継続している地域も多々あります。
お宮参りの現在の考え方
- 赤ちゃんは「母親」「父親」が抱く
現在では「お宮参り」は母親・父親両方の「家族のイベント」として考えられるようになりました。そのため祈祷時はもちろんのこと、写真撮影時等でも母親が赤ちゃんを抱っこするご家庭が増えてきています。
また祈祷時・写真撮影時以外では父親が母親に代わって赤ちゃん抱っこに参加し、出産間もない母親の体を労ることも重視されるようになりました。
お宮参りの祈祷の有無や謝礼について
「お宮参り」とは、縁のある神社や寺院に赴いてお詣りをすることを言います。さらに神社の奥に入り、神主さんに祝詞(のりと)をあげて貰うことを「祈祷(きとう)」と言います。
お宮参りの際に祈祷をするか、またその謝礼についてのマナー等も近年では少しずつ変わってきています。
お宮参りの伝統的なしきたり
- お宮参りの際には必ず「祈祷」をしていただく
- 祈祷料(初穂料・玉串料)は神社により大きく異る
- 必ず水引のついたのし袋に入れて謝礼をお渡しする
旧来のお宮参りでは、縁のある神社で必ず「祈祷」をあげてもらうことが「宮参り」とされてきました。またその際の謝礼金(玉串料・初穂料)は神社によって大きく異るため、相場を上げるのも難しいところがありました。
お宮参りの現代の考え方
- 「祈祷」をせずに「御参り」だけで済ませるご家庭もある
- 祈祷料の相場は5,000円~15,000円位
- 神社によっては祈祷前に受付で現金を直接集めるところも
現在ではお宮参りの際に祈祷を受けず、御参りだけして済ませるというご家庭も増えています。また祈祷料(初穂料)についても事前に公開してくれる神社が増え、おおまかな相場がわかるようになりました。(初穂料については神社の公式サイト等から事前確認しておきましょう。)
かつては初穂料は必ず熨斗袋に入れるものでしたが、現在では受付で直接料金を徴収する神社も登場しています。ただし集金方法は神社によって大きく違うので、この点についても事前確認をしておいた方が安心です。
お宮参りの一日の流れについて
お宮参りは神社に行ってお詣りをするだけのもの…というわけではありません。お詣りを済ませたその後の内容、ここが昔と現代では少しずつ変わってきています。
お宮参りの伝統的な一日の流れ
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近隣地域や親族等に挨拶まわりをする
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家族・親族との祝の膳を囲む
お宮参りをした赤ちゃんは「一人前」ということで、近所の人や親族達に顔見世をするために挨拶回りをするのが宮参り後の旧来の習慣でした。
現代のお宮参りの一日の流れ
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写真館やスタジオで写真撮影
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家族でのお祝いの会(食事会)等
現代では挨拶回り等は写真付きのはがきやメール等で済ませ、ご家族での写真撮影やお祝いパーティ等に力を入れるご家庭が主流となりつつあります。
お宮参りのマナー・しきたりの注意点
お宮参りのマナーやしきたりについては、以下の点に注意するようにしましょう。
地域性が大きい点には要注意
お宮参りは上でも解説したように「地域性」がとても大きい行事です。つまり「日本全国でこういうマナー」という統一ルールが決まっているわけではありません。地域によって根強い「ローカルルール」が残っているところがたくさんあります。
両家のご実家がある地域やお住いの地域によっては、今でも伝統的なしきたりに従ってお宮参りを行っている可能性はあります。ネット情報だけでなく、実際の「地域の風習」をよく確認しておきましょう。
両家の考え方をよくすり合わせる
お宮参りで大切なのは、父親家族・母親家族両方の考え方をよく擦り合わせておくということです。
- 神社はどこを選ぶのか
- 祈祷をするのかどうか
- お宮参りの参加者は誰なのか
- 祈祷時・撮影時に赤ちゃんを抱くのは誰か
- 一日の流れはどうするのか
- 食事会や祝の席の料金は誰がもつのか
このような点を当日になってから決めようとすると、ご家族同士での大きなトラブルになる原因となります。お宮参りのルールに「正解」はありません。事前に必ずご家族同士、父方母方祖父母の話もよく聞いて、皆様が納得いくように行事をすすめていきましょう。
おわりに
お宮参りのマナーとしきたりについては、繰り返しになりますが「地域性」による差がとても大きいという点に注意した方が良いです。大都市圏ではより利便性の高い方法が選ばれるようになっていますが、昔ながらの伝統的な風習を大切にしている地域もたくさんあります。
「これが常識」とお互いにルールを押し付け合うのではなく、譲れるところは譲り合って気持ちよくお宮詣りができるようにしたいですね。