着こなし・ハウツー

夏の着物の暑さ・汗対策は?涼しく着こなす6つのコツ

平均気温が年々上がっている日本の夏。「夏も着物でオシャレしたいけど、暑いから無理そう」「汗だくになって着物をダメにしてしまいそうだから、着るのが不安」こんな理由で夏の和装オシャレをするかどうか悩んでいる…という人もいるのではないでしょうか? 確かに夏着物や浴衣はその涼し気な見た目に反して空気が溜まりやすく、暑さや汗ジミに悩まされる人が少なくありません。

でも様々なポイントに気を配ることで、着物姿での快適さは大きく変わってくるんですよ。今回は夏の着物・浴衣オシャレを楽しみたい時に知っておきたい「着物の暑さ対策・汗対策」の6つのポイントをご紹介していきます。

 

1.「夏用の着物」を着て涼しく!

洋服には長袖・半袖・ノースリーブといった様々な形があり、「夏服・冬服」の違いがハッキリとわかりますね。これに対して和服は一見するとどれも同じ形なので、夏冬の違いがちっとも無いようにも見えます。でも実際には、7月・8月の盛夏に着るハッキリとした「夏用の着物」があるんです。昔から夏着物には、暑い時期にピッタリの素材や織り方がキチンと使われているんですよ。

絽の着物

絽(ろ)とは、縦糸を撚りながら横糸を入れて織った織物のこと。織り目が粗いので、熱や湿気をこもらせずに放出させることが得意です。今で言うシースルー素材のような透け感があり、見た目も涼しさが感じられます。絽の着物は、夏のフォーマルからセミフォーマルに使われます。

紗の着物

紗(しゃ)は、縦にも横にも撚りを入れて荒く織った織物です。こちらも放熱性に優れています。絽がフォーマルな雰囲気をあらわすのに対し、紗はややカジュアル寄り。主にセミフォーマルからカジュアルシーンに使われます。

麻の着物

洋服の場合にはリネンやジュート等と呼ばれる麻素材。熱伝導性に富んでおり、天然繊維の中では涼しさナンバーワンとも言われています。通気性に優れつつ水分の発散もスピーディーなので、いつでもサラリと着られるのが特徴。また生地にコシがあるので肌にくっつきにくく、ベタつかないのも魅力です。麻素材の場合には、透け感が無くても「夏物」扱いになります。

保温性の高い袷(あわせ)の着物に比べて、麻の単衣や絽の着物を着ると体感温度は3℃~5℃近くも下がるのだとか。夏の着物は見た目にも夏らしく爽やかというだけでなく、着る人も快適な着物なんですね。夏の着物オシャレを楽しむなら、涼しい夏着物を選びたいところです。

 

2.着付け前の一手間で、肌サッパリ&汗予防!

着物の汗対策・暑さ対策は、着付けをする前から始まっています。

着付け前にはエアコンを最強に

着付けをする部屋はエアコンをフル稼働させて、しっかりと冷やしておきましょう。着付けでは意外と汗をかきやすいもの。着付けの時に汗ばんでしまうと、その時に発生した湿気や熱が着物の中に残り、着ている間中抜けなくなってしまいます。着用後の不快感を上げないためにも、着る時にサッパリとした状態でいることが大切なんですね。洋服の場合ですと、夏場の冷房の設定温度は25℃~28℃前後に設定しますが、着物着付けの際には20℃前後に設定する方が多いです。

また夏場に美容院等の外出先で着付けをして貰う場合には、少し早めに美容院に到着しておき、イス等に腰掛けてさせてもらって一息つく時間を作りましょう。お店に到着した直後にはドッと汗をかきやすくなります。汗ばんだ状態で急いで着付けを行うと、着崩れも起きやすいもの。時間に余裕を見ることが大切です。

ベビーパウダーで肌をサラサラに

着物や浴衣を着る前には、できればシャワー等で汗を流しておきたいところ。でも「時間がなくてシャワーは無理」「汗で肌がベタついてしまってる」という時には、ベビーパウダー等で肌をサラッとさせておくのがオススメです。襟元・膝裏等にパウダーをはたいておくだけで、汗染みを作るのを防げます。パウダーをはたいた後には、粉が着物につかないようにティッシュやパフ等で丁寧に肌をぬぐっておきましょう。パウダー類をはたく時間が無い時には、消臭パウダーを含んだ体用のウェットティッシュでササッと体を拭っておくのも手です。

デオドラントスプレーで汗予防

ワキ等の汗を特にかきやすい箇所には、デオドラントスプレー(制汗剤)を一吹き!汗等の匂いが着物に移るのが不安な場合には、ミョウバン入りの制汗剤を使ってみましょう。

 

3.タオル&保冷剤で汗ジミをガード

和装の補正に欠かせないものと言えば「タオル」。バストやウエスト等に適宜巻くことで体の凹凸をなくし、着物を美しく見せるために使います。この「補正」をきちんとしておくと、着崩れもしにくくなるのですが…タオルやガーゼを使うことで汗ジミの予防をしたり、また体温を下げて涼しく過ごすこともできるんです。

【代表的なタオル補正】
1)ヒップ~ウエストの補正→フェイスタオルを折りたたんでヒップの上部分のくびれに当てて、腰紐で固定します。
2)襟元・胸元の補正→タオルの両端の三角に折り、更に中心で斜めに折って、肌襦袢の胸元のV字に合わせます。
3)みぞおちの補正→小さいタオルを三角に折って、バストの中心・下部分にあて、バスト→ウエストの流れがなめらかになるようにします。

薄手のガーゼタオルで「プチ補正」

補正を行うウエスト(帯周り)や胸元は、着物を着た時に特に汗をかきやすいポイントでもある部分です。「そこまで補正が必要ではない」という場合でも、気になる箇所には補正と同じ要領で薄いガーゼタオル等をあてておきましょう。

保冷剤を挟んでヒンヤリ

補正をする時に小さめの保冷剤を挟んでおくと、熱がこもるのを防いでくれます。食品用の保冷剤だと固形タイプなので使いづらいですから、冷えていてもゼリー状(ジェル状)をキープできるものがおすすめ。補正部のほか、帯下等に挟んでおいてもヒンヤリとして気持ちが良いです。ジェルタイプの保冷剤は、現在では100円均一ショップ等でも気軽に購入できます。

 

4.着付け用の小物でムレをスッキリ!

着物を着た時に特に暑くなってしまいがちなのが、帯周り。着物はウエスト部分におはしょりを作るのでそもそも熱がこもりやすいのですが、これに腰紐や帯・帯枕等が加わることで、熱が放出しにくくなり、余計に汗をかきやすくなってしまいます。少しでも快適に過ごすために、帯周りの小物類の素材を見直してみましょう。

へちまの帯枕・帯板

芯の部分が植物の「へちま」の果実でできている帯枕や帯板です。「へちま」は大きなきゅうりのような形をしているのですが、乾燥させると種の周辺びっしりと繊維が支えた空洞だらけとなるため、「たわし」等の用途にもよく使われています。空洞が多い分だけ空気をよく通すので、昔から夏用の帯枕として愛用される伝統的な存在となっています。軽いですがしっかりとしており、帯の形も比較的固定しやすいです。

メッシュ素材の帯板・帯枕

より軽く使い勝手をアップさせたものとしては、化学繊維等のメッシュ素材で作られた帯板・帯枕が挙げられます。帯板は柔軟性が高く、着心地もラクなのが特徴です。ただ通常の帯板に比べてしなりやすいので、帯締めの締め方・帯の素材によってはシワが寄ることもあります。

麻素材の腰紐

肌着類と一緒に、腰紐も麻素材に切り替えてみるのはオススメ。湿気を放出する働きを持つ麻を選ぶことで、ウエストまわりの湿気によるストレスが軽減できます。使い始めには麻の固さがありますが、使っては洗うことで徐々に柔らかく、使いやすくなっていきます。麻は滑りにくいので、着崩れしにくいのも魅力です。

 

5.ラクで涼しい着付けのテクニック

デートやお友達どうしでのお出かけといったカジュアルシーンで着物を着るのであれば、より「ラクで涼しい着付け」を選んでしまうというのも手です。

名古屋帯で帯枕フリー!

「帯枕は絶対しなくてはいけないもの」と思いこんでいませんか?例えば名古屋帯で作れる「姉さん結び」や「本角出し」等であれば、帯枕無しでも素敵な着物オシャレを楽しめます。帯枕をひとつ外すだけでも、背中まわりがかなり涼しくなります。

伊達締めを抜いてしまう方法も

伊達締め(だてじめ)とは、腰紐を巻いた上に更に巻く、細い帯状の紐のこと。襟元や胴の着崩れを防ぐために使います。しかし通常だと長襦袢で一本、更に着物で一本使うので、こちらもかなり空気をこもらせてしまいがちな存在です。

気楽にお着物を着る時には、帯をしっかりと締めた後で着物の伊達締めを抜いてしまうのも手。帯の素材がかっちりとしたものであれば、そこまで大きな着崩れにはなりません。伊達締めを一本外すだけで胸元~ウエスト部がかなり涼しくなりますし、着心地もラクになるんですよ。伊達締めは両脇の部分を持って軽く引き上げると、意外とカンタンに引き抜くことができます。

ただし着物初心者の方、着付けにまだ慣れていない方の場合、この方法は着崩れを起こしやすいのでおすすめできません。また結婚式の留袖・式典の訪問着といったフォーマルシーンでは、万一の着崩れを防止するためにもキチンと伊達締めをしておいた方が安心です。そんな時には伊達締めをメッシュ製のマジックベルト式に切り替えると、かなり涼しさがアップしますよ。

 

6.暑さ対策の小物類も忘れずに

夏の着物でのお出かけの時には、洋服のときよりも「涼しさキープ対策グッズ」をキチンと持ち歩くことが大切!後から「アレが無い、コレが無い」と慌てないように、着付け前までにはしっかり準備をしておきたいですね。

扇子

和扇子
現在では洋装の時にも使われることが増えた「扇子(センス)」ですが、和装の時に扇子を使えばオシャレ的にも実用的にもピッタリ!紙製・布製共に良いものではありますが、紙製のものの方がしっかりと空気を捕まえることができます。そのため「風の量を多く出したい(=しっかり扇ぎたい)」という時や汗かきさんには、紙製の扇子の方がおすすめです。扇子の色味や絵柄を着物に合わせれば、更にオシャレ感をアップできますね。

なお「別物」として気をつけておきたいのが、結婚式の第一礼装(留袖等)に刺す扇子。こちらは「末広(すえひろ)」や「祝儀扇(しゅうぎせん)と言い、実用性のある他の扇子とは違うあくまでも「儀礼的な扇子」です。暑いからといって、結婚式に末広でパタパタと扇ぐのは絶対NGですから、気をつけましょう。

日傘

日傘
日傘は適切なものを選ぶことで、体感温度を-10℃以上も下げると言う強力なアイテム。着物を着ている時にはできるだけ暑い直射日光に当たるのを避け、日傘でしっかりとガードをすることが大切です。

洋服の時のUV対策ですと「黒の日傘一択!」という方が多いようですが、せっかくの和装の時にはオシャレさも大切にしたいですね。麻の日傘等を添えれば上品なコーディネートになりますし、レトロ柄やレースのもの等は最近はやりのレトロな着こなしにもよく似合います。

 

おわりに

暑さ・汗を防いで涼しく着物を楽しむコツはいかがでしたか?ひとつひとつは小さな変更ではありますが、これらが合わさると体感温度や快適さにはかなりの違いが出てきます。温泉旅館や料亭の女将さんといった着物慣れをしている人たちも、実はこのような「涼しく着物を着るテクニック」を上手に使っているんですよ。涼しく着物を着るテクニックを使いこなして、夏の着物オシャレをどんどん楽しんでいきましょう。

また肌襦袢・長襦袢といった着物用の下着・肌着類(インナー)を見直すことで、夏の着物はより涼しく着ることができます。夏の着物のインナー選びについても本コラムで詳しくご紹介しているので、合わせて参考にしてみてくださいね。

関連記事

吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし


着物の染み抜きやお直しをする場合、加工内容や料金は検討がつかないと思います。お近くに専門店があれば安心ですがシミや汚れを見てもらったが、無理だと言われ諦めてしまう方が多いのです。遠方にお住まいの方はお電話又はメールでご相談いただければ、無料にてアドバイスさせていただきます。クリーニングやお直し以外でも着物の事ならお気軽にご連絡ください。 初めてご訪問の方へ

染み抜き

LINE@

最近の記事

  1. 着物シミ抜き料金相場+相場だけで決めるとソンする4つの理由

  2. 【プロが解説】重ね襟・伊達襟とは?基本マナーから応用までよくある疑問を解説

  3. プロが解説!結婚式の半襟マナー

  4. 【プロが解説】着物男子の結婚式・披露宴の服装は?よくある疑問Q&A

  5. 【プロ解説】着物にウイスキー・ブランデーのシミ!対処法や落とし方の正解とは

TOP