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着物の「洗い張り」とは?詳しい方法や価格の注意点を紹介!

反物

着物を洗う方法には、大きく分けて「洗い張り」と「丸洗い」の2種類があります。このうち洗い張り(あらいばり・あらいはり)とは、着物の縫い糸をほどいて反物(たんもの)の状態に戻し、水洗いをして着物をキレイにする方法です。平安時代頃には既にこのやり方で洗濯が行われていたとも言われるほどの伝統的な洗濯方法なんですよ。かつては各家庭で着物を年に何度か「洗張り」をしてから仕立て(再仕立て)を行い、時には別の着物として作り直したり、最後は座布団や布団等としてリメイク・リサイクルしていました。

現在でも「洗い張り」は悉皆屋(しっかいや)や和装クリーニング店等、専門知識・技術を持った専門業者で行われています。「娘に着物を譲りたいけれど、古いしサイズも合わないし無理かも…」そう思ってしまいこんでいた着物も、「洗い張り」で鮮やかに蘇らせることができるんですよ。ただ最近では、「料金が安いから」と頼んだ洗い張り業者でのトラブル、着物の洗い張りを自分でやって失敗…といったケースも見られているようです。今回は「洗い張り」の詳しい手順や注意点についてご紹介していきます。

 

洗い張りの方法とは?詳しい手順

洗い張りのやり方は、ざっくりと言えば「ほどいて、洗って、張る」というもの。そもそも「洗い張り」という言葉自体が、「反物の状態にした生地を洗う(=洗う)」+「生地をピンと張って歪みを直す(=張る)」という2つのプロセスから生まれている言葉なんですね。ただこの説明だけだと、何をどうやって洗っているのかちょっとピンと来ない…という人も多いことでしょう。まずは「洗張り」の詳しいやり方をわかりやすく説明していきます。

1)着物の状態チェック
まずは着物をほどいてしまう前に、着物の状態を丹念にチェックしていきます。

・生地の素材、染色の確認
・生地に痛みは無いか、傷んでいるポイントはどこか
・汚れはどこにあるか、汚れの種類はなにか
・刺繍に歪みや色落ち等が起きていないか 等

着物の状態によっては、無理に洗張りを行うことで傷みが促進してしまうことも考えられます。そのため事前の入念なチェックを行うことはとても重要です。

2)着物をほどく
着物の縫い目の糸を全て取り、身頃・袖といった各パーツの状態に戻します。ごく小さな糸目までも全てチェックして外していく必要があるので、なかなか時間と手間がかかる作業です。「ほどくだけ」と言うと簡単そうですが、無理な作業を行うと着物の生地を傷ませてしまう可能性も。丁寧に作業を進めていく必要があります。

3)端縫いをする
端縫い(ハヌイ)とは、ほどいたパーツを縫い合わせ、反物(=生地)の状態に戻すことを指します。パーツの「端(はし)」と「端」を縫い合わせるから「端縫い(はぬい)」と言うわけですね。ハヌイはかつては手縫いでざっくりと行うことが多かったのですが、最近ではハヌイ用の専用ミシンを使う業者も増えています。また着物の素材等によって、手縫い・機械縫いを使い分けることもあります。

4)反物を洗う
反物の状態になった着物を、水洗い(お湯洗い)によって一枚一枚手作業で洗っていきます。もちろんお水だけを使うわけではなく、洗剤・石けん等も使用しますし、汚れをキレイに取るためのたわし・刷毛(ハケ)等も使います。使用する洗剤やブラシ・たわし等の種類は、業者によりマチマチなので、一概に「洗い張りではこの洗剤を使用している!」とは言えないところです。また当然のことですが、生地の素材や厚み・状態等によっても、使用洗剤や洗濯用のブラシ・ハケの種類は変わります。

着物の生地に使われている正絹(シルク)などの素材は、デリケートで縮みやすいものが多いです。そのため洗い張りをする職人は、素材や汚れの状態に合わせて使用するお湯の温度を微妙に調整したり、洗い加減を微調整して「ベストな状態」に近づけていきます。

5)つなぎ直しをする
洗い終わったら縫い合わせをほどくか、張りの工程時の適切な幅に合わせて縫い合わせます(張りの方法によっても、縫い合わせの有無等は変わります)。洗い作業によってほつれ等が起きた場合には再度ハヌイを行って、補強をしておきます。

6)張りを行う
「張り/張物(はりもの)」とは、洗った反物のを張って乾燥させる「仕上げ」の工程を指します。「張り」の方法は素材によっても異なります。

伸子張り(しんしばり)

紬等に使用される「張り」の方法です。伸子(しんし)とは、細い竹の先に針が付いたもののこと。伸子張りではこの「伸子」を1反あたり400本~600本程度並べた上に反物を張ります。竹という伸縮性のある素材が反物を穏やかに伸ばし、繊維をハリのある状態へと戻していくのです。

板張り(いたばり)

木綿(コットン)、レーヨン等に用いられることが多い「張り」の方法です。伸子とは異なり「板」を使って反物を伸ばしていきます。

湯のし(ゆのし)

湯のしとは、蒸気をあてて反物を柔らかくしてから、シワを伸ばして反物の幅を整えていく方法です。縮緬等の一部素材では、伸子張り等を使用せずに「湯のし」で仕上げを行います。湯のし専用の機械を使う業者が多いです。

7)糊を引く(糊入れ)
新しい生地には糊(ノリ・布糊)がかかっていてパリッとしていますよね。しかしノリは着用するにつれて徐々に剥がれていき、洗い張りの「洗い」の工程でほとんどが落とされてしまいます。そのため「伸子張り」「板張り」等の張り工程では、張っている反物のに新たに糊を引いていくのです。この工程は「糊入れ(のりいれ)」と呼ばれます。

糊は多く塗れば良いというものではなく、ベストな量や濃さはその反物の素材、厚み等によっても変わるほか、作業をする季節等によっても変動します。糊入れを行う職人達は、一枚一枚の反物の状態に合わせ、微妙な調整を行いながら糊入れをしていきます。なお「湯のし」では糊入れ工程は行わないのが一般的です。

8)乾燥させる
糊入れをした反物は、ゆっくりと時間をかけて乾燥させます。乾燥の過程で反物に残った細かな小じわも消え、ノリがしっかりと定着することで艶やかさが増します。

9)反物の状態での仕上げ
反物の状態でのお渡しの場合には、反物を畳んで糸で綴じ、お仕上げをしてのお渡しとなります。

10)再仕立て
再仕立てをご要望の場合には、反物の状態からのお仕立てが行われます。サイズ変更等の他、洗い張り前とは異なるもの(着物→コートにリメイク、着物→帯にリメイク等)に仕立てることも可能です。

 

「仕立て」は含まない?洗い張りの料金・値段を見る時の注意点

「洗い張り」の手順を読んで「反物の状態で渡すってどういうこと? クリーニングの筈なのに!」と、ビックリした人も多いのではないでしょうか。「1万円以上払ってクリーニングを頼んだら、反物の状態で戻ってきた。これってどういうこと!?」と怒ってしまう人もいるんだとか。実は「洗い張り」とは元々、「反物の状態でお客様に渡す」というものなんです。

上記でご紹介したとおり、「洗い張り」とは「洗って、張る(反物をピント張って仕上げる」)」という工程を意味するもの。「仕立てる(着物の状態に縫う)」のは別ですよ、ということなんですね。これはどうしてなんでしょうか?

かつての日本では、着物を縫う(和裁)は、女性たちの常識的な技術となっていました。そもそも現代のように、既製服がどこでも安く買えるという時代ではありません。昭和の頃まで「家族の着物は家で縫う」というのは、割と「普通のこと」だったんですね。

「長い反物を洗ったり、糊を引くのは場所も道具も無いし、ちょっと無理。でも反物を着物に仕立てることならできる」という方が多かったわけです。この場合、業者側は「洗い張り」までをして、反物でお渡しをすればよかったわけですね。また当時の「洗い張り」は染物屋の範疇の仕事とされており、「反物の状態で渡すのが染物屋、仕立ては別の仕立て屋に頼む」といったケースも見られていました。

そのため、現在でも「洗い張り」の料金は「反物の状態で渡すところまで」としている業者がとても多いです。反物の状態からまた着物に仕立てる場合には、別途「仕立て料金」が発生します。

<<例:振袖を洗い張りして再度使う場合>>
洗い張りの料金(反物の状態に戻して洗い、反物状態でのお渡し):12,000円
再仕立て(振袖にもう一度仕立てる料金):50000円
→振袖として再度着るには、合計62,000円が必要

「洗い張りの料金」「洗い張りの相場」をお調べになっている方の中で、この点の誤解がとても多いようです。なお最近では、「洗い張り→仕立直し」までをセットとして料金設定している業者も増えています。洗い張りの料金を確認する時には、仕立ての料金が入っているのかいないのかをよくチェックしましょう。

 

着物の洗い張りは自分でできる?

着物の洗い張りは、その工程のほとんどが手作業であり、ひとつひとつが手間のかかる仕事です。洗い張りの後に「再仕立て(仕立直し)」も行う場合、1枚あたりの工期は1ヶ月~2ヶ月程度はかかってしまいます。そのため洗い張りの料金は着物丸洗い(ドライクリーニング)に比べると、どうしても高くなりがち。「着物の洗い張りが群を抜いて安い業者」というのは、残念ながらあまりありません。

そのため、中には「クリーニング代を抑えるために、着物の洗い張りを自分でしたい」と考える方もいらっしゃるようです。確かに着物の洗い張りは、江戸時代等には各家庭での洗濯方法としても用いられるものでした。そのため洗い張り=絶対に自分ではできない、というものではないのですが… ご自宅での洗い張りは、あまりおすすめすることができません。それには以下のような理由があります。

和裁技術が無いと失敗する

着物の洗い張りをする上では、和裁の専門技術・知識は必須となります。「ほどいてつなぐくらいなら…」と無理に着物をほどいた結果着物を傷ませてしまったり、反物の状態に戻せず、端を傷ませた状態で諦めて持ち込んだら業者に断られてしまった…というケースも見られているようです。ちなみに「ほどいた着物」を持ち込んでも、その分のクリーニング料金を割安にする業者はほとんどありません。

生地を縮めてしまいやすい

洗い張りでのもっとも大きな失敗としては、「生地が縮んで戻らない」というものが挙げられます。一般家庭で洗える着物(ウォッシャブル着物)を除くと、一般的な着物の生地はいずれも非常に縮みやすいものばかりです。例えば綿・麻といった洋服では洗うことのある素材でも、織り方等によって7%~8%近くも縮んでしまうというケースは多々あります。8%といえば、1メートルに対して8センチ!この収縮によって柄が歪んでしまうことも多いのです。

プロによる洗い張りでは、このような生地の縮みが起こらないよう、繊細な作業が行われています。また「洗い」の工程で生まれた縮みを「張り」によって戻すといった技術も、プロならではのものです。

なお、ご家庭での洗濯で既に生地を縮ませてしまった場合、プロの洗い張り業者でも生地の状態を元に戻すことは非常に難しくなります。

汚れがキレイに落ちていない

せっかく一生懸命に着物を解いて洗っても、汚れが落ちきっていなかったら意味がありませんよね。洗い張りを行う専門店では、各素材に合わせた専用の洗剤やブラシが使われています。着物の汚れをしっかり落とすには、洗い張りの道具を揃えることがまず大切なんです。

ご家庭での一般的な洗剤等の場合、生地を傷ませる恐れがあるだけでなく、油溶性等のしつこい汚れが残ってしまう恐れも考えられます。「洗ったつもり」で残った汚れが、変色やカビ等の原因となってしまうこともあるのです。

 

おわりに

着物を反物の状態に戻す「洗い張り」では、再仕立てをする際にお着物を新たな形に蘇らせることができるのが大きな魅力です。例えば、お母様から娘様に着物を譲る時に、娘様のお体に合わせたサイズに身丈や裄丈を変更する。「年齢に合わなくなったから」と感じていた着物を帯に仕立て直して、コーディネートのポイントにする。

昔の振袖を訪問着に直して、着用するシーンを増やす…こんな様々な方法で、昔の着物がまた活躍できるようになります。また袖を通してから一度も洗っていないお着物、丸洗いでは汚れが取り切れなかったお着物等があったら、一度「洗い張り」を試してみてはいかがでしょうか。新品のようなツヤを取り戻した着物を見て、「もっと着物のオシャレを楽しもう!」という気持ちも強くなるはずですよ。

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