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着物の収納にプラスチックケースはNG?メリット・デメリットを解説

着物の収納には様々な方法がありますが、プラスチックケースを使っているという人も多いはず。でも着物好きさんの中では「着物収納にプラスチックケースは良くない」といった説もありますね。実際のところ、着物収納にプラスチックケースを使うのはどうなのでしょうか?

吉原ひとし
吉原ひとし
こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。ここでは着物の収納にプラスチックケースを使うメリットとデメリットを詳しく解説していきます。

着物収納にプラスチックケースを使うメリット

まずは着物収納にプラスチックケースを使うメリットについて見ていきます。

コストが安い

着物収納にプラケースを使う最大のメリットと言えば、価格帯のやすさが挙げられるでしょう。桐たんすや桐の衣装箱等だと安くても数万円以上のコストがかかりますが、プラスチックケース収納であれば数百円程度から購入ができます。

たくさん揃えやすい

プラスチックケースは価格帯が安い分だけ、たくさん揃えて買うことができるのも魅力です。「アンティーク着物をたくさん買って、どんどん増えていく」という人等だと、物量に気軽に対策できるプラスチックケース収納は助かりますね。

選択肢が広い

衣類収納用のプラスチックケースは、ホームセンターからインテリアショップ、無印良品のようなお店まで、様々な店舗で販売されています。オーソドックスなフタ箱のタイプから引き出しタイプまで、デザインや大きさも様々。ご自宅の収納場所の大きさに合わせて、好みの製品が選べるのもプラスチックケースの魅力です。

軽くて持ち運びやすい

衣類収納用のプラスチックケースは、製品自体が軽いです。もちろん大きな箱にたっぷりと着物を詰め込めば重くはなりますが、桐箱等の他の収納道具に比べれば運びやすい方と言えます。

薄め・小さめのプラスチックケースを選ぶようにすれば、引越や模様替え等での移動もカンタンに行うことができますね。

着物収納にプラスチックケースを使うデメリット

安さや気軽さが大きな魅力となっているプラスチックケースの着物収納ですが、気になるデメリットはどうなのでしょうか。

通気性が悪い

プラスチックケース収納の最大の問題点といえるのが、湿気の溜め込みやすさです。それでなくても現代の日本の家屋は、昔の木造住宅に比べて密閉性が高く、湿気を取り込みやすい傾向があります。

そのクローゼット等にプラスチックケース収納をすれば、一度入り込んだ湿気はなかなか出ていってくれません。つまり「着物の保管中に、繊維の中が湿りやすくなる」というのが問題です。

カビや虫害のリスクがUP

着物に湿気が溜まって何が問題なのか?というと、一番のリスクが「カビ菌の発生」です。カビは一度発生すると、ご自宅でのケアでは除去することができません。一枚でも着物にカビ菌が発生すると、ケース内の他の着物にカビが移るというのも問題です。

また湿気がこもりやすい環境は、虫食いの原因であるヒメマルカツオブシムシ等の好む環境でもあります。着物を保管している間に、ウールやシルクの着物が虫食いにあってしまった……プラスチックケースでの収納は、このようなリスクを高める危険性もあるのです。

換気と吸湿剤交換の手間がかかる

プラスチックケースでの収納では、通常に比べて換気やメンテナンスに細かく気を配る必要があります。詳しくは次の項目で説明しますが、その他の収納法に比べると手間がかかる収納であると言えるでしょう。

着物収納にプラスチックケースを使う場合の注意点

着物収納にプラスチックケースを使うメリット・デメリットを比べていくと、「これから着物の収納用品を購入する!」という方には
あまりおすすめができない収納法である…と言わざるをえないところがあります。

ただ「いまプラスチック収納をしている」という方も多いでしょうし、「なんとかデメリットを克服したい」という人も居るはず。着物収納にプラスチックケースを使う場合、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。

月に1~2回は換気する

着物をプラスチックケースで収納・管理する場合、まず何よりも大切なのが「換気」です。引き出しを開けたり、プラスチックケースのフタをとって空気にさらすことは習慣づけておくことを強くおすすめします。

乾燥している時期であれば、窓を開けて換気をするのが一番。湿気が気になる季節であったり、前日に雨だった…というような場合には、エアコンの除湿機能でしっかりと除湿をしておきましょう。扇風機でクローゼットの中に空気を送り、換気をするのも良い手です。

カンタンな換気の習慣は、月に1~2回程度は行っておくと良いでしょう。

通常より頻繁に虫干しする

虫干し(陰干し)」とは着物を広げて専用のハンガーか物干しにかけ、直射日光を避けて干すことを言います。着物の繊維の奥に溜まってしまった湿気を取り除き、虫害やカビ等のリスクを下げるのが目的のケア方法です。

「虫干し(陰干し)」は、桐たんす等での収納ですと年に2回程度の頻度で行うのが理想的とされています。しかしプラスチックケースでの着物収納だと湿気がこもりやすいので、もう少し頻度を上げた方が良いです。できればワンシーズンに1回、着物の虫干しを行うことをおすすめします。

着物の虫干しの方法や注意点については、以下のブログでも詳しくご案内しています。あわせて参考にしてみてくださいね。

吸湿剤をこまめに交換する

着物の収納では、引き出しの中やクローゼットの中に吸湿剤(湿気取り)を入れておくことが大切です。湿気によるトラブルを最大限に抑えるために、置型タイプの湿気取りに加えて、シートタイプのものをタトウ紙の中に入れることをおすすめしています。

この吸湿剤の交換頻度は、収納箱の中にどれだけ湿気が溜まりやすいかで変わります。金属でできた古い衣装箱や桐の衣装箱等だと、吸湿剤に水が溜まりにくく、半年くらいは交換しなくて大丈夫ということも多いです。

しかしプラスチックケースによる着物収納だと、2~3ヶ月程度で吸湿剤に水がたまりすぎてしまい、吸湿作用がなくなっていることも。換気や虫干しの際には吸湿剤の様子をこまめにチェックして、早め早めに湿気取りを取り替えるようにしましょう。

大切で高価な着物の収納は避ける

ひとくちに「着物」と言っても、そこには様々なランクや価格があります。特に最近では、古着屋さんやネットのフリーマーケットで数千円程度で着物が買えることも増えましたね。

例えばポリエステル着物であれば、お手入れもカンタンですし、プラスチックケース収納で気軽に保管しておくこともできることでしょう。

しかし例えば正絹(シルク100%)の振袖や留袖、訪問着、喪服着物等のフォーマル着物をプラスチックケースで長期間収納・保管するのは、できたら避けた方が安心です。礼装着物にカビや虫食い等のトラブルが起きてしまうと、それに対処するメンテナンスにもそれなりに高い料金がかかります。また最悪の場合、専門店でも直せないレベルのトラブルが起きてしまう可能性もあるのです。

着物の種類ごとに保管方法を分けて、高価な着物は桐箱や不織布ケース等を選ぶようにする…というのもひとつの手ですよ。

おわりに

着物収納にプラスチックケースを使うメリット・デメリットについて解説しましたが、「意外とデメリットが多いな…」と思った方も多いかもしれませんね。

現在の日本の家屋は本当に湿気を溜め込みやすいです。また洋服がシーズンレスになったことで「衣替え」の習慣が少なくなり、余計にクローゼットの換気の回数が減っていることも指摘されています。

着物は「湿気」によるトラブルがとても多い衣類です。プラスチックケースは湿気から着物を守るのが苦手な収納法なので、注意点を踏まえて、お手入れに気を配るようにしてくださいね。

また高価で大切な着物については、プロによる「お預かりサービス(保管サービス)」を使うのも手です。当店『着物ふじぜん』でも着物お預かりサービスを行っていますので、着物の保管にお困りの時にはお気軽にご相談ください!

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吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし


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