訪問着はフォーマルな場所や観劇・パーテイー等、幅広いシーンで着用できる着物です。着物はあまり持っていないけれど訪問着は持っている…という人も多いのではないでしょうか。
大切な訪問着をキチンと保管しておきたい人、保管中の訪問着のカビや虫食い・変色等のトラブルを防ぎたい人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
汗をかいたら訪問着を汗取り
訪問着を着た時に汗をたくさんかいていたら、着用後に「汗取り」のお手入れをしておきましょう。
ご家庭でできる汗取り
用意するもの
- タオル2~3枚(柔らかく、色が白等の薄いもの)
- 着物用のハンガー
- 柔らかいタオルを水で濡らします
- タオルをギュッと固くしっかり絞ります
- 訪問着を裏側を上にして広げます
- ワキ、背中等、汗をかいた場所をタオルで軽く叩きます
- 乾いた別のタオルで同じ部分を優しく叩き、水分を取ります
- 着物用ハンガーにかけ、直射日光をさけてよく乾かします
注意点
- 素材によっては水に極端に弱く、水シミ等ができやすい訪問着があります。タオルはできるだけ固く絞り、水分を残さないようにしましょう。
- 「霧吹きで水をかける」等の方法ができるは、原則として「洗える訪問着」のみです。水洗いができるタイプの訪問着なのかどうかは、メーカーや制作元に確認しましょう。
訪問着の陰干しで湿気を飛ばす
訪問着の着用後のお手入れの基本が「陰干し」です。着用時にこもった湿気をきちんと飛ばしてから保管することで、「カビ」「虫害」等のリスクを下げます。
用意するもの
- 着物用のハンガー(物干しでも代用可)
- 直射日光が当たらず、風通しの良い場所を選びます
- 訪問着を着物用ハンガーにかけて、形を整えます
- 半日~数日程度、空気にさらします
注意点
- 太陽の光はガラス越しでも訪問着を日焼けさせます。室内で陰干しする場合でも、直射日光のさしこむ場所は避けましょう。
- 湿気がある日の場合はエアコン・除湿機等で除湿してください。
- 訪問着のハンガーはできるだけ高い位置にかけ、訪問着の裾がまっすぐに整う状態で干します。裾がたるんだ状態にしているのはシワの元です。
訪問着のクリーニング頻度
訪問着のクリーニング頻度については、個人によってお考えが違うところもありますが、基本的に次のような点を目安にすると良いでしょう。
シーズン内に着用予定がある場合
シーズンのうちに訪問着を再び着る予定があり、今のところ特に目立つシミ汚れが無い…ということであれば、上の「汗取り」と「陰干し」のお手入れだけで保管しておいて大丈夫です。クリーニング無しで、次回に着ていただけます。
訪問着の着用予定が無い場合
訪問着の次の着用予定が無い場合には、クリーニングでのお手入れをおすすめします。特に「ふだん着物をほとんど着ない」という方の場合、訪問着の保管期間が数年以上となるケースが多いです。
長期の保管中に汗・皮脂等の成分が酸化し、変色を起こす恐れもあります。専門店の「丸洗いクリーニング」や「汗取りクリーニング」で、訪問着をスッキリとさせておきましょう。
訪問着にシミ・汚れがある場合
訪問着にシミや汚れがある場合は、そのまま保管してはいけません。できるだけ早く専門店でシミ抜きしてもらいましょう。
訪問着を保管する場所・保管アイテム
桐たんす 着物用 7段 幅100cm 高さ93cm ストッパーキャスター付 肥前桐民芸 日本製
訪問着の保管場所や保管するアイテムについて知っておきましょう。
保管は桐タンスや木製箱が最適
訪問着等の着物の保管にもっとも適しているのは、桐たんす等の木製タンスです。また桐箱等、木製の衣装箱(いしょうばこ)をクローゼットに置いているという人も居ます。
木製のタンスや箱は通気性が良いので、中の着物がカビにくいのが魅力。これから着物を増やしていくご予定があるのならば、桐の保管アイテムをご購入されるのがおすすめです。
プラ箱保管は防湿に注意
プラスチックの衣装ケースに訪問着を保管している…という方も居るのではないでしょうか。プラスチックは通気性が良くないので、どうしても湿気が溜まってしまいがちです。
カビ・虫害等の発生率は、上の桐タンス等に比べると格段に高いと考えてください。特に防湿剤(湿気取り)は多めに入れて、頻繁に交換することをおすすめします。
また箱を開けて行う、定期的なお手入れ(虫干し)の回数も増やした方が良いです。一般的に虫干しは年2回程度とされていますが、年3回以上のペースをおすすめします。
風通しの良い場所で保管を
どんなに上等な桐たんすで訪問着を保管していても、タンスの設置場所が「湿気の多い場所」では意味がありません。なるべく通気性の良い場所にタンスを置きましょう。
一戸建てにお住まいの場合、基本的には二階以上の方が通気性は良いです。またキッチンやお風呂等、水回りのある場所からは離して設置することを強くおすすめします。
衣装部屋やウォークインクローゼット等の場合には、2~3日に一度はドアや窓を開けて空気を入れ替える習慣を付けましょう。
引き出しなら上の方に保管
タンスに訪問着をしまう場合、引き出しは「上の方」を選ぶのをおすすめします。上の方が湿気が溜まりにくいからです。
訪問着は礼装にも使える『フォーマル着物』である分だけ、着用回数が比較的少ないものです。反対に小紋等の普段着着物は、街着として気楽に着るので、登場回数が多い傾向があります。
「普段着としてよく着る着物や衣類」を引き出しの下に入れておけば、通気性は今ひとつでもよく引き出しを開け締めするので、空気が溜まりにくくなります。
反対に「ちょっと着ることが少ない着物」を上の方にしまっておくことで空気がたまるのを防ぎ、カビ等の発生を抑えよう!というのがこの保管方法の狙いです。
とは言え、引き出しを長いこと閉めっぱなしでいるのはよくありません。定期的に引き出しをあけて部屋の窓もあけ、空気を交換するようにしてくださいね。
防虫と防湿で訪問着を守る
訪問着の保管では「防虫」と「防湿」が重要になります。
虫食いトラブルを防ごう
フォーマル着物である訪問着は、その多くが正絹(シルク)で作られています。また夏用訪問着でも麻等の天然素材であることが多いですね。
シルクは繊維が細く柔らかいので、ヒメマルカツオブシムシ等の幼虫が好んで食べます。訪問着を保管しておいたのに、出してみたら虫食いの跡だらけ…こうなってしまっては大変です。
訪問着を保管する引き出しや衣装箱、タトウ紙の中には、必ず「防虫剤」を入れておきましょう。防虫剤製品には様々なものがありますが、「着物対応」「着物専用」と書いてあるものが理想的。金糸・銀糸等の変色リスクが無く、安心して使用できます。
またクローゼットの中で使う防虫剤は同じ種類で揃えるようにしてください。
カビのトラブルを防ごう
繊細な訪問着には「カビ」も生えやすいです。一度カビ菌が生えてしまうと専門店で「カビ取りクリーニング」をしない限りは除菌ができず、繰り返しカビの症状に悩むことになります。とにかく予防が大切です。
カビ予防のために「除湿剤(湿気取り)」は必ずタンスや衣装箱に入れましょう。一般的な置型タイプの除湿剤(製品名:水とりぞうさん等)に加えて、シートタイプの除湿剤を引き出しやタトウ紙の中に入れておくと安心です。
なお、除湿剤は一定の水分を吸い込むと防湿効果が極端に下がります。定期的に引き出しを開けて、防湿剤を交換する習慣をつけましょう。
お手入れ・保管が難しい時は「お預かりサービス」
訪問着の保管中のお手入れとしては、年に2回程度は訪問着を直射日光にあてずに干す「虫干し」があります。やり方は基本的に上の項目の「陰干し」と同じです。
ただお忙しい方にとって、定期的に虫干し(陰干し)を行ったり、防虫剤や防湿剤の交換をするのは手間なものです。大切な訪問着をキチンと保管し続けられるか、不安な人も居ることでしょう。
そんな時にはプロによる「着物のお預かりサービス」を使ってみるのも手です。次に着る時まで預けておけば場所も取りませんし、保管中のお手入れの手間や時間も省略できます。
当店『着物ふじぜん』でも、クリーニングご利用後のお預かりサービスをご用意しています。訪問着のお手入れや保管にお悩みの際には、お気軽にご相談ください!
おわりに
訪問着はちょっとあらたまった場所に着ていく着物です。そのため訪問着はタンスの中で保管されている期間が長めで、カビや変色、虫喰い等のトラブルの相談も多い着物と言えます。
当店ではカビ被害の着物の「カビ取り」、虫食い等を目立たなくさせるための加工のご相談等もお受けしていますが、カビや虫食い被害は無いのが一番です。予防対策をしっかり行って、次回に気持ちよく訪問着が着られるようにしましょうね。