お子さんの成長を祝う家族のイベントである「七五三」。「できたら両方の両親を呼んで、家族全員で祝いたい!」「仕事が忙しいけど、七五三は予定を開けなくては」等等、七五三の予定について考えているご両親も多いことでしょう。
でも七五三のスケジュールを決める時って、日取りの「縁起」が気になる人もいるはず。「七五三はやっぱり大吉の方がいいかも」「友引とか仏滅に行うのはダメ?」等等、七五三と六曜(ろくよう)の関係に悩んでいませんか?七五三の日程っは、六曜に沿って決めないといけないのでしょうか。
目次
そもそも六曜とは何?
六曜(ろくよう/りくよう)とは、暦本(今でいうカレンダーや手帳)に掲載される「暦注」の一種です。暦注には干支(えと)・雑節・二十八宿・九星等の様々なものがありますが、六曜はその中でも比較的有名な存在となっています。一般的なカレンダーや手帳等に記載されていることも多く、現在も慶弔の行事を決める際等に六曜が用いられるケースも多々見られます。
【例】
- 仏滅の日には結婚式は避けた方が良い
- 友引の日は葬式はNGだから、火葬場が休み
- 「本日はお日柄が良く…」 という言い回し
このような例を耳にしたことはありませんか?これが「六曜」によって縁起の良い日を悪い日を決めている…ということなんです。六曜にはその名の通り、6種類の日があります。
先勝(せんしょう・せんかち・さきかち等)
「先んずるが即ち(すなわち)勝ちとなる」の意味で、急ぐこと・早いことを吉とする日です。そのため午前中は「先」にあたるためお日柄が良い(縁起が良い)のですが、午後は凶にあたる(縁起が良くない)と考えられています。
友引(ともびき)
「凶事(きょうじ=良くないこと)に友を引いていく」という意味から、友人等の周囲の人をあの世へと引っ張るため、葬儀は避けられることが多い日です。そのため火葬場や葬儀場等は原則として休みになります(※現在は営業する施設もあります)。しかし反対に慶事に対しては「良きことへと友を引く」という考え方もあり、結婚式の「引き出物」のお返し等を友引に贈ると良いとも言われています。縁起としては早朝は吉ですが、昼になると凶に変わります。
先負(せんぶ・せんまけ・さきおい等)
先勝の反対で、「先んずれば即ち負けとなる」と考えられる日。つまり「急ぐのは良くない」というわけですね。そのため縁起では「午前中は凶で、午後以降は吉」であるとされています。また焦って行動を起こすのは良くない日とも言われ、この日に唐突に用事を入れるのはNG。その他、スピードが問われる賭け事・勝負などをするのもNGです。
仏滅(ぶつめつ)
六曜の中で最も縁起が悪い「大凶」の日。結婚式やお祝いごと等は、仏滅には避けた方が良いと考えられています。なお「仏滅」という名前は「仏も滅するほど」という意味から付けられたとされていますが、実際には仏教との関連性はありません。
大安(たいあん・だいあん)
仏滅の反対で、六曜の中で最も縁起が良い日。全方位で「吉」とされている縁起のとても良い日です。結婚式の日取りとして最も人気がある他、マイカーの納車、竣工式等の「新しいことを始める時」にはこの日を選ぶ人が多いです。
赤口(しゃっこう・せきぐち・あかくち・じゃっく等)
陰陽道で不吉な日とされる赤舌日(しゃくぜつにち)から影響を受けて生まれた名前で、昼間(11:00~13:00頃)をのぞく全ての時間は凶日であると考えられています。「赤」が付く日であることから、赤い血を連想させる刃物類には注意。また火の元(赤=火という連想から)にも用心する日であるとされています。
七五三では六曜を守らないとダメ?
六曜の解説を読んで、「七五三=お祝いごとだから、やっぱり大吉の方が良いのかな」「友引の日も避けたほうがいいかも!」こう考えた方は多いことでしょう。でも実は…「七五三と六曜」って、そこまで大きな関連性が無いんです。
七五三は元々は「生まれ育った土地の神様(産土神・うぶすなかみ)に挨拶をし、これまでの子供の無事の感謝と今後の成長をお祈りする」という意味合いから生まれた行事です。産土神の居る神社に訪れて参拝をする行事であり、そもそもは日本神道と深い関わりを持っています。現在は仏閣での参拝をするという方も多いですが、いずれにしても神道・仏教といったなんらかの宗教施設に赴き、「神様や仏様・ご先祖様等に加護を祈る」という宗教的な意味合いも多い行事となっています。
ところが六曜は、神道・仏教のいずれとも関わり合いがありません。
六曜は日本では鎌倉~室町時代頃に生まれて、江戸時代後半に庶民の間で定着した「民間信仰」の一種。また中国で生まれた暦注とされていますが、実際のところの発祥も判然としていません。つまり神道の神社では「大安だから縁起が良い」といったことは言わないし、仏教のお寺でも「仏滅だからダメ」といったことは言わない…というわけなんですね。
七五三の日取りの歴史
七五三は元々、旧暦11月頃に行うものとして定着してきたイベントです。また日取りについては「11月15日」が良い日とされてきました。これにはいくつかの理由があります。
- 旧暦11月は新嘗祭(収穫の感謝祭)の時期であり、稲が取れたことを神様に感謝するお祭りを行う村も多く、これに合わせて七五三も行われた。
- 旧暦11月15日がお月見の日(十五夜・満月)にあたるため、縁起の良い日であると考えられた。
- 徳川五代将軍綱吉公の息子・徳松様の健康を祈る儀式「髪置きの式」が行われたのが11月15日で、その後に武将達が同日に子供の顔見世・挨拶回りを開催。庶民にもその文化が伝わった。
なお七五三は必ずしも昔から「絶対に11月15日」とされてきたわけではありませんでした。寒冷地などでは七五三の日取りをずらすことも昔から当然のようにあったのです。
また大正・昭和と現代に近づくにつれて、日取りの考え方はより自由になっていきます。「10月下旬~11月中の週末で、家族の都合の良い日」といった日取りが一般的とされるようになったのです。
七五三の日程は家族全員でよく相談を
特に現在では、11月15日に近い週末は七五三の予約が殺到するため、少し時期をずらして10月~11月のその他の週末に予約をするという方が増えています。とは言え週末の日にちは限られていますよね。ここに「六曜」の制限まで入ってくると、予定が立てられないという方も多いはずです。
六曜を気にしてお祖父様やお祖母様が集まれない、ご両親が揃わない、お子さんの学校等の都合が付きやすい日が無い…そんな無理をしてまで「縁起の良い日」にこだわる必要は無いでしょう。前述のとおり六曜は元々七五三との関連性の薄い暦注なので、そこまで縁起をかつがなくても大丈夫なんです。
ただ、七五三は父方・母方両方のお祖父様お祖母様にとっても大切なイベントとなります。ご家族の中のどなたかが六曜を非常に気になさる方であったり、縁起をかつぐ方である場合、「先負の午後や赤口等の参拝は嫌だ」と感じられることもあるでしょう。ご家族の皆さんでよく話し合って、六曜に対する考え方を確認しておくことをおすすめします。
また「やっぱり六曜で縁起の悪い日は嫌だ」「でも週末で、なおかつ大安の日だとちょっと厳しい」という場合には、時間帯をずらしてみるのも手です。友引のなるべく早い時間に予約を入れる、ゆったり午後に予約を入れたりのであれば先負の日を選ぶ…といった方法で「縁起の良い時間」に参拝するようにすれば、六曜を気にされる方にもご納得いただけるのではないでしょうか。
おわりに
七五三と六曜について、意外と関わりが薄い歴史であることを知り驚かれた方も多いかもしれませんね。しかし六曜は、現在も無意識に信仰されている方が多いもの。大吉の日の七五三が毎年非常に込み合っていることからも、その人気ぶりがわかります。
「できたら縁起の良い日や時間の方がいいかも…」と思うのであれば、とにかく予定を早く決めて、神社の予約を取るのが吉!また大吉等の縁起の良い日は、七五三の着物の着付け・撮影等も非常に込み合います。時間に余裕をもった一日のスケジュールを組むように気をつけましょう。