足袋(たび)は着物を着た時に履く、和装のソックス(靴下)です。足袋は選び方にルールとコツがあります。シーンによって履ける足袋も違いますし、サイズの合わない足袋を履いていると見た目にも良くありません。
足袋は草履(ぞうり)や下駄(げた)、雪駄(せった)などと合わせるため、周囲の人からよく見えるもの。
1.足袋の色・柄で選ぶ
足袋の選び方で最も大切なのが「足袋の色」です。着物を着る時には、着ていく場面によって履ける足袋の色が変わります。知らずにマナー違反にならないように、まず「着ていくシーン」を決めてから足袋を選びましょう。
白足袋
白足袋(しろたび)とは、色が真っ白で、なおかつ「無地」の足袋のことを言います。白足袋はフォーマルにもカジュアルにも履くことができる、オールマイティな足袋です。
フォーマルには絶対に白足袋
フォーマル、セミフォーマルとして着物をお召しになる場合には、必ず白足袋を履きます。
フォーマル(礼装)
- 結婚式
- 葬儀(お葬式)
- お通夜
- 法事
- 叙勲 など
セミフォーマル(準礼装)
- 七五三(ご家族)
- 入学式、入園式
- 卒業式、卒園式
- お宮参り(ご家族)
- その他の式典
- お見合い など
「高級」「上品」な場には白足袋がおすすめ
例えばホテルレストランや高級なフレンチレストラン、料亭での会食などでは、白足袋の方が「格の高い装い」となり、場に適した装いとなります。また観劇をする場合でも、大きな劇場や良いお席で観る時には白足袋がおすすめ。靴でいえば、きちんとしたハイヒールを履くようなものだと考えるとわかりやすいかもしれません。
最初の一足は「白足袋」を
白足袋はカジュアルな場面に履いても、まったく変ではありません。白足袋カジュアルシーンにもビジネスシーンにもフォーマルシーンにも合わせられる、万能の一足です。初めて一足だけ足袋を買うなら、どこにでも履いていける白足袋がおすすめです。
色足袋・柄足袋
色足袋(いろたび)とは、白以外の色がついた足袋のことを言います。柄足袋(がらたび)は、模様(柄)のある足袋のこと。柄足袋も含めて「色足袋」と呼ぶこともあります。色柄の足袋はカジュアルシーンに着用します。
色柄は街着や普段着として
色足袋・柄足袋は、フォーマル・セミフォーマルなシーンには着用することができません。例えば同じ「訪問着」を着ている場合でも、足元が白足袋ならばセミフォーマルという扱いになりますが、足袋や中に着る長襦袢が「色もの」だと、カジュアルな服という扱いになってしまいます。
色足袋・柄足袋は、お友達同士でのお出かけやお買い物、カフェなどでのカジュアルな集まりなどでの「足元のおしゃれ」として楽しむアイテムです。洋服の場合で考えると、デザインが素敵だけれど踵の無いサンダルやゴツいブーツ、スニーカーのような扱いです。
色が濃いほどカジュアルな印象
女性の履く足袋の場合、色が濃くなるほどカジュアルな印象を与えやすいです。例えば濃い紫や紺色などは「とってもカジュアル」な足元というわけですね。例えば会社関係の人も来るような集まりでは、濃い色足袋などは避けた方が良いでしょう。
裏が白だと清潔感アップ
色足袋・柄足袋でも、足裏(底の部分)が白いと清潔感があり、少しあらたまった雰囲気になります。「カジュアルだけれど少しだけ引き締めたいな」という時には、裏が白地のものがおすすめです。
白レースでも「色柄足袋」です
気をつけておきたいのが、白のレースや足袋であっても「色柄足袋」の扱いになるという点です。半衿の場合、白に金刺繍の半襟は「フォーマル」として結婚式などで使えますが、足袋の場合は模様があると「フォーマルではない」という扱いになりますので気をつけましょう。
黒足袋
黒足袋は男性の普段使いの足袋です。こちらもフォーマルには使えません。また女性が黒色の足袋を使う場合、ジーンズのようにかなり強いカジュアル感となります。
2.足袋の素材で選ぶ
次に、足袋の素材による種類の違いと選び方を見ていきます。
ストレッチ素材(ナイロン・ポリエステル混紡)
木綿にナイロンやポリエステルなどの化学繊維を組み合わせ、ストレッチ性を出した足袋です。足の動きに合わせてソックスのように伸縮してくれるため、ソックスのような感覚で履きやすく、足が疲れにくいのがポイント。初めて足袋を履く人には、ストレッチ性のある素材がおすすめです。
木綿(コットン)
最もスタンダードな足袋です。「キャラコ」という織り方と「ブロード」という織り方がありますが、最初はどちらでもお好みで大丈夫です。伸縮性はありません。
絹(シルク、シルク混紡)
正絹(シルク100%)の足袋は、主に結婚式での新婦の和装用や、神式の儀礼用など、特別な場で用いられるものです。絹独特の光沢感が美しいのがポイント。絹混紡の足袋も稀にありますが、家で洗えないことを含めて扱いが難しいため、あまり一般的ではありません。
麻(リネン)
麻の足袋は風通しがよく、足元が涼しいため、夏着物に合わせます。ただしカジュアルな装いのための足袋となります。白無地であっても、麻はフォーマルとしては不向きです。
レース
こちらも麻足袋と同じく、見た目が涼しげなので夏の着物のコーディネートに好まれます。こちらもカジュアル向けの足袋です。
別珍(ビロード)
ビロードは風を通しにくいので、冬の足元を暖かく守ってくれます。カジュアル用の足袋ですが、独特の生地感がオシャレなので粋なコーディネートを楽しみたい時に。
フリース
こちらもカジュアル向けの冬用足袋です。より防寒性が強いので、真冬の着物のおしゃれにもピッタリ。伸縮性があり、履きやすいものも多いです。
3.足袋の「こはぜ」で選ぶ
「こはぜ」とは、足袋の履き口についている金具のことを言います。足袋はこの「こはぜ」を糸にかけて止めることで足にピッタリと定着させるのです。実はこの「こはぜ」の枚数で足袋を選ぶこともあるんですよ。
五枚こはぜ
五枚こはぜの足袋は、こはぜの枚数が多い分だけ、丈が長く、足首までしっかりと覆うのが特徴です。その慎ましやかな見た目から、次のような場面で特に好まれます。
- 日本舞踊などの踊りの時に
- 主に関西地方でのフォーマルな場に
- 優美な雰囲気を演出したい時に
ただし五枚こはぜの足袋は足をしっかり固定するため、足袋に慣れないと動きにくいのが難点。初心者の方にはかなり難しいところがあります。初めて五枚こはぜに挑戦する時には、ストレッチ性のある素材を選んだ方が良いでしょう。
四枚こはぜ
四枚こはぜの足袋は、五枚こはぜに比べて丈が短く足首を締め付けません。動きやすさや粋な見た目から、主に次のような場面で好まれます。
- キビキビと動きたい時に
- 主に関東地方でのフォーマルな場に
- 普段着の着物に
関東地方で四枚こはぜが万能とされるのは、粋でいなせな江戸っ子が四枚こはぜを好んだからとも言われています。四枚こはぜの足袋は、着物の初心者の方にもピッタリです。
※白足袋・柄足袋のルールとは異なり、こはぜの枚数には特に着用の徹底したルールはありません。また日舞などのやや特殊な場を除けば、足首が足袋から見えるということもほとんど無いものです。こはぜの枚数を目にかける人もいませんし、あまり気にしすぎる必要はありません。
4.足袋のサイズを正しく選ぶ
足袋の選び方でとても大切なのが「サイズ感」です。ピッタリと自分の足に合ったサイズを選びましょう。
足袋は0.5センチ刻みで販売されています
洋装向けのソックス(靴下)ですと、女性向けなら「22~24センチ」など、ざっくりとしたワンサイズ展開であることがほとんどですね。ところが足袋は、0.5~1センチ刻みで販売されています。それだけ足袋は足にピッタリと合っていることが求められるのです。
足袋のサイズが合わないデメリット
足袋が足に合っていないと、次のようなデメリットがあります。
シワができて見た目が悪い
主に足袋が大きすぎる場合のデメリットとして、足のあちこちに不自然なシワができます。足袋は草履や下駄に合わせるものですから、シワができると靴下のように「履けば隠せる」ということができません。シワがあり不恰好なのが人から見えやすく、目立ってしまいます。
疲れやすい
足袋が大きすぎると足がきちんと固定されないため、歩いている時に疲れやすいです。
痛みの元に
反対に足袋があまりにも小さすぎると、履いている間に足が痛くなってしまう可能性も。また、あまりに窮屈すぎる足袋を続けて履くと、足指の変形などの原因にもなります。
足のサイズの0.5~1センチ小さめを
足袋のサイズは、基本的に「少し小さめ」を選びます。普段履いている「靴」のサイズの0.5センチ~1センチ程度の小さめのものから選んでいくのが目安です。
できれば店舗で試着がおすすめ
初めて足袋を選ぶ時には、ピッタリのサイズを選びにくいものです。特にストレッチ性の無い足袋を選ぶ時には、店舗で見本を試着させてもらうことをおすすめします。
足袋の試着が難しい時には?
試着が難しい、オンライン(ネット)だけで足袋を選びたい…そんな時には、自分の足形を取ってみましょう。足を紙につけて輪郭をなぞったら、一番長い部分を測ります。それにプラス3mm程度の余裕を加えたものが、足袋のサイズの目安です。
5.足袋の「足型」で選ぶ
足袋はサイズによる違いだけでなく、足の甲の高さや幅などに合わせた製品も販売されています。特にフォーマル向けの白足袋は、足型の展開が豊富です。ご自分の足にピッタリと沿う形を選んでみましょう。
「標準」の足袋
一般的な足型向けの足袋です。靴選びで困った経験があまり無い方なら、標準向けでほぼ大丈夫です。
「細形」の足袋
「細形」の足袋は、足の甲が低かったり、足の横幅が細い人におすすめです。「一般的な靴だと甲や横幅がパカパカしてしまいやすい」という人は、細形の足袋を選びましょう。
「ふっくら」の足袋
「ふっくら」の形の足袋は、足の甲が高かったり、足幅が広い人に向いています。甲の低いスニーカーや靴だと足がキツく感じる人、足幅が広い靴がお好みの人におすすめです。「足袋の縦のサイズは合っているはずなのにキツくて辛い」という時にも「ふっくら」を試してみると良いですよ。
「ゆったり」の足袋
「ゆったり」の足袋は、「ふっくら」よりもさらに足幅を広めに取っているほか、足首の履き口周りにもゆとりを持った形になっています。恰幅の良い方などに向いています。
足袋の選び方で よくある疑問
足袋は上記の通り「色」「こはぜ」「素材」「サイズ」「足型」で選んでいきます。その他に、足袋の選び方でよくあるご質問にもお答えします。
- Q.浴衣に足袋を履いても良いですか?
- A.はい、大丈夫です。浴衣に飾り襟や名古屋帯などを合わせ、足袋を履くことで、木綿着物風のコーディネートにすることもできます。また足袋を合わせることで、疲れにくくなるというメリットも。ただし足袋を履いたからといって「浴衣に草履」はNG。浴衣には下駄を合わせましょう。
- Q.着物に足袋ソックスはNGですか?
- A.とてもカジュアルな場に街着として合わせるのなら、コーディネートは自由です。足袋ソックスでも良いでしょう。しかし少し高級なレストランなどは避けた方が良いです。目安として「Tシャツやジーンズでお出かけができる場所」は足袋ソックスでも良いですが、襟のあるシャツやヒールの靴で訪れる人が多い場所はソックスはNG。ビジネスシーン以上の場面には、足袋ソックスは不向きというわけですね。
- Q.成人式と同じ足袋を結婚式に履いてもOK?
- A.成人式では足袋にきまりがありませんが、結婚式に振袖を着て参列する時には「礼装」として足袋を選ぶ必要があります。成人式でレース足袋、柄足袋、色足袋を選んでいた場合でも、結婚式にはあらためて白の無地の「白足袋」を準備しましょう。また「半衿」も礼装では白となりますのでご注意ください。
おわりに
足袋の選び方を「色・柄」「素材」「サイズ」「こはぜ」などの観点からご紹介して行きましたが、お役に立ちそうでしょうか?足袋は着物初心者の人には、少し履きにくく、疲れるものに感じられるかもしれません。でも足にピッタリと合う足袋を選ぶと、疲れにくく、動きやすくなりますよ。きちんと足に合ったものを選びましょう。
また足に合った足袋が見つかったら、ぜひ「予備」の足袋を数枚買っておくことをおすすめします。予備の足袋を持っておけば、洗い替えになるだけでなく、突然の雨などのアクシデントで足元が汚れた時にも安心ですよ。