お手入れ

着物を洗う頻度は?毎回?シーズン1回?プロが詳しく解説

着物初心者の方にとって、最大の謎は「着物を洗う頻度」ではないでしょうか。着物を着たら毎回洗わないと気持ちが悪い?それともずっと洗わなくて良い?洋服と着物では洗う頻度についての考え方が大きく違うので、何が正解なのか戸惑ってしまう方も多いはずです。

吉原ひとし
吉原ひとし
こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。ここでは着物を洗う頻度について、「ご家庭で洗える着物(木綿着物やウォッシャブル着物等)」と、「洗えない着物のクリーニング」それぞれの洗濯の頻度を解説していきます。着物のお手入れについてお悩みの時、ぜひ参考にしてみてください。

「洗える着物」を洗う頻度は?

まずはご家庭で洗える着物の洗濯の頻度についてです。ここで言う「洗える着物」とは、次のような着物を意味します。

  • ポリエステル着物
  • 「手洗いOK」の洗濯表示がある木綿着物
  • 「手洗いOK」の洗濯表示がある麻着物
  • ウォッシャブル加工のある着物 等

※「一般的には洗える素材」であっても、着物の場合にはご家庭で洗わない方が良いものもあります。ご家庭での水洗いは洗濯表示等をよく確認の上で行うようにしましょう。

着物は毎回洗わない方が良い!?

「洗える着物」と聞くと、その洗う頻度はTシャツやワイシャツのように「一度着るたびにザブザブ洗うものだ」と考える方が多いようです。しかし実際にはこれは少々の誤解と言えます。

「洗える着物」であっても、その洗う頻度は「毎回ではない方が良い」のです。その理由としては、次の3点が挙げられます。

1.洗濯による色落ち・色あせ

水に通せば通すほど、当初の染料は落ちていきます。もちろん水通しを重ねることによって深みを増していく着物もありますが、すべてがそうとは言えません。

特に「ポリエステル(およびポリエステル混紡)」や「麻」の着物は繊維への染料の定着力が比較的弱い傾向があります。当初の鮮やかな色合いを維持したいという場合には、着物を洗う頻度は控えめにした方が良いです。

2.縫糸へのダメージ

水洗いや脱水を重ねれば、それだけ縫糸へのダメージも大きくかかります。「洗濯機で洗える着物」等は丈夫に作られてはいますが、頻繁すぎる洗濯には耐えられないものもあるので注意が必要です。

3.紫外線による色あせ

着物を水洗いした時には、どうしても「干す」(乾燥させる)という工程が必要です。着物を干す場合には色あせ防止のために陰干し(直射日光を避けた乾燥)が基本ですが、それでも紫外線の影響はゼロではありません。

外気に触れている(干している)時間が長いほど、染料は少しずつ褪色(色あせ)を起こしていきます。特に赤、黄色等は褪色が早いです。

汗や汚れが付いたらしっかり洗う

では「洗える着物」の洗う頻度はどの程度が良いのでしょうか。着物の種類にもよりますが「数回着てから洗う」という考え方で良いでしょう。ただし次のような時には、早めに洗うようにします。

  • 食べこぼしや飲みもの等のシミがついた
  • 泥ハネ等の汚れがついた
  • 着物を着ている時に汗をたくさんかいた

特に3番めの「汗汚れ」については注意した方が良いです。汗汚れはすぐに洗えば比較的カンタンに落とすことができますが、放置していると困ったシミにもなってしまいます。夏の着物類を洗う頻度は少し多めにした方が良いですね。

シーズン終わりは洗ってから保管

ご自宅で洗える着物については、シーズンの終わりには一度洗って全体的に汚れを落とし、それから長期保管をするようにしましょう。

これは上でも少し解説しましたが「汗汚れ」等による変色を防ぐためです。

またシーズン終わりの洗濯の後には、いつもより長めにしっかりと乾燥させることにも気をつけましょう。繊維に湿気が残っていると、カビや虫害(虫食い)等のリスクが上がってしまいます。

【洋服の『おしゃれ着』を洗う頻度でイメージ】
ウォッシャブル着物を洗う頻度については「ホームクリーニングOKと書いてあるオシャレ着」をイメージしていただくと良いかもしれません。例えば「手洗いOK」となっているけれど、装飾等が付いているスカートやお出かけ用のワンピースといったところです。

これらの衣類は「洗うことはできる」とは言っても、Tシャツ等のように毎回ザブザブ洗う!という人は少ないのではないでしょうか。もちろん日常着としての着物もありますが、基本的には「おしゃれ着」の感覚で着物を扱ってもらうと間違いが少ないです。

【※浴衣は毎回洗います※】
浴衣(ゆかた)については、洗う頻度が着物とはまったく違います。こちらは基本的に「一回着るたびに洗う」が洗濯の頻度です。これは「浴衣」が次のような特殊な特性を持っているためです。

  • 長襦袢を着ないで一枚で着る
  • 真夏の暑い時期に着る

浴衣は肌襦袢や長襦袢といったインナーを身に着けず、肌着の上からいきなり着るタイプの和装です。そのため着用するごとにしっかりと汗汚れが付きますから、水洗いでキチンと汚れを落とすのが理想的です。

ただし現在では「装飾が多い浴衣(刺繍、縫い付け、レース付き)等の特殊な浴衣も出回っています。このような特殊浴衣についてはご家庭での洗濯ができないものが多いので、クリーニングに出すようにしましょう。

関連記事:72%がアウト?浴衣の正しい洗濯方法とは
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「洗えない着物」をクリーニングに出す頻度は?

次に、ご自宅では洗えない着物を洗う(クリーニングに出す)頻度について解説していきます。ここでの「自宅で洗えない着物」とは、次のような着物です。

  • 正絹(シルク)の着物
  • ウールの着物
  • 手洗い不向きの木綿着物
  • 装飾の多い着物 等

ちなみに振袖・留袖・喪服着物等のフォーマル向けの着物は、正絹(シルク)で作られていることが多いです。正絹は水にとても弱く縮みやすいため、ご自宅での水洗い等は行なえません。

着物は毎回クリーニングしません

正絹着物等の着物類は、一度着るごとにクリーニングをする必要はありません。例えば街着として着る着物等を「着るたびにクリーニングに出す」といったら、月に1回以上のハイペースでクリーニングしなくてはいけませんよね。

着物専門のクリーニングでは、もちろん着物にできるだけ負担がかからないよう、細心の注意を払って着物を取り扱っています。とは言え、そこまでハイペースでドライクリーニング(丸洗いクリーニング)をしていれば、それだけダメージも蓄積してしまうことでしょう。さらには着物を着るための維持費も高額になってしまいます。

着物は毎回、丸ごと洗わなくてはならない」という思い込みから抜け出しましょう。

こまめな「しみ抜き」をしましょう!

着物を洗う頻度(クリーニングの頻度)についてでは、「丸洗い」よりも「しみ抜き」を頻繁に行うと考えた方が良いです。

「しみ抜き」とは、部分的な汚れを取る洗浄方法のこと。例えば「コーヒーを少しこぼしてしまった」「お醤油のハネを作ってしまった」といった時に、その部分の汚れだけを取る工程を意味します。

シミはできるだけ早く対処した方が、専門店でもスムーズに汚れを取ることができます。着物を着て帰宅したら、まずは全体をくまなくチェックして汚れが無いか確認を。自分で対処できない汚れが付いていたら、できるだけ早く着物クリーニング店で「しみ抜き」をします。

【「しみ抜き」だけできるお店か確認を!】
着物クリーニング店の中には、「しみ抜き(部分洗い)」を単独で行っているお店と、「丸洗い(全体洗い)」のオプションとして行っているお店があります。

「よく着物を着る」という方は、「しみ抜き(部分洗い)」だけを気軽に依頼できる着物クリーニング店を見つけておいた方が良いです。部分洗いだけであれば料金もお手頃ですし、気軽にクリーニングを依頼することができます。

なお当店『着物ふじぜん』でも、しみ抜き単体でのご依頼を受け付けています。しみ抜きができるお店探しにお困りの時には、お気軽にご相談くださいね。

シーズン終わりは丸洗いクリーニング

着物には「袷(あわせ)」「単(ひとえ)」等、秋~春にかけて着る服、夏向けの服等、それぞれ着用のシーズンがあります。洋服でも、春になる頃には冬服のコートをクリーニングに出しますよね?それと同じで、シーズンの終わりは着物を「丸洗いクリーニング」しておく良いタイミングです。

シーズン中に数回着用した着物には、皮脂汚れやチリ・埃汚れ等が少しずつ蓄積しています。これらの汚れを「丸洗いクリーニング」で全体的に取っておけば、次シーズンにも着物を気持ちよくサッパリと着られるるというわけです。

フォーマル着物は「丸洗い」+「汗抜き」

ここまでで解説した「着物を洗う頻度(クリーニングに出す頻度)」は、比較的登場回数が多いであろう着物(街着向けのもの、付下げ、軽めの訪問着等)を想定しています。少しクリーニングのおすすめ頻度が違うのが、完全なフォーマル向けの着物です。

【フォーマル向け着物の例】
・留袖
・色留袖
・喪服着物
・振袖  等

これらのフォーマル向け着物については、「次回の着用予定が無い場合には、丸洗い+汗抜きクリーニングをしてから保管する」という頻度をおすすめします。

【例】
・通夜葬儀に着用した着物、四十九日にも着用予定がある
→ 葬儀後はクリーニングの必要無し(法要でも着用)
・通夜葬儀に着用した着物、その後の法要等では着用しない
→ 丸洗い・汗抜きクリーニングでお手入れ

これはなぜか?というと、理由は3つあります。

保管期間が長い

フォーマル着物は登場回数が少なく、その分だけ長く保管をされがちです。特に留袖類は、数年間も保管したっきり、というケースが数多くあります。

着物に少々でも汚れが残っていると、変色等が発生しやすくなるだけでなく、カビや虫害等のリスクが高くなります。保管が長い着物ほど、汚れをしっかり取っておいた方が安心です。

汗が付きやすい

結婚式や葬儀等の場では「着物の中に汗をかいてしまった」という人がとても多いです。汗は酸化シミ(黄変)を作る大きな原因となります。

2~3年後に留袖が茶色いシミだらけになってしまった…このようなトラブルがとても多いのです。これを防ぐために着物クリーニングで本格的な「汗抜き」を行っておきます。

「隠れ汚れ」が多い

「着物はフォーマル向けのものしか持っていない」という方の場合、着物慣れをしていない分だけ、思いもよらない部分に「シミ」や「ハネ」を作りやすいです。

例えば泥ハネですが、着物慣れした方なら裾に軽く付く程度のものでも、初心者の方だと膝の裏あたりまで跳ね上げていることがよくあります。

また着物初心者の人ほど、シミ・汚れ等の見落としは起きやすいものです。「キレイに着たつもりだった」という着物が、数年後に見ると「落ちないシミだらけ」になってしまっていた…というケースがとても多くあります。

着物クリーニングに出すことでプロの目線で汚れを全体的にしっかりチェックして貰い、落とすべき汚れをキチンと落としておいた方が安心です。

着物は「基本のお手入れ」を大切に

着物は頻繁に洗うよりも、基本のお手入れを大切にすべき衣類です。基本的なお手入れを見直してみましょう。

かならず陰干しで湿気を飛ばす

着物を着用したら、陰干しで繊維にこもった湿気を飛ばします。

  1. 着物を和装専用ハンガーにかけます
  2. 直射日光の当たらない場所に干します
  3. 窓を開けて換気するか、エアコン等で除湿します
  4. 半日~数日(状態によって時間は調節)干しておきます。

陰干し中には丁寧に全体をチェックして、汚れや傷みを早めに見つけるようにしましょう。

和装ブラシでホコリを落とす

頻繁に着物を着るようになったら欲しいのが和装用のブラシです。和装ブラシがあれば表面についたチリやホコリを優しく落とすことができるので、より着物を美しい状態でキープできます。陰干しをしながらでも良いので、全体的にブラッシングする習慣をつけたいですね。

ご家庭でできる「汗抜き」を

着物を着たときの「汗」が気になった日には、「汗抜き」のお手入れもしておきましょう。

  1. 柔らかいタオルを水に浸して、ギュッと固く絞ります。
  2. 着物を裏側を上にして広げます。
  3. 汗汚れが気になる部分を、トントンと軽くタオルで叩いていきます。
  4. 別の乾いたタオルでまた同じ場所を叩いて、水分を取り除きます。
  5. いつもより長めに陰干しをします。

陰干しやブラッシング、汗抜き等のお手入れをキチンと行うようになると、着物の「長持ち度」はグッと長くなりますよ。

おわりに

着物を洗う頻度について詳しくご紹介しましたが、参考になりましたでしょうか?「着物」と一口に言っても、その中には日常着として着るものから、ちょっとしたお出かけに着る着物、そしてドレスと同じ扱いとなる振袖や留袖等、ランクや使い方も様々です。

日常着として着物をお使いになるのであれば、洗う頻度を上げてザブザブ洗っていくのもアリと言えます。でもドレスや高級ワンピースにあたるフォーマル着物は、頻繁には洗いませんよね。「その着物の格と用途」がわかれば、お持ちの着物の適切な洗う頻度が決めやすくなることでしょう。

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吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし


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