染み抜き・ハウツー

【プロが解説】着物についた尿(おしっこ)シミの対処法・落とし方 Q&A

お宮参りや七五三といったお子様のイベントだと特に多いのが、着物についた尿(おしっこ)のシミのトラブルです。着物に尿・おしっこのシミやハネを作ってしまったら、どのように対処をしたら良いのでしょうか?

吉原ひとし
吉原ひとし
こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。ここでは着物のおしっこシミ・尿シミの対処法や落とし方について、よくある質問をプロがわかりやすく解説していきます。

外出先で子どものおしっこシミ…応急処置は?

出先で着物に尿・おしっこのシミをつけてしまった場合、水洗いできる素材かどうかで対処法が変わってきます。もしも洗濯可否や素材がわからない場合には「水洗いできない着物」の方の対処法を選びましょう。

洗える着物の場合

お子様向けの着物の場合、化繊素材などで水洗いに対応しているものも多いですね。この場合には、濡らしたタオルを緩めに絞って繰り返し汚れた部分を叩き、できるだけ汚れをその場で落としていくと後が楽です。その後で乾いたタオルで軽く叩いて、水分を取ります。当日中にはご自宅で洗濯やシミ抜きなどの対処を行いましょう。

水洗いできない着物の場合

水洗いできない着物、特に正絹(シルク)は水濡れにとても弱いです。濡らした部分がどんどん縮んで「水シミ」が広がってしまうので、おしっこシミの対処でもあまり濡らさない方が理想的と言えます。範囲がとても小さい(おしっこハネなど)であれば、乾いたペーパーやタオルなどで水分を取るだけにしても良いでしょう。

範囲が広くてニオイなども気になる場合には、濡らしたタオルをできるだけ硬く絞って、トントンと軽く叩いて汚れを取り、あとは乾いたタオルで水分を取ります。濡らしたタオルを使う場合、水濡れした範囲を広げないように十分に注意してください。

自分で着物のおしっこシミに対処する方法はある?落とし方は?

着物についた尿(おしっこ)のシミは水性なので、ご家庭でシミ抜きするには「水洗い」が必要です。「水洗いできる着物」で、なおかつ「ついたばかりの汚れ」であれば、ご家庭で中性洗剤などを使ってシミ抜きできることもあります。以下に詳しく対処法・落とし方を解説します。

着物のおしっこシミの落とし方

※着物が水洗いできるかどうか必ず洗濯可否を確認しましょう。
※古いシミ、変色しているシミはご家庭では落とせませんので、専門店に相談しましょう。
※着物の素材・染料によっては、色落ち・変色などが起きる可能性はあります。自己責任となることご了承ください。

【用意するもの】

  • おしゃれ着用の洗濯洗剤(中性タイプの液体洗剤)
  • 柔軟剤(シワ・縮み予防のために使います、香料があまり強くないものをお勧めします)
  • 洗面器
  • 着物用ハンガー
  • 洗濯用ネット
  • バスタオル2~4枚
  • アイロン、アイロン台、霧吹き、当て布

※洗濯前に襟元をぐし縫いするか、安全ピンなどで止めておくと型崩れ防止になります。

【着物のおしっこシミ落とし方の手順】

  1. 着物のシミがついた部分を水で濡らします。
  2. 洗面器に中性洗剤を入れて、水で適量に薄めます。
  3. 薄めた洗剤をシミ部分につけて、擦らないように優しくなじませます。
  4. 水ですすいで、汚れが残っていないかチェックしましょう。
  5. 汚れが取れたら仕上げ洗いに入ります。バスタブなどに水をためて、中性洗剤を適量溶かします。
  6. 畳んだ着物をネットに平らに入れて、水に全体的に浸け、優しく押し洗いします。
  7. 水を取り替えて2回すすぎます。最後に柔軟剤を入れて仕上げます。
  8. ネットのまま30秒程度脱水させます。(型崩れしやすい着物の場合には脱水を省略します)
  9. 着物をネットから出し、バスタオルで挟んで叩くようにしながら水分を取ります。
  10. 着物を専用ハンガーにかけ、直射日光を避けて乾燥させます。
  11. アイロンで形を整えて仕上げます。(木綿など縮みやすい素材の場合は、濡れた状態で引っ張るようにアイロンをかけ、それから自然乾燥をさせてください)

※ゴシゴシ擦ったり、繰り返してシミ抜きを行うのはNGです。色落ち、毛羽立ちの原因になります。
※シミが落ち切らない場合には、アイロンをその部分にはかけず、速やかに専門店に相談しましょう。

洗えない着物は尿のシミ抜きができません

尿(おしっこ)の汚れは水溶性で、水には溶けやすいですが、その他の溶剤で溶かしたり落とすことがなかなかできません。そのため、ご家庭で着物の尿汚れ(おしっこシミ)をお手入れにするには、水洗いのプロセスを飛ばせないのです。

そのため、正絹やウールなど、水洗いできない着物の尿シミ・おしっこ汚れは、ご自分ではシミ抜きができません。例えばベンジンやシミ抜き剤などを使っても尿汚れの成分は落としきれず、後から変色シミなどになってしまいます。無理に自己処理をせず、早めに専門店に相談をしましょう。

変色したシミは専門店で対処が必要です

洗える着物であっても、既にシミが乾いたり、変色していたり、輪ジミになっている場合には、ご家庭で対処することができません。無理に汚れを落とそうと強い漂白剤や溶剤を使うと、着物の染料が剥がれたり、色がおかしくなってしまう可能性が高いです。

  • シミがついてから数日以上が経過している
  • シミ部分が黄色くなっている
  • 輪っかのようなシミになっている
  • 水洗いしても汚れが消えない

以上のような場合には、着物の素材・染料などにかかわらず、できるだけ早く専門店に相談をしましょう。

小さなおしっこシミは目立たないけど放置じゃダメ?

着物についたおしっこや尿のシミは放置しないでください。着物の尿・おしっこシミは乾くと一時的に透明になりますが、そこには雑菌やタンパク質が含まれています。

これらの成分は時間が経つごとに酸素と結びつき、徐々に黄色っぽい変色シミへと変化したり、カビ繁殖の原因にもなります。

シミ症状が悪化してからだと、専門店でシミ抜きなどの対処する時の料金も高くなってしまいがちです。「ついた!」とわかった時にできるだけ早く相談することが、コストを抑える重要なポイントと言えます。

着物のおしっこシミはクリーニングで落ちる?

着物についた尿・おしっこのシミを取るには、着物に強いクリーニング店での「シミ抜き」または「洗い張り」が必要です。一般的なクリーニングである「着物丸洗い(ドライクリーニング)」だけでは着物の尿・おしっこシミは落ちないので、必ず上の二つに対応できるお店を選びましょう。

着物のシミ抜きとは

着物のお手入れ専門の職人が手作業で行う汚れ取りの作業です。着物についたシミの範囲が小さい場合には、シミ抜きだけで汚れを取れるケースもあります。

着物の洗い張りとは

着物の洗い張りとは、着物を一度ほどいて反物の状態に戻し、それから徹底的に水洗いして汚れを根こそぎ落として貼り直す伝統的なお手入れの方法です。着物の尿・おしっこシミの範囲がとても広い場合や、縫い目の部分(縫い糸)にまで尿が染み込んでいる場合などには、この「洗い張り」が必要になるケースもあります。

おわりに

着物の尿・おしっこシミが付いた時「お店におしっこを付けたと言うのが恥ずかしい」と迷ってしまう方も多いようです。でもどうぞ迷わず、早めにお店に相談しましょう!おしっこのシミが付いてしまうトラブルは、ちっとも珍しくありません。着物クリーニング店は対処に慣れています。シミの原因が早く判明した方が、早く確実にシミをとって着物をキレイにできますよ。

当店『ふじぜん』も着物クリーニング専門店として、着物の尿やおしっこシミのご相談を受け付けています。「ちょっと昔のシミなのですが」「他のお店で断られてしまったシミなのですが」と言ったご相談も、どうぞお気軽にお寄せください!

他店で断られたシミ承ります!

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吉原ひとし


着物ケア診断士 吉原ひとし


着物の染み抜きやお直しをする場合、加工内容や料金は検討がつかないと思います。お近くに専門店があれば安心ですがシミや汚れを見てもらったが、無理だと言われ諦めてしまう方が多いのです。遠方にお住まいの方はお電話又はメールでご相談いただければ、無料にてアドバイスさせていただきます。クリーニングやお直し以外でも着物の事ならお気軽にご連絡ください。 初めてご訪問の方へ

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