ビールは宴会やパーティで必ず出てくる飲み物の一つです。ですから「着物にビールのシミがついた」というトラブルもよく聞きますね。
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着物にビールをこぼした!おしぼりで拭いていいですか?
いいえ、飲食店の「おしぼり」は、紙おしぼりでもタオル型おしぼりでも、着物についたビールのシミの対処には使わない方がいいです。これは手拭き用のおしぼりには、消毒用の薬剤(アルコール類)や香料などが含まれているためです。着物のビールのシミを取ろうとオシボリで拭いた結果、アルコールで変色して直らなくなった、といったトラブルが起きたら大問題ですよ!
「大げさだ」と思うかもしれませんが、着物は種類によっては繊維や染料がとてもデリケートに作られています。普段着感覚で「これくらいなら大丈夫」と対処した結果、毛羽立ちや変色・変質といった甚大なトラブルになることもあるのです。
【着物に使わない方が良いもの】
× 紙おしぼり
× タオルタイプのおしぼり
× ティッシュペーパー
× ウェットティッシュ
× トイレットペーパー
× 濃色の手ぬぐい(色移りの可能性があります)
上記のようなものは着物についたビールの汚れの対処には向いていません。(柔らかい紙類は繊維が入り込んでしまうのでNG)ハンカチやタオル、ナフキンなど、何も含まない柔らかい布を優しく当てるようにしましょう。着物でお出かけの時には、万一の時の応急処置にも使える白または薄色のハンカチやタオル類を必ず持ち歩くようにしましょうね。
着物のビールのシミ、濡れタオルで応急処置していいですか?
濡れタオルを使って良い着物と、使わない方が良い着物があります。普段、ご自分で着物を水洗いでお手入れしているのであれば濡れタオルを使ってもOKと考えて良いです。洗ったことがない、洗った記憶が定かでない場合には濡れタオルは使わず、乾いたタオルで水分を取流だけにしましょう。
水洗いした着物には濡れタオルは有効!
着物についたビールのシミは水溶性なので、早い段階で水を加えるとかなり成分を落とせます。「いつも水洗いでお手入れしている」と言う場合には、濡らして硬く絞ったタオルで軽く叩くようにして応急処置しましょう。
振袖や留袖に濡れタオルはNG
振袖・留袖などの礼装用着物の多くは、正絹というシルク100%でできています。この素材は水濡れにとても弱いです!ビールの水分だけでなく濡れタオルで水分を増やすと、水分による「水シミ」の範囲がどんどん広がっていきます。ですから濡れタオルは使用せず、乾いたタオルで水分を取るだけにしましょう!正絹着物以外でも、水洗いができない着物は基本的に全部同じ対処と考えてください。
木綿などでも洗濯経験がなければNG
木綿着物などで洗濯OK表示があったとしても、今まで一度も水で洗ったことがない着物の場合には濡れタオルは使わない方が良いです。これは一部だけ濡らすと部分的に縮んだり、初めての濡れで色落ち・色移りを起こす可能性があるため。乾いたタオルで水分だけとるようにしましょう。
着物のビールのシミは自分で対処できますか?
着物のビールのシミを自分で対処できるかどうかは「水洗いできるか」「最近ついたかシミか」などで変わってきます。まずは着物の洗濯表示、素材などを確認してみましょう。
ビールのシミ抜きには水洗いが必要
着物についたビールの汚れは「水溶性」といって、水には溶けやすいが油や溶剤などには溶けにくい性質を持っています。そのため、ご家庭用のシミ抜き剤やベンジンなどの揮発油では汚れが落としきれません!ご家庭でのビールのシミ抜きには「水洗い」を必ずしなくてはならないです。
「水洗いできない着物」…例えば上で挙げた正絹(シルク)の着物や、一般的なウールの着物、刺繍などの特殊加工をされている着物などはご家庭で対処せず、すぐに専門店に相談をしましょう。
乾いてしまったシミは落ちません
洗える着物であっても、ビールの汚れの場合、時間が経って乾くと落ちにくいシミになります!数日放置していたシミを後からご家庭でシミ抜きしても落ちません。ご家庭でのシミ抜きなどの対処は「速さ」が勝負です。基本的には当日中、遅くとも翌日午前にはシミ抜きしましょう。
着物のビールのシミの落とし方は?
着物についたビールのシミにご家庭で対処するには「中性洗濯洗剤」と「水」を使います。中性洗剤というのは、簡単にいうとおしゃれ着用の液体洗剤です。アルカリ性洗剤に比べて縮みにくく、色落ちなどのトラブルが起きにくいため、ご家庭での着物のお手入れに向いています。
【用意するもの】
- おしゃれ着用洗剤
- 柔軟剤
- 洗濯用ネット(畳んだ着物が入る大きさ)
- バスタオル2枚
- 着物用ハンガーか物干し
- アイロン
- アイロン台
- 霧吹き
- 当て布
【着物のビールシミの落とし方手順】
- 着物を全体的に水で濡らします。(シミの箇所が外に出るように畳んでおくと作業しやすいです)
- おしゃれ着洗剤の原液を少量、シミ部分につけます
- 優しく指でなじませるようにして洗います(ゴシゴシ擦らないこと)
- 水でよくすすいでチェックします
- 大きなたらいや洗面器などに水を張って、おしゃれ着洗剤を適量溶かします。畳んだ着物を着けて、両手で押すように優しく全体を洗います。
- 水を取り替えて濯ぎます。最後の濯ぎで柔軟剤を適量入れて仕上げると、シワになりにくいです。
- ネットに入れて軽く脱水させます。形崩れの原因になるので、30秒位でOK。(しっかり脱水するとシワになって取れません)あとは2枚のタオルで挟んで軽く叩き、水分を吸い取っていきます。
- 着物専用ハンガーまたは物干しにかけて形を整え、直射日光に当てずに自然乾燥させます。
- アイロンで仕上げます。(木綿着物のように縮みやすい素材の場合には、濡れた状態で引っ張るようにアイロンをかけて縮みを伸ばし、それから乾燥させた方が縮み・型崩れを防げます)
※着物の種類・シミの状態によっては、この方法が取れない場合があります。上の「3」の質問・回答項目をよく読んで必ず確認しましょう。
※襟元が形崩れする可能性があります。事前にぐし縫いで襟を止めるか、安全ピンなどで保定することを強くお勧めします。
なおビールのシミの状態によっては、中性洗剤では汚れが落ちきらない可能性があります。アルカリ洗剤や漂白剤などを使用すると着物の色落ち・変質など起きる可能性があるため、これ以上のお手入れはご家庭ではできません。この場合は、早めに専門店に相談しましょう。
着物のビールのシミはクリーニングで落ちますか?
着物についたビールのシミは一般的な「丸洗いクリーニング」では落ちません。「着物専門のシミ抜き」か、広範囲の場合には「洗い張り」ができるお店に相談をしましょう。
着物専門のシミ抜きとは
着物ビールの汚れ落としを専門に扱う職人さんが手作業で行うのが「着物シミ抜き」です。ビールのシミ範囲が小さい場合には、シミ抜きだけで汚れに対処できることもあります。
洗い張りとは
汚れの範囲がとても広かったり、縫い糸まで濡れた場合には「洗い張り」をした方が良いです。これは一度着物を解いて反物の状態に戻してから、専門の職人さんに洗ってもらう方法です。
ビールの古いシミの場合には
ビールのシミを放置してしまって変色している場合、古いシミ抜き(黄変抜き)ができるお店であれば対処できることも。また、完全に汚れが落ちきらない場合には「染色補正」といって、部分的に柄を書き足したり、部分染めをすることでシミをカバーできることもあります。色々できるお店に相談した方が良いですね。
上でご紹介した「着物のシミ抜き」や「古いシミ抜き(黄変抜き)」「洗い張り」などは、職人さんがいる着物クリーニング専門店であれば対処ができます。一般的な洋服クリーニングのお店だと「着物のビールのシミは落ちない」とお断りされてしまうことも多いので、早めに着物クリーニング店に相談をした方が近道です。
おわりに
着物についたビールの汚れは放っておくとどんどん落ちにくいシミになります。お店でのシミ抜き料金も「落ちにくさ」で高くなることがありますから、クリーニング(シミ抜き)にはできるだけ早く持って行くのが最善ですよ。
またパーティなどに参加されることが多い人だと「着物にビールやお酒のシミがつきやすい」とお困りの方も多いのではないでしょうか。このような場合には、予防対策として「ガード加工」をするのもおススメです!ガード加工しておくとビールの汚れを弾きやすくなるので、お手入れがグッと楽になります。
当店『ふじぜん』は、着物のクリーニングや加工を長年扱ってきた専門店ですので、ビールのシミ抜き対処はもちろん、ガード加工などのご相談も受け付けています!シミ抜き単体でのご利用も可能なので、リーズナブルにお手入れできます。宅配便で全国対応もしているので、「近所に着物シミ抜きができるお店がない」という時には、ぜひお気軽にご相談ください。