「成人式でママ振袖を着たい!」そんな新成人女性が増えていること、知っていますか?ママ振袖とは、お母様やお祖母様がかつて着ていた振袖のことを言います。ママやおばあちゃんが着ていたママ振袖には魅力やメリットがいっぱい!でもママ振袖を着る場合には少々の準備も必要なので、その点はしっかり押さえておきたいですね。
成人式にママ振袖が人気となった5つの理由とメリット
成人式のママ振袖利用者数が増えている理由としては、次の5つの魅力やメリットがある点が挙げられます。
1、コスパの良い成人式ができる
まずは成人式の費用面の問題です。成人式で振袖を着る場合の費用相場をまずは見てみましょう。
新作振袖の購入 価格相場 ×円~×円(セット)+着付け代・ヘアメイク代
上記は振袖セット購入(長襦袢、小物類など)の場合の価格相場です。振袖はそもそも着物の中では高価な部類ですが、さらにそのサイズに合わせた長襦袢や、振袖用の小物一式なども必要となるため、購入費用は高額となります。
振袖レンタル 価格相場 ×円~×円+着付け代・ヘアメイク代 (1回ごと)
一時期は人気だった成人式の振袖レンタルですが、「前撮り・後撮り」の習慣が根付いてきたことによって、やや人気に翳りが見えています。前撮り+成人式で2回レンタルとなると(複数回割引があるにせよ)振袖レンタル料金がそれなりに高くなってしまいやすいのです。
ママ振袖 草履・着付け・ヘアメイク代のみ
ママ振袖の場合、サイズや状態に問題がなければ、振袖には費用がほとんど発生しません。小物類などもまとめて保管されているご家庭が多いので、着付けの小物類なども不要というケースが多いです。新成人の方向けに新たに準備するとしたら草履の購入程度ではないでしょうか。
お直し・クリーニングなどが必要な場合でも、メンテ費用の相場は高くても数万円程度。購入・レンタルなどに比べると割安です。
成人式の費用を抑えたい、安い料金ででも華やかに成人式を迎えたい人にとって、ママ振袖はピッタリというわけです。
2、「柄かぶりトラブル」を回避
成人式の振袖で、当日になって問題となりやすいのが「柄かぶり(がらかぶり)」です。色柄がほとんどまったく同じ振袖の人と成人式会場で会ってしまい気まずかった、友人と同じ柄になってしまった、といったものですね。同じような色や形のワンピースやTシャツの人が隣にいて気まずい経験をした方も多いことでしょう。あれと同じ現象が成人式でもあるのです。
この手のトラブルは昭和にはほとんど見られなかったのですが、2000年以降に急速に増えました。これにはいくつかの理由があります。
【柄かぶりの原因】
1)新柄・モダン柄ブーム(2000年~)
ゼロ年代頃から成人式で人気になったのが、ギャル系向けの華やかな柄行き、洋風の花柄などのモダン柄です。いわゆる「洋服風」の柄ゆきは、古典柄に比べるとデザインバリエーションが少なめ。結果として「個性的な新作振袖を購入したはずが、他の子と同じ色柄になって被った」というケースが増えました。
2)レンタルの「トレンドかぶり」(2005年~)
レンタル振袖のユーザーは「その年のトレンド」を無意識に選ぶ方が多いです。レンタル着物屋もこのような傾向は把握しているので、その年に人気の出そうな色柄を強く宣伝するんですよね。洋服のショップで一番強く宣伝する服が売れるのと同じです。結果として「レンタルで借りたら被った」というケースは多く見られます。
3)SNS(Instagram)などの台頭(2010年~)
昨今、最も「成人式の振袖色柄かぶりトラブル」となる原因はインスタです。昔であれば「成人式会場に集う女性」と色柄が被らなければOKでした。ところが現在は、前撮りや式会場で撮影したご自身の写真を全国の皆様がSNSにアップします。張り切って新規購入した着物が、人気インスタグラマーとモロ被りした…こういうケースも珍しくないわけです。
ママ振袖ならオンリーワン
古典柄のママ振袖の場合、成人式会場やSNSでの「柄かぶり」が発生するリスクを心配する必要はありません。オンリーワンの着物を堂々と着ることができます。
3、家族の思い出の振袖を着られる
ママ振袖は、お母様が二十歳の時に身につけた思い出深い振袖です。袖を通したご本人はもちろん、その晴れ姿を見ていたお祖母様・お祖父様も昔を良く覚えていることでしょう。ご家族全員の思い出の詰まった振袖を、新たに成人を迎える方が身につける…ご家族の皆様にとって、これほど嬉しいことはないはずです。
4、古典柄・アンティーク柄人気の復活
ゼロ年代頃に台頭したいわゆるギャル系振袖人気も落ち着き、現在ではスタンダードな古典柄やアンティーク柄を好まれる若い方が増えています。伝統的な古典柄は、流行にとらわれることなく、いつでも身につけることができる柄行です。コスパやSDGsを意識することが多い若い世代には、ピッタリの柄なのかもしれませんね。
ママ振袖の多くは古典柄やスタンダードな柄行きですから、「古さ」を気にせずにお召しいただくことができます。もちろん、小物で新しい味わいを加えるのも良い手です。
5、前撮り・後撮りにも安心
レンタル振袖の難点として、前撮りなどのスケジュール確保が難しい、変更がしにくい点が挙げられます。その点、おうちにママ振袖があれば、着付と撮影者の確保さえすれば良いので、前撮り後撮りのスケジュールは比較的立てやすいです。晴れが多い時期などを選べば、外での前撮りにも挑戦しやすいですよ。
成人式にママ振袖を使う場合の事前準備ポイント
「成人式にママ振袖を使いたい」という場合、いくつか事前に確認や準備をしておくポイントがあります。
1、振袖のサイズは大丈夫ですか?
振袖は着付けで「ある程度のサイズ調整」は可能です。洋服に比べるとこれは大きな利点ですね。しかし一定の基準を超えると、着付けでは調整しきれずに見た目が悪くなります。この場合には事前にサイズ調整(サイズ加工)をした方が良いです。
まずは大まかなサイズの目安として、以前に振袖を着ていた方(お母様、お祖母様)と新たに着る方(娘様)の身長差をチェックしてみましょう。
①二人の身長差が5センチ以内
以前にママ振袖を着ていた方と娘様の身長差が5センチ以内で、体格も大きく変わらない場合には、振袖のサイズ変更は原則として必要ありません。そのまま着付けで調整して、ママ振袖を着ることができます。
②娘様の方が身長が5センチ以上低い
これから振袖を着る方(娘様)の方が小柄で身長が5センチ以上低い場合、サイズ加工で身丈を縮めることをおすすめします。無理に着付けで調整すると「おはしょり」が必要以上に大きくなってしまい、見た目が借り物っぽくなりやすいです。
③娘様の方が身長が5センチ以上高い
これから振袖を着る方(娘様)の方が身長が5センチ以上高い場合、サイズ加工で身丈を伸ばすことをおすすめします。振袖の状態にもよりますが、多くの振袖は「縫い込み」といって、余分に布を縫い込んであります。これを引き出して縫い直せば、小さい振袖を大きく直すことができるのです。
ちなみにサイズの合わない小さい振袖をそのまま無理に着るのは避けたほうが良いです。「おはしょり」が極端に小さく見た目が悪くなるか、おはしょりが作れない事態になります。無理に着付けをして起こるのが「着崩れ」です。そもそも新成人の方は着物慣れしていないので、着崩れは起こしやすいのですが、小さい着物だとリスクは極端に上がります。できるだけ体にあったサイズの着物を着ることを強くお勧めします。
④ウエスト・ヒップの体格が大きく違う
体の横幅の差については、「娘様の方が細い」という場合は着付けでほぼ調整可能です。「娘様の方がヒップなどが大きい」という場合には、「幅出し」で横幅のサイズ調整を行いましょう。こちらも体にあったサイズに直しておくことで、合わせの前が開きやすい、シワになるといったトラブルを防げます。
ふじぜんなら着物の1箇所サイズ直しもOK
着物のサイズ変更というと、「ほどいて仕立て直さないといけないのでは」「料金が高くなりそう」と心配になる人も多いかもしれませんね。でも「1箇所だけ」のサイズ変更を、着物をほどかず行う着物加工店もあるんですよ。着物を完全にしたてなおすのに比べてお値段もリーズナブルです。当店『着物ふじぜん』でも、身丈だけといった一箇所のみのサイズ変更を受け付けています。困った時にはお気軽にご相談ください!
2、カビ臭い匂いはしていませんか?
ママ振袖で多いお悩みのひとつが「カビくさい匂い」です。どこかホコリくさい、カビっぽい…この匂いの元は、繊維に繁殖してしまった白カビ菌や青カビ菌。表面に生えたカビをとっても根っこは除去ができないので、いつまでも匂いが再生してしまいがちです。
現代の若者はこのような匂いにとても敏感な傾向を持っています。また、カビくさい匂いに触れることでアレルギー等が不安という方も多いことでしょう。カビの匂いを感じたら、早めに対処しておきたいところです。
カビ取りクリーニングで早めのお手入れを
着物に生えたカビ菌はご家庭では除去できませんが、着物専門のクリーニング店であればオゾン除菌等での対策ができます。
「久しぶりにママ振袖を出したらカビくさいかも」という時には、早めにカビ取りクリーニングをしておくと安心です。
3、原因不明のシミができていませんか?
ママ振袖をタンスから出したら、原因不明の茶色いシミができていた…これも成人式のママ振袖ではとても多いお悩みとして挙げられます。汚したはずはないのにシミができている…これは、汗やカビ等の成分が少しずつ酸化したことで起こる「黄変(おうへん)」とい変色シミのトラブルです。
黄変は最初はその名のとおり「黄ばみ」として始まりますが、時間が経つごとにオレンジ色、薄い茶色、焦げ茶色とシミの色を濃くしていきます。さらには元々の染料も破壊するため、黒地や紺色が濃い色がピンクのように退色するといったトラブルも起こります。
専門店なら対処できるかも!
黄変シミ(古いシミ)は、汚れを取るだけでは元に戻すことができません。そのため一般的なクリーング店だと「黄変・古いシミはムリ」とお断りされてしまうことも多いようです。
しかし専門的なお店であれば、漂白してから部分的に染め直し)染色補正)を行うといった対処ができることもあります。「シミがあるからママ振袖はムリ」と諦める前に、ぜひ一度お店に相談をしてみましょう。当店『ふじぜん』でも黄変抜きのご相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
4、裏地が色変わりしていませんか?
黄変(変色)が起きるのは振袖の表側だけではありません。胴裏(どううら)という内側の裏地はたっぷりと汗を吸い込みやすいので、黄変(変色)を起こしやすい箇所のひとつです。久しぶりにママ振袖を出したら裏地が変色だらけ…こんなトラブルは珍しくありません。
気になる場合は裏地の交換を
裏地部分は外から見えることがありません。ママ振袖の裏地に多少の変色であっても、成人式そのまま着てしまって大丈夫です。着付けの際も、着付け師さんは裏地の変色には慣れていますから気にすることはありません。堂々と着付け師さんに振袖を渡してしまって大丈夫です。
ただ、例えば「贈り物」として娘様・お孫様に振袖をお渡しになる場合等だと、事情がちょっと違いますよね。「プレゼントなのに裏地が変色したままなのはちょっと…」と思う方も多いのではないでしょうか。胴裏(裏地)は薄くデリケートであるため、黄変抜き(漂白)などの対処はできません。
しかし着物をほどかず、裏地のみを新しいものに交換する加工は可能です。当店『ふじぜん』でも、振袖の裏地交換を受け付けています。裏地の生地の持ち込みもOKですよ。
5、草履に早めに慣れましょう
成人式にママ振袖を着る場合、着付けに必要な小物類等もひとまとめに保管されていることが多いので「小物を一気に揃えなくては」という方は少なめです。(もちろん今風のコーディネートにするために、簪などの小物だけを新しくするのもステキですよ)
ただどんな場合でも早めに準備していただきたいのは「草履(ぞうり)」です。足元のサイズだけはご家族同士では合わないということがほとんど。また昔の草履だと底や鼻緒が経年劣化を起こしている可能性があり、転倒などの危険性も伴います。
振袖や小物類等はすべてママのものでも、草履だけは新調するのが一番です。また、早めに草履を買って家の中等で履き慣らしておくと、成人式の日の鼻緒によるスレ等のトラブルも軽減できます。(現代の方は鼻緒のある履物に慣れていないので、途中で足が痛くなってしまうことが多いのです)草履だけは早めに購入して、自分の足に慣らしておくと良いですよ。
おわりに
今回は成人式にママ振袖が人気の理由や準備の際のポイントについてご紹介しました。SDGsやコスパ重視の世代が台頭することで、今後も成人式におけるママ振袖の人気はますます高まっていくことが予測されています。
とは言え、ママ振袖を成人式にキレイに着るためには事前の準備を抜かりなく行うことが大切です。成人式近くになると、クリーニングやシミ抜き等のご依頼が殺到し、いつもよりお時間をいただくことも増えます。成人式にママ振袖をお考えの場合には、一度はやめにタンスから出して状態をチェックしてみましょう!