振袖は独身女性の最高格のフォーマル着物。成人式やご友人の結婚式等で振袖を着たという人も多いのではないでしょうか。さてこの「振袖」を着た後の保管方法は知っていますか?振袖は正絹という100%シルクでできていて、とてもデリケートな着物です。
誤った保管をすると、次に着る時に変色や虫食い・カビ等で着られない…ということもあります。振袖を長くキレイに保ち続けるために、いくつかの注意するポイントを知っておきましょう。
目次
振袖着用後にはすぐにお手入れを
成人式や結婚式で着た振袖、こんなことしていませんか?
× 着た後、脱いだままになっている
× 着た後にすぐに畳んでクローゼットにしまった
これはどちらもNGです。振袖を着た後には、きちんとお手入れをすることが大切!基本のお手入れとしては次の4項目があります。
1)陰干し
直射日光を避けて干し、繊維に残っている水分を飛ばすお手入れです。ご自宅で行うことができます。
2)汗抜き
振袖等の着物に含まれる汗の成分を取るお手入れです。簡易的なものはご自宅でも行うことも可能。より本格的な対処が必要な場合には専門店でお手入れします。
3)シミ抜き
食べこぼしや飲み物のハネ、水シミ、泥はね等の汚れを取ります。ごく軽い油溶性汚れ等であればご自分でお手入れできることもありますが、基本的に振袖の場合は繊細な加工がされていることも多いため、専門店におまかせした方が失敗が無く安心です。
4)全体のお手入れ(丸洗い)
全体的なチリ・ホコリ汚れや着用で付いた皮脂汚れ等を専用溶剤で落とすクリーニングです。今後の着用予定が無く、2~3年以上の長期保管が見込まれる場合等には全体的なお手入れをしておくのがおすすめ。着物専門のクリーニング店等でお手入れできます。
着用後のお手入れについては下のページでも詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧になってみてくださいね。
振袖は「畳んで平らに保管」が鉄則
振袖のお手入れで陰干し(ハンガーや物干しにかけて干すこと)があるため、振袖はかけて保管できる?と考える人も居るようです。また販売店舗や展示会等でも振袖がかかっているので、吊るして保管できるかのように見えますよね。
しかしこれは長期保管では絶対にやってはダメです!振袖は「本畳をして」「平らに保管する」が鉄則です。正絹(シルク100%)とそれに合わせた糸で作られた振袖はとってもデリケート。長く吊るしっぱなしにしていると、その部分が自重(振袖自体の重さ)でダメージを受けて傷んでいきます。
本畳したものを棒等にかけるのもやめましょう。かけた部分が摩擦で痛む可能性大です。基本的に着物は「負担がかかる部分」からスレや変色等が起きやすくなります。保管中はできるだけ振袖にムダな負担がかからないようにすることが大切です。
振袖は「本畳み→二つ折り」が基本
振袖の場合、保管中には「本畳み(ほんだたみ)」をしてから二つ折りにして保管するのが基本です。あまり小さく畳んでしまうとシワが寄りやすく、次回の着用時に苦労することになります。
振袖の古いタトウ紙は交換!
最近では、成人式や結婚式にママやお祖母様の振袖を着る若い方も増えました。このような場合によく見られるのが「タトウ紙が古い」というケースです。
タトウ紙とは、振袖や長襦袢などを包んでいる紙のこと。そのタトウ紙、最近のものですか?
5年以上が経過したら交換しよう
タトウ紙は吸湿性の良い紙で作られており、振袖をホコリや空気中の湿気から守る役割を果たしています。しかし何年も経つと吸湿性が落ちてしまって、湿気防止力が弱ります。
5年~10年以上も同じタトウ紙に振袖を入れているという場合には、そろそろタトウ紙を交換しましょう。
ネット販売や着物クリーニング店で取り扱い
呉服屋さんのネーム・ロゴ入りのタトウ紙は「ブランドアイテム(ショッパー)」の扱いなので、残念ながら個別に販売はしてもらえません。無地のタトウ紙を扱っているか確認してみるのは良いでしょう。
無地のタトウ紙は、最近ではAmazonや楽天等のネット購入もできます。ちなみに当店(着物クリーニングの『着物ふじぜん』)でも1枚200円(税抜)で販売中です。お近くに購入店舗が無い場合にはご相談くださいね。
振袖は風通しの良い場所で保管
振袖をしまっておく場所ですが、大きく分けて3種類が挙げられます。
タンス
和ダンス(桐たんす)があれば一番理想的です。木製タンスはそれ自体が呼吸をしているため、湿気がこもりにくく、カビ・虫害等のリスクを下げられます。
衣装箱(衣装ケース)
木製のものが理想的ですが、プラスチックという人が近年は多いです。プラスチックケースはとにかく湿気に注意!昭和の頃のお手入れ方法のつもりでいるとカビが生えます。
通常より後述する「虫干し」の回数を増やし、除湿剤も多く入れるようにしましょう。本当に湿気やすいので十分に管理に手間をかけられる人向けです。
着物専用保管袋
着物を入れて保管する専用の袋です。除湿剤や虫よけ剤等がセットになっているものもあります。省スペースで振袖を保管できるのが魅力。なお小さめサイズだと振袖の長い袖が入りにくいことがあります!本畳み→2つ折にした振袖が入るか、サイズをよく確認しましょう。
どの振袖の保管方法でも、できるだけ風通しの良い場所に保管をすることが大切です。キッチンや風呂に近い場所や湿気がこもりにくい場所は避けるようにしましょう。
振袖保管には防虫剤と吸湿剤!
フォーマルかつ高級な着物である振袖は、そのほとんどが「正絹」というシルク100%の布で作られています。さてこのシルク、とっても虫食いの被害に遭いやすいです!また湿気によるカビのトラブルも多いので、保管中には「虫」と「湿気」を守ることが重要です。
防虫剤は着物専用のものを
防虫剤には様々なものがありますが、「着物用」「金箔・金糸もOK」といった表示があるものを選びましょう。防虫剤の中には高級な着物の素材を変色させてしまうものがありますので注意してください。
また防虫剤は抽斗(ひきだし)や衣装箱の中等に入れますが、着物に直接触れることが無いようにすることも大切。長く置きっぱなしにしていると、そこから変色することがあります。
吸湿剤は2種類組み合わせて
吸湿剤(湿気取り)はシート式のものを入れてから、更にクローゼットやタンスの中に大型の置型タイプも入れておきます。「やりすぎ!」と思うかもしれませんが、現代の日本の家屋はとても湿気を溜め込みやすいので、本当にカビ被害が多いのです。
吸湿剤による湿気対策はしっかりやっておいてソンがありません。
振袖は定期的に虫干しを
振袖の保管は、一度しまったらずっと入れっぱなし…というわけにはいきません。できれば年に2回、少なくとも1回は振袖を出して「虫干し」をしましょう。
虫干のやり方はこのページの最初の「お手入れ」の項目で案内している「陰干し」と同じでOK。着物を干している間には、カビや虫食い等のトラブルが起きていないか、すみずみまでチェックしましょうね。
プロに保管してもらうのも手
- きちんと保管できるか不安
- 虫干しするのが面倒
- 畳んだりするのがうまくできない
- 着物を置いておく場所が無い
- タンスや衣装袋を買うのが面倒
このような時には、着物の取り扱いのプロによる保管サービス(お預かりサービス)を使ってみるのも手です。着物のクリーニングを行う店舗では、クリーニング後にお預かりサービスを行っていることもあります。
着物の専門家による保管なので、トラブルの心配がなく安心なのが魅力。当店『着物ふじぜん』でも、振袖のクリーニングやシミ抜きサービスと併せて、振袖のお預かりサービスも受け付けています。「振袖の保管が難しそう」という時には、お気軽にご相談ください。
おわりに
振袖はフォーマル着物である分、小紋等の街着に比べて登場回数が少なめです。そのため振袖の保管中に変色した、虫食いにあった…といったトラブルはかなり多く見られます。
振袖は大切に保管すれば、お友達の結婚式やお祝いの席、式典等、様々なシーンでも使うことができる「日本式のドレス」です。娘さんやお孫さんへと受け継いでいくこともできます。どうかしっかりと保管して、キレイな状態を長持ちさせてくださいね。