お手入れ

プロが教える着物の準備とアフターケア【完全版】

    着物でのお出かけ、準備とアフターケアは万全ですか?着物を着るシーンは結婚式や成人式、七五三、入学式、卒業式などのフォーマルシーンだけでなく、ちょっとしたデートや友だち同士のお出かけなどのカジュアルな時もあります。

    でもどんな場合にも大事なのが、着物の準備とアフターケアです!準備を忘れると当日に着物が綺麗に着られないこともありますし、アフターケアをサボると大切な着物がダメになってしまうこともあるんですよ。

    吉原ひとし
    吉原ひとし
    こんにちは。創業明治三九年 四代目 ふじぜん 吉原ひとしと申します。着物を専門に取り扱うクリーニング店の店主をさせていただいております。ここでは着物を着る時の前準備とアフターケアについて、着物のプロが詳しく解説していきます。

    着物でお出かけする時の事前準備

    まずは着物でお出かけする時の事前準備についてご紹介していきます。用意する時期や順番はあくまでも目安なので、ご自身の状況などに合わせて調整してみてくださいね。

    1.「1ヶ月前~」小物を揃えておく

    着物は着物と帯さえあれば着られる、というものではありません。着付けるための様々な小物や、和装向けのバッグなども必要になります。着物に慣れている人は小物準備は後回しでも良いですが、初めての人はできるだけ早く小物準備を始めましょう。

    【メイン】
    ・着物
    ・帯(名古屋帯/袋帯)

    【インナー】
    ・長襦袢(半衿を付ける)
    ・肌襦袢
    ・和装用インナー

    洋服用のブラ等では着物が綺麗に着付けられません。和装用インナーまたはノンワイヤータイプのブラなどを準備しておきます。

    【着付けのためのアイテム】

    • 腰紐(3?4本)
    • コーリンベルト(2本)
    • タオル(3?4枚)
    • ウエストベルト(不要な場合もあり)
    • 前板
    • 帯枕
    • 帯締め
    • 帯揚げ
    • 伊達締め
    • 重ね衿
    • 衿芯
    • 三重仮紐(振袖の場合)
    • 後板(振袖の場合)

    ※着付けの方式によって、着付けのためのアイテムは微妙に変わることがあります。美容室や着付け師の方に着物を着付けてもらう場合には、そのお店の指定用品を揃えるようにしましょう。

    【足元】
    ・足袋
    ・足袋カバー(あれば)
    ・草履

    【その他】
    ・和装用バッグ
    ・和装用サブバッグ(荷物が多い場合)
    ・髪飾り(かんざし等)

    【着物を持って移動する場合】
    ・風呂敷
    ・着物・小物類が入るバッグ 等

    2.【1週間前~】着物を広げて干す

    着物をタンスやクローゼットに入れたまま、お出かけのギリギリまでしまったままにしていませんか?着物は保管中に繊維の中に匂いを溜め込んでいたり、余計なシワがついてしまっていることもあります。早めに出して広げて室内で干し、風を当てて、着物の湿気や匂いを飛ばしましょう。特に礼服の場合、まず1~2ヶ月前には一度広げてシミなどのチェックをし、1週間前には着物を広げて干すという二段構えをしておくことをお勧めします。

    着物を干す時には、直射日光に当てないように気をつけましょう。室内でも日光のさす場所に着物を長く干していると、日焼けして色褪せしてしまいますよ。

    着物がカビ臭い時は?

    出した着物がカビ臭い場合は、匂いを飛ばすのに2週間程度かかることもあります。早めに長く干すことをお勧めします。応急処置の方法はこちらでも詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。

    なお、カビ臭い着物にはすでにカビ菌が繁殖しています!カビはご自宅では除菌できないので、着用が済んだら早めに「カビ取りクリーニング」に出してくださいね。カビの繁殖がひどくなると、色抜けや変色シミになるのでお早めに!

    3.【数日前~】襦袢に半衿を付ける

    半衿(はんえり)は、インナーである長襦袢に縫い付けて使用します。前回使用した時に長襦袢をドライクリーニングに出したという場合には、半衿がついたままになっているかもしれません。その場合は、そのまま半衿の付いた長襦袢を使用してOKです。

    半衿を外して洗ったという場合には、長襦袢に半衿を縫い付ける作業を行いましょう。お裁縫に慣れている方なら作業はすぐに終わりますが、初めての人だと試行錯誤で数日かかってしまうかもしれません。早めに準備しておいた方が安心ですね。

    4.【早めに】雨が降りそうな時の準備

    着物でのお出かけが決まったら、週間天気予報はよくチェックしておくことが大切です!雨が降りそうな気配が強くなったら、雨対策も早めにしておきましょう。

    雨コート


    着物用 雨コート S M L 雨具 レインコート《ともえ姿 四季彩コート》

    和装用のレインコートである雨コートがあるととても安心です。すっぽりと着るタイプとツーピース型のものがありますので、お好みのものを。1回限りなら、お安いナイロンタイプなどでも構いません。

    大きめの傘


    24本骨 グラスファイバー メンズ レディース 兼用 墨 × 菊繋ぎ 大きい 親骨60cm直径103cm

    袖や帯などをすっぽりと隠せるような大きめの傘を準備します。和装に合う雰囲気や色味だと理想的ですね。

    雨草履


    時雨履き 滑り止め底 透明 爪皮付 防寒 雨 草履 和装 雨具 履物 レディース

    足先に透明カバーが付いているタイプの草履です。足元の濡れを減らしてくれます。カジュアルシーンなら、つけ外しタイプのものをお手持ちの草履につけてもアリ。フォーマルシーン向け刺繍入り礼装用草履はとても雨濡れに弱いので、できれば外用の雨草履から礼装用草履にホテルなどで履き替えることをお勧めします。

    足袋カバー


    足袋カバー(福助) ソフトタビース こはぜ無し スリッポンタイプ

    足袋の上から重ねて履くカバーです。白足袋の出先での汚れを防止します。雨の日はあった方が良いです。足袋カバーが無い場合には、替えの足袋を持ち歩きましょう。雨の日は足袋がとても汚れやすく、一度汚れるととても目立ちます。

    自家用車やタクシーアプリなどの準備

    雨の日に礼装用着物などを着る場合には、移動は基本的に「車」にするのが一番です。自家用車がある方は自家用車で、そうでない場合にはタクシーアプリなどを早めに準備したり、配車予約をしておきましょう。

    【シルクの着物は雨・水にとても弱いです】
    正絹(シルク)でできた着物は雨濡れに弱く、一発で雨シミだらけになったり、激しく縮んでしまいやすいです。一度縮んだら大変!フォーマル着物が雨でビッショリになってしまった場合、最悪のケースだと「着物をほどいて布の状態に戻して、それから徹底的に伸ばす」という「洗い張り」の方法を取らないと元に戻らないことが多々あります。

    着物を洗い張りから仕立て直すと、料金は10万円以上もかかります!雨や雪の多い時期には、しっかりとした雨対策の準備をしておきましょう。

    着物でお出かけした後のアフターケア

    着物でお出かけした後は、きちんとしたアフターケアをすることが大切です。次回にもキレイな状態で着物を着られるようにお手入れしておきましょう。

    1.【帰った当日中】着物の汚れチェック

    帰宅して着物を脱いだら、明るいところで着物の状態をチェックしましょう。

    • 衿元 (えり) ファンデーションの汚れは付いていませんか?
    • 胸元 (むなもと、胸の周り)食べこぼし、飲み物のハネなどが飛んでいませんか?
    • 袖(そで、そでぐち)水ハネ、皮脂汚れなどは飛んでいませんか?裏側もしっかり見ましょう。
    • 背中・膝裏・ワキ 汗汚れの状態はどうですか?着物の内側も要チェックです。
    • 裾 (すそ) 泥汚れや泥ハネが付いていませんか?

    2.【帰った当日中】着物を陰干しする

    一度着た着物には、体温による湿気、汗などがたくさん含まれています。すぐに畳んでしまうと着物の中は湿気でいっぱい!これが、カビ虫害(虫食い)変色などの原因にもなるのです。

    着物の湿気をきちんと飛ばすために、陰干し(かげぼし)をしましょう。

    【陰干しの方法】

    1. 着物専用ハンガーか物干しなどに着物をかける
    2. 直射日光に当てないようにして干す
    3. 室内の場合はエアコンなどで除湿する

    陰干しの期間は、通常の場合は1日~2日程度でもOK。汗をかいた場合には、次の項目で説明する「汗抜き」をした後に、4~5日程度干すことをお勧めします。

    3.【夏場などに】汗抜き・汗取りをする

    夏場や暖房のよく効いた場所で着物を着ると、着物の中でたくさん汗をかいていることもありますよね。この場合、着物の裏に汗が付いてしまっていることが多いです。程度が軽い場合には、ご自宅で汗抜き・汗取りのお手入れをしておきましょう。

    【汗抜き・汗取りの方法】

    1. 柔らかく、色の薄いタオルをお湯で濡らして絞る
    2. 広げた着物の裏側から、汗濡れした部分をタオルで軽く叩く
    3. 別の乾いたタオルで再度同じ部分を軽く叩く
    4. 通常より長く陰干しをして汗を飛ばす

    ※強く叩いたり擦ったりするのはNGです。色はげ、スレなどの原因になります。

    激しい汗濡れの場合には?
    • 着物の色が変わって見えるほど汗濡れした
    • 触ると湿っているのがわかるほど汗をかいた
    • 大切な着物なので汗染みをしっかり防ぎたい

    上のような場合には、ご自宅のお手入れでは着物の汗の成分を完全には取りきれません。専門店の「汗抜きクリーニング」で着物の汗をきちんととるお手入れをしておくことをおすすめします。

    4.【当日~翌日】半衿を外して洗う

    半衿はご自宅で長襦袢をお手入れするかどうかで、外すか外さないかの対応が変わります。長襦袢をクリーニング屋さん(丸洗い・ドライクリーニング)に出す場合には、半衿は付けたままでOKです。長襦袢をご自宅でお手入れする場合は、半衿の縫い糸を外して、半衿は別にお手入れしましょう。

    半衿がご自宅で洗えるかどうか等は、素材・作りによって変わってきます。半衿が洗濯できるかどうか、洗濯方法についてはこちらのページで詳しくご紹介しているので、合わせてご参照ください。

    5.【当日~2、3日以内】襦袢と足袋をお手入れする

    インナーである襦袢(じゅばん)や、和装のソックスである足袋(たび)には、たくさんの汚れがついています。早めに洗濯などのお手入れをしましょう。

    長襦袢のお手入れ

    長襦袢は素材やモノによってはご自宅で洗濯ができることも。見分け方、洗濯方法はこちらのページで詳しくご案内しています。なお、フォーマル向けの長襦袢(振袖用、留袖用等)は原則として専門店でのクリーニングを推奨しています。

    足袋のお手入れ

    足袋は基本的にご自宅で洗うことができますが、仕上げにシワとりのためのアイロンが必要となる製品も多いです。最近ではご自宅にプレスができるアイロンをお持ちでない人も多いので、その場合にはクリーニングに出した方が手軽ですね。足袋の洗い方、アイロンの掛け方はこちらのページで詳しくご案内しています。

    6.【汚れやシミを見つけたら】シミ抜きまたはクリーニング

    アフターケア1のステップで汚れやシミを見つけたら、ご自宅での染み抜きなどのケアを行うか、または専門店へ持ち込みます。

    自分で着物の染み抜きできる?

    ご自宅で着物のシミ抜きができるかどうかは、着物の素材やシミの種類によって変わってきます。

    【シミの原因はわかりますか?】
    シミの特性は大きく分けて4つあります。

    • 水溶性のシミ:水には溶けやすいが水洗いが基本的に必須。飲み物、雨、汗シミ など
    • 油溶性のシミ:水では溶けず油(溶剤)で溶けて落ちる。物によってはベンジンなどでご家庭での対処が可能。バター、オリーブオイル、口紅、パウダリーファンデ など
    • 混合性のシミ:水と油の両方が混じっている。ご家庭での対処の場合は水洗いが必須。ラーメンの汁、パスタソース、母乳など
    • 不溶性のシミ:水にも油にも溶けない。ご家庭では対処できない。インク、墨汁、サビによるシミ など

    汚れの原因の特定はとても大切です。原因不明の場合や、いつ付いたかわからないシミの場合(古いシミの可能性が高い)には、無理に家で染み抜きせずに専門店に相談しましょう。

    水洗い可能な着物の場合

    • ポリエステル着物(特殊加工がある場合を除く)
    • ウォッシャブル加工の着物(東レ シルックなど)
    • その他洗濯表示で「水洗い可能」の表示がある着物

    不溶性のシミを除き、基本的にはご家庭での染み抜きなどの対処がしやすいです。

    汚れ別の染み抜き方法

    ただしデリケートな着物はご家庭での漂白などができないので、「色素が多いシミ(ワイン、口紅など)」「古いシミ」には対処ができません。この場合は専門店で染み抜きします。

    水洗いNGの着物の場合

    • 正絹(シルク)の着物
    • ウールの着物
    • フォーマル向け着物
    • その他

    ※着物の場合、「洗える」という表記がなければ、基本的に水洗いは不可であると考えてください。アンティーク着物、素材不明着物などは水洗いしない方が良いです。

    水洗いNGの着物の場合、ご家庭で染み抜きできるのは「油溶性」で、なおかつ最近できた小さいシミの場合に限られます。色素が多い場合や、広範囲のシミ、少しでも水の要素を含むシミなどは、できるだけ早く専門店に持ち込みましょう。

    汚れた着物をクリーニングに出す時のお店選び

    シミ・汚れがある着物をクリーニングに出す時には、次のような点に気をつけましょう。

    着物を専門に扱うお店を選ぶ
    洋服系のクリーニング店だと、着物のケアが丸洗い(全体のドライクリーニング)だけという店舗もあります。この方法だと汚れがきちんと落ちきりません。着物を検品して原因を特定し、適切な対処ができる「着物専門のクリーニング店」を選んだ方が安心です。

    染み抜きできる職人がいるお店を選ぶ
    着物専門でも、機械洗いしかできないお店ではシミ・汚れが落とせないことが多いです。(丸洗い料金がすごく安いお店などは機械しかやらないことが多いので注意です)古いシミや黄変抜き、汗抜きなど、さまざまなシミに対処できる職人が居るお店を選んだ方が、しっかりと汚れを取ってもらえますよ。

    おわりに

    着物に慣れないうちは、準備とアフターケアがちょっと大変に感じるかもしれません。でも慣れてくれば、着物を着る準備も手早く済ませられるようになりますし、アフターケアもスムーズにできるようになります!着物ライフにはどちらも欠かせない工程なので、自分なりに上手な準備・アフターケアのスケジュールを組めるように工夫してみてくださいね。

    当店「着物ふじぜん」でも着物の染み抜き汗抜きカビ取りなどのさまざまなお手入れを行なっています。着物のアフターケアでお困りの時にはぜひお気軽にご相談くださいませ!

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    吉原ひとし


    着物ケア診断士 吉原ひとし


    着物の染み抜きやお直しをする場合、加工内容や料金は検討がつかないと思います。お近くに専門店があれば安心ですがシミや汚れを見てもらったが、無理だと言われ諦めてしまう方が多いのです。遠方にお住まいの方はお電話又はメールでご相談いただければ、無料にてアドバイスさせていただきます。クリーニングやお直し以外でも着物の事ならお気軽にご連絡ください。 初めてご訪問の方へ

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